こんにちは。荻窪のほんだ整骨院の山内健輔です。
足の甲の外側、小指に近い場所はスポーツ選手に多い疲労骨折が起こりやすい部位です。
とくに第5中足骨(だいごちゅうそくこつ)の根元(基部)に近い部分は、「ジョーンズ骨折」といって治りにくいことが特徴です。
放置しておくと骨がくっつかなかったり、変形したりする恐れもあるので、早い処置が必要な骨折。
加えて、疲労骨折はひどくなるまで放置されることが多い骨折でもあります。
今回の記事では、「ジョーンズ骨折」(第5中足骨近位骨幹部骨折)について紹介していきます。
『「ジョーンズ骨折」足の甲外側の疲労骨折。予後にも注意が必要』
このページでは「ジョーンズ骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
第5中足骨近位骨幹部疲労骨折について
ジョーンズ骨折と負傷の原因が似ていて、場所も近くのスポーツ障害となる疾患は多いです。
ただし、ジョーンズ骨折の場合、「予後が悪い」という特徴があります。
痛みの出る場所と原因、症状を覚えておくことで障害を予防、悪化を防ぎましょう。
とくにスポーツ選手やスポーツの指導者は気を付けておく必要があります。
⇒「疲労骨折」ってどんな骨折?見逃されやすいので注意が必要!
ちなみに長時間の歩行による中足骨疲労骨折のことを「行軍骨折」(こうぐんこっせつ)と呼ぶこともあります。
こちらは第2~4中足骨に多いです。
中足骨の疲労骨折
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場所
↑第5中足骨の近位部での骨折は、場所によって予後が変わるので注意が必要
第5中足骨基部からわずかに末梢側での疲労骨折。
正確にはゾーンⅡ部分で起きる骨折が「ジョーンズ骨折」ですが、広義に扱われる場合にはゾーンⅡ・Ⅲが含められています。
(この記事でもゾーンⅡ・Ⅲをジョーンズ骨折としています。)
場所は、ピンポイントで「ここ!」というよりは、足部(足の甲側)の外側周囲に痛みを訴えることが多いです。
原因
スポーツ選手に多く、
〇ターンや切り返し、サイドステップの多いスポーツ
(サッカーやバスケットボールなど)
〇硬い地面でのランニングやジャンプ
(陸上競技・ダンスなど)
〇10代
(骨が柔軟な時期に起きやすいが、成人でも発生する)
ただし、スポーツだけでなく、高いヒールで歩行を繰り返すことで生じる場合もあります。
もともと第5中足骨は、外側縦アーチを形成しています。
縦アーチ(縦足弓)は衝撃を吸収するためのサスペンションのようなもの。
(縦アーチの役割⇒足の縦アーチ(土踏まず)の役割。崩れると身体全体にも大きな影響!)
アーチの頂点に近い部分は最も屈曲力が加わる部分ですよね。
これがジョーンズ骨折の原因となります。
若年のほうが多いのは、骨の柔軟性によって、この「しなり」が大きくなるため。
切り返し(ターン)や硬い地面は衝撃を増幅させます。
疲労骨折といわれていますが、強い着地や切り返しの一度の衝撃によって骨折することもあります。(外傷性骨折)
歩行やランニング、ジャンプの着地時には、外側縦アーチがしなるのと同時に、長腓骨筋(ちょうひこつきん)と短腓骨筋(たんひこつきん)が収縮します。
骨幹部~基部(根元部分)はちょうど骨が細くなる部分であるうえに、基部には腓骨筋群による牽引力が加わることで、外側アーチにはバネの力になっているんです。
ジョーンズ骨折の危険因子は、
〇外側縦アーチがしなる
- 硬い地面&靴底
- 体重増加
- 繰り返す衝撃
〇腓骨筋群と周囲の靱帯による牽引(荷重時)
- 基部(近位)は腓骨筋群により後方へ
- 近位側は荷重により下方へ
- 第3腓骨筋が遠位部を上方へ
- 周囲の靱帯は基部を中枢側へ
腓骨筋群の働きについてはこちら!
こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。 腓骨筋(ひこつきん)って、あんまり聞いたことがない人もいるかもしれません。 正確にいうと 長腓骨筋(ちょうひこつきん) 短腓骨筋(たんひこつきん) 第3腓骨筋(だいさんひこつきん) […]
症状
皮下出血…少なめ、またはない
スポーツ中の痛み
荷重時疼痛
第5趾への軸圧痛
症状は、疲労骨折の程度によりますが、完全骨折になると腫脹や血腫が大きくなります。
疲労性ではなく、外傷性(一度の外力)で生じた場合には、腫脹や血腫も大きくなる傾向です。
この場合は、不全骨折(ヒビ)の状態だったものが、ターンや切り返しによって完全骨折にあることも含まれます。
ジョーンズ骨折の質(たち)の悪い理由としては、
- 不全の場合は比較的症状がでにくい
- 完全骨折するまでプレーできてしまう
- 本人も分かっていない(荷重をやめると疼痛↓)
- 明確な外傷の記憶がない
これらによって発見と受診が遅れることで悪化させやすいといえるでしょう。
ジョーンズ骨折は難治性
ジョーンズ骨折は「気を付けなければいけない」骨折のひとつ。
なぜかというと……予後不良(よごふりょう)になりやすいから!
- 再骨折
- 遷延癒合(せんえんゆごう)…治りが悪い
- 偽関節(ぎかんせつ)…くっつかない
- 癒合不全(変形治癒)
- 外側アーチの低下
- 足部形状(足部アライメント)の崩れ
第5中足骨の近位部分は、骨癒合しにくい条件がそろっているので「骨折の後遺症(合併症)」が起きやすいのです。
血液供給が乏しい
大きめの血管が末梢側から中枢へと走るので、近位側への血液供給が少なくなりやすいです。
もちろん、近位側からも毛細血管によって血液は供給されるので「壊死」することはほとんどありません。
ただし、末梢側からの血管が骨折によって、中枢側(基部側)と途切れるので、栄養が届きにくいので治りが悪くなるんです。
剪断力が働く
血液供給の減少に加えて、剪断力(せんだんりょく)が骨折部に働くのも特徴。
剪断力とは、互い違いの方向に働く力のこと。
そもそも骨折は骨折端を押し付けるような力が働いているとくっつきやすいものです。
ですが、剪断力が働き続けると癒合不全や偽関節を起こしてしまう原因にもなります。
この剪断力とは、前述した外側アーチのしなりと荷重、腓骨筋腱の働きによるもの。
前足部荷重(踏み返し時)や着地によって大きくなります。
鑑別疾患と診断
ジョーンズ骨折の起きる部位の近くには、他にも障害を起こしやすい場所が多くあります。
障害によって予後も固定期間も変わってくるので、正しい判断が必要です。
不安を感じた場合は、必ず整形外科での診断を受けましょう。
見逃されやすい
疲労骨折は、一度の強い衝撃が骨に加わって骨折してしまう通常の骨折とは異なります。日々のトレーニングで骨に疲労が蓄積した結果として骨が脆くなってしまい、通常では骨が折れないような軽い捻挫や片脚で踏ん張るなどの動作の際に、骨が折れてしまいます(写真1)。骨が脆くなっていく過程で、痛みを感じる(前兆)選手もいれば、特に痛みは感じず完全に骨折してしまってから疲労骨折に気付く選手もおります。
順天堂大学医学部付属順天堂医院・整形外科・スポーツ診療科「Jones骨折・第5中足骨疲労骨折」より引用
オーバーユースによって、骨組織が損傷することで生じますが、疲労骨折の初期にはレントゲン検査だけでは分からないことも。
時間が経過することで仮骨(かこつ)が形成されてレントゲン検査で判明することがあるんです。
加えて、完全骨折するまでは荷重できてしまうってことも、ケガの程度を軽く見られたり、見逃されてしまう原因のひとつ。
鑑別が必要
第5中足骨基部や近くにある立方骨(りっぽうこつ)は、ジョーンズ骨折が起きる場所に近いので、鑑別診断が必要です。
負傷する原因も似ていますが、部位によっては予後や対処が違うので気を付ける必要があります。
下駄ばき骨折(ゲタ骨折)
第5中足骨基部の骨折で、短腓骨筋腱が付着部の骨組織を引きはがすように損傷します。
⇒軽視はダメ!【下駄骨折】捻挫(ねんざ)に似ている剥離骨折!
イズリン病(イセリン病)
第5中足骨基部の骨端症。
まだ骨が硬化していない若年者におきる成長軟骨の障害です。
⇒イズリン病(イセリン病)は足の外側の骨端症。類似疾患にも注意!
短腓骨筋腱付着部炎
短腓骨筋の張力によって、第5中足骨基部で炎症を起こす障害。
足部を回外(足裏が内側を向く動き)することで生じるが、実際にはオーバーユース(着地を繰り返す)で起きやすいです。
⇒足の外側の骨が痛い!「短腓骨筋腱付着部炎」原因と再発予防。
立方骨症候群(りっぽうこつしょうこうぐん)
外側や前足部への荷重によって、立方骨に圧迫力が加わることで伊良皆が生じるもの。
⇒足の外側(小指側)が痛い!「立方骨症候群」とは?
立方骨疲労骨折(りっぽうこつひろうこっせつ)
外側や前足部への荷重で圧迫力が加わることで、立方骨に損傷が起きるもの。
⇒足外側の骨「立方骨疲労骨折」はどういうケガ?
治るまでには3か月以上かかる
治療は基本的に「患部の安静」を保つこと。
他の疲労骨折の場合は、スポーツ活動を中止して安静にすることで骨癒合することが多いのです。
ですが、ジョーンズ骨折の場合放置は厳禁。
必ず整形外科医の指示に従いましょう。
骨端線が閉鎖していない10代で生じた場合には保存療法(手術しないで固定)。
骨端線の閉鎖後は、手術によって固定する治療が選択されます。
どちらにしても、再骨折や遷延治癒のリスクが高いのでスポーツ復帰までには3~4か月かかることが多いです。
手術では、ワイヤーや髄内釘(スクリュー)で固定する術式がとられます。
手術療法はスクリューによる髄内固定術が一般的です。スポーツ復帰は個人差もありますが、術後2~3か月程度となります。一般的に手術療法は良好な治療成績であることが報告されていますが、髄内固定術に使用されるスクリューのデザイン、サイズ、設置位置が不良であれば遷延癒合、偽関節、再骨折などの合併症のリスクが高くなるといわれています。
兵庫医科大学「Jones(ジョーンズ)骨折(第5中足骨疲労骨折)」より引用
骨癒合が進んだあとも再発を予防するための緻密なリハビリ(機能回復訓練)が必要。
固定期間が長いため、足首~足部の柔軟性・筋力を回復させましょう。
ケガをした時の応急処置とは?
こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。 打撲やねんざなどのケガは、不意に起きてしまうものです。 とくに起きやすいのが、スポーツや外出の「疲れているとき」。 注意力が低下したり、疲労によって踏ん張りが効かなくなったりすることによっ[…]
予防は「知ること」から始まる
オーバーユースにより生じる障害です。
スポーツ選手に起きることがほとんどですが、残念ながらスポーツ選手や指導者の中でもジョーンズ骨折について詳しい人は少ないのが現状です。
まずは、第5中足骨の骨幹部の疲労骨折について知ることが予防につながります。
ターンや切り返し、サイドステップが多いスポーツや硬い地面を走るスポーツに発生しやすいこと。
治癒までの期間が長く、再発しやすいこと。
発生しやすいのは骨が柔らかい10代。
痛みが強いときは休ませたり、違うメニューを組み立てる柔軟性
これらを指導者は知っておく必要があります。
予防はオーバーユースを防ぐだけではありません。
足首のかたさは、着地時の接地面を小さくするため衝撃が強くなります。
下肢全体の柔軟性を高める
足部アライメント(足根骨の並び)
スパイク(シューズ)や地面
練習量や環境
もういちど見直して、予防に努めましょう。
⇒Jones骨折研究会ホームページ
⇒足舟状骨の疲労骨折。上部内側のしつこい痛みには要注意!
まとめ
- ジョーンズ骨折は第5中足骨近位骨幹部疲労骨折
- 見逃されやすい
- 外側荷重が強いスポーツで生じるオーバーユース
- 予後が悪い。
- 再骨折・偽関節・遷延治癒になりやすい
- 他の鑑別すべき疾患にも注意
- スポーツ復帰まで3か月以上かかる
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