足舟状骨の疲労骨折。上部内側のしつこい痛みには要注意!

こんにちは。荻窪教会通り、ほんだ整骨院の山内健輔です。

スポーツをやっていて、着地している側の足首周辺に痛みを覚えたことはありませんか?

心配ないケガも多いですが、あまりにしつこく続いたり、痛みが激しかったりするときには注意が必要。

とくに足背部内側(内くるぶしのちょっと前ぐらい)に痛みを覚える時!

足の舟状骨(しゅうじょうこつ)は、運動中のほとんどの場面で機械的ストレスを受け続けるがまん強い骨です。

ですが、あまりに負担が大きすぎると疲れて壊れてしまうことがあるんです。
壊れると「難治性」(なんちせい;治りにくい)なので、長期にわたって治療が必要になってしまいます。

今回の記事では「足舟状骨の疲労骨折」について紹介していきましょう。

足の舟状骨疲労骨折は足首前の内側にある骨の骨折

足舟状骨の疲労骨折。上部内側のしつこい痛みには要注意!

※ご注意!
このページでは「足の舟状骨疲労骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
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足の舟状骨にかかる負担と疲労骨折

舟状骨の特徴
可動性がほとんどない
内側縦アーチを形成
後脛骨筋腱の停止部(付着部)
前脛骨筋腱が通過
足の舟状骨は前脛骨筋腱が通過、後脛骨筋腱が付着、内側縦アーチを形成して、周囲を足根骨で囲まれる

足の舟状骨は、足首の前内側にある骨(⇒足部の骨)。
足首~足背(足の甲)近位部の骨は、「足根骨」といいます。

舟状骨の疲労骨折は舟状骨の特徴と大きく関わります。

舟状骨にかかる負担は、

  1. 内側縦アーチによる圧迫力
  2. 後脛骨筋腱による牽引力(ひっぱり)
  3. つま先側への荷重による圧迫
  4. 踏み返し(蹴りだし)での剪断力

機械的ストレスを繰り返し受けることで、舟状骨は割れるように損傷(疲労骨折)します。

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①内側縦アーチによる圧迫力

着地や前足部への荷重でアーチが低下すると舟状骨には前後からの圧迫力が加わる

足の舟状骨は内側縦アーチ(内側縦足弓)の頂点をつくる足根骨。
着地や荷重によって、足部アーチが衝撃を吸収します。

このとき舟状骨は距骨(きょこつ)と内側楔状骨(ないそくけつじょうこつ)によって前後から押しつぶされるような力を受けています。

②後脛骨筋腱による牽引力(ひっぱり)

着地時に後脛骨筋はアーチを維持する方向に働き、衝撃を吸収する

後脛骨筋(こうけいこつきん)は、足関節を底屈(つま先を下げる)したり、内側縦アーチの頂点を引っ張り上げる作用があります。

ジャンプやランニングの着地時、足関節は背屈(つま先をあげるような)を強制されます。
このときに働くのが足関節を底屈する筋肉。

後脛骨筋もそのひとつ。
加えて、後脛骨筋は内側縦アーチを引っ張ります。

後脛骨筋腱は、足根管(内くるぶしの下にあるトンネル)を通るので、牽引する方向は後方。

足の舟状骨は剥離骨折もあります。
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③つま先側への荷重による圧迫

つま先立ちでは舟状骨が距骨と楔状骨によって圧迫を受ける

前足部(つま先側)へ体重をかけることでアーチはつぶれ、とくに第1中足骨には軸圧力を受けます。

このときにも舟状骨は、距骨と内側楔状骨に両側から押しつぶされる力が加わります。

足根骨はパズルのように組み合わさっていてほとんど可動性がありません

舟状骨は後方を距骨、前方を内側楔状骨、中間楔状骨、側方を立方骨に囲まれています。

互いに靱帯で強固に結びついているので、力の逃げ場がないのです。
(これによって、大腿や下腿の筋力を地面に伝えられる!)

④踏み返し(蹴りだし)での剪断力

踏み返しによって舟状骨にかかる負担が増す。 剪断力と圧迫力

踏み返しとは、立位側の足で蹴りだすことで推進力を生みだす動きのこと。
足の縦アーチにおける「ウィンドラス機構」によって、推進力を強くする仕組みになっています。
(詳しくは、足部縦アーチの記事をご覧ください。)

このとき距骨側(足首側)には下方向の力(体重)。
前足部(母趾球側)は、床反力(ゆかはんりょく)により上方向の力。

床反力
地面を押した時に反対に押し返してくる力のこと。
作用・反作用の法則」による。
作用・反作用の法則
動かない物体に力が加わる(作用)と必ず反対方向へも同じ力で押し返す(反作用)。
作用・反作用は同一線で逆向きの力で打ち消しあう。

舟状骨部分で反対に向かう剪断力(せんだんりょく)が一歩ごとに毎回働きます。

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足部舟状骨疲労骨折になりやすい人

足舟状骨の疲労骨折は、稀な疾患ですが、「オーバーユース」が原因になるので条件次第で誰にでも起きる可能性があります。
オーバーユースの記事)

ただし、可動しにくい骨なので、罹患するのは運動の強度や頻度の多いアスリートがほとんどです。

ハイレベルのスポーツ選手に多い

陸上競技(中長距離が多い)、サッカー、バスケットボールのほか激しいスポーツに多いです。

とくに運動強度、運動頻度ともに多い、競技レベルの高いスポーツ選手に多いのが特徴。

どの年代でも発生はしますが、10代~20代前半の若年層に多い傾向があります。(アーチがしなりやすい!)

また、若年層に多いことと関係しますが、関節が柔らかい人、足部アライメント(配列)が乱れている人が発生しやすいです。

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リスク要因

足部舟状骨疲労骨折のリスク要因
硬い地面・靴底
体重の増加
オーバートレーニング
回内足・内側荷重が強い
ハイアーチ
関節がゆるい(とくにショパール関節)
ショパール関節の位置
ショパール関節
横足根関節(おうそくこんかんせつ)。
近位の踵骨・距骨と舟状骨・立方骨を分ける。
となり合う骨は平面関節で可動性は少ない。

足舟状骨の疲労骨折の原因は、①着地・ジャンプ(跳躍)・②踏み切り・踏み返し(蹴りだし)による機械的刺激が繰り返し患部に加わることです。

①着地時に舟状骨への負荷

  • 衝撃
  • 体重
  • 後脛骨筋の牽引
  • 前脛骨筋腱の圧迫
  • 内側縦アーチのしなり

②踏み返し・踏切り時の負荷

  • 荷重による剪断力・圧迫力
  • 後脛骨筋の働き
  • 縦アーチの巻き上げ

おもな症状

Nスポットは舟状骨疲労骨折の圧痛点。 前脛骨筋腱と長母趾伸筋腱の間の舟状骨部分
舟状骨疲労骨折の主な症状
腫脹(腫れ)
熱感(熱をもつ)
圧痛(押して痛い)
内返し・外返し時疼痛
前足部荷重・つま先立ちじ疼痛
第1~3趾の介達痛・軸圧痛(長軸に沿って押すと痛い)

特徴的なのは「Nスポット」(N-spot)の圧痛。
Nスポットは、舟状骨の内側の上部部分(内背側)に当たります。

舟状骨の疲労骨折は舟状骨近位部の背側で起きやすいので、完全に骨折していればこの部分周辺を押圧すると痛みを感じやすいです。

Nスポット
前脛骨筋腱と長母趾伸筋腱の間の舟状骨部分。
舟状骨結節を背側にたどっていくとわかりやすい。

痛みのでる始めのうちは、疼痛の場所もあいまいで足背部痛を訴える特徴があります。
(「足首の前」や「足の甲」が痛いと表現される)

初期には、運動時のみの症状、悪化するにしたがって日常生活時にも症状が現れ始めます。

疲労骨折の場所によって、第1~3趾に軸圧をかけると疼痛が誘発。
(第1趾軸圧痛が多い)

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診断と治療。早期発見が重要

足の舟状骨疲労骨折はレントゲン検査で見つけづらいのと、症状があいまいになりがちなので見つけられにくい特徴がある

足舟状骨の疲労骨折は、「難治性」(治りにくい)骨折のひとつ。

オーバーユース疾患なので、休養によって良くなると思いがちですが、診断・治療ともに注意が必要です。

実際、足舟状骨の疲労骨折でも、休養すると疼痛が減少するので、スポーツを継続してしまいがち。
これも骨折を悪化させ、難治性にしている要素のひとつと推測できます。

診断

レントゲン検査で分からないことが多いので、結果的に完全骨折や転移が生じてしまうことが多いです。

舟状骨の疲労骨折は、初期の症状があいまいで、運動時以外に痛みがでないことも診断を難しくする原因でもあるのです。

診断(舟状骨骨折と判明)が決定されるまでに時間を要すると偽関節になりやすいといわれています。
(荷重や運動の継続による圧迫や剪断力が働くため)

早期発見が重要」といわれるのはこのためです。

MRI画像CT画像骨シンチグラフィによる診断が有効とされています。

治療

患部には、荷重やつま先立ちによって違う方向に力が加わる「剪断力」が働きます。

この剪断力は足部にもともとある縦アーチによるもので、骨折端どうしを離開させてしまうことがあります。

なので、舟状骨の疲労骨折の治療は「完全免荷」(かんぜんめんか;体重をかけない)が基本。

もちろんスポーツ活動は中止。
(患部への負担がない範囲はOK!)

6週間以上のギプス固定

完全免荷(松葉づえ)

スポーツ復帰までは3か月以上かかることが多いです。
手術によって内固定(ビスなどで留める)が行われることもあります。

ただし、10代の骨が成長する可能性がある場合(骨端線閉鎖前)は保存療法が基本です。

ギプス除去後は、

足関節底屈制限(つま先を下げないように)
縦アーチ補助(アーチサポート)

にて、舟状骨への負担を一気に増やさないようにします。

舟状骨は基本的に血流の途絶えにくい骨ですが、背側の一部範囲だけ血流がわるい場所があるといわれます。
それが骨癒合まで時間がかかる理由だと推測できます。

最近の報告によると舟状骨の血流は良好であるものの,時に一部に血管が乏しい領域があることが示されている。われわれはその領域と骨折部位が概ね一致することから,局所的に不十分な血流も原因の 1 つではないかと推察している.

杉本和也ら 奈良県総合医療センター整形外科
『舟状骨疲労骨折の診断と治療』より引用

場所が近い・似ている疾患

足舟状骨の疲労骨折は、周辺の痛みとの鑑別も必要。

詳細は各リンクをご覧ください。

まとめ

足舟状骨の疲労骨折で痛む場所は、内くるぶしのちょっと前、足首の前側部分

  1. アスリートに多い難治性の疲労骨折
  2. 縦アーチによって剪断力が働く。
  3. 早期に発見できないと偽関節になりやすい
  4. レントゲンだけでは診断されにくい
  5. Nスポットの圧痛。
  6. 縦アーチへの荷重によって押しつぶすような力も働く。
  7. 6週以上のギプス固定と免荷(松葉づえ)
  8. ギプス除去後は底屈制限&アーチサポート
  9. スポーツ復帰までは3~6か月

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