こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。
「梨状筋」(りじょうきん)という筋肉はご存じですか?
梨状筋は、殿部の奥にある筋肉。
じっと長時間同じ姿勢で座っていたり、逆に使いすぎてしまったりすると、痛みがでやすい筋肉です。
梨状筋の近くには、下肢(脚~足)へ向かう「坐骨神経」が走行していて、緊張するとさまざまな症状が現れてきます。
薄い筋肉なので「疲れやすい」特徴があり、痛みやだるさの原因にもなりやすいのです。
股関節を動かすだけでなく、立位や歩行にも大事な働きをしており、腰や臀部、下肢まわりの筋肉の中でも重要度は高め。
日常的に使われていて、疲労しやすい、坐骨神経に影響を与えやすい、という特徴から自分でもケアしておきたい場所でもあります。
今回の記事では、梨状筋の概要とストレッチ、トレーニングを含めたケアのしかたについて紹介していきましょう。
『「梨状筋」についてくわしく紹介!ストレッチとトレーニングは?』
このページでは「梨状筋」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
梨状筋の起始停止と場所
梨状筋は、殿部の深層にある筋肉で、「インナーマッスル」(深層筋)のひとつです。
洋ナシのシルエットに似ているところから「梨状筋」(ナシのような筋肉)と名付けられています。
(英語でも「ナシ状の筋肉」piriformis muscle)
薄い板状の筋肉なので、耐久性が低いので疲労しやすく、強い負荷にも弱さがあります。
梨状筋の起始停止と支配神経
筋肉や靱帯の骨への付着部、中枢側を「起始部」、末梢側を「停止部」と呼ぶ。
脳や脊髄からの遠心性神経(筋への命令)、筋からの求心性神経(筋から脳へ)が、どの末梢神経を通っているかを示す。
「~筋は…神経の支配を受ける」と表現される。
〇起始部
仙骨前面のS₂~₄仙骨孔の間・外側
〇停止部
大転子内側上縁部
〇支配神経
L₅・S₁~₂から出てくる仙骨神経叢(せんこつしんけいそう)
(仙骨神経叢はまとまって「坐骨神経」を形成する)
梨状筋の場所と走行
仙骨の前面から起始。
停止部は骨盤の後ろ側に位置する大腿骨大転子上縁(だいたいこつだいてんしじょうえん)。
つまり!
骨盤骨の前側から後方へとつながっている筋肉なのです。
どうやって前面から後面に突き抜けるかというと、「大坐骨孔」(だいざこつこう)という穴がポイント。
仙棘靱帯(せんきょくじんたい)によって、上下に分けられた、上側の「大坐骨孔」を通って骨盤の後面にある大転子部へと向かいます。
仙骨・尾骨の後面から坐骨棘に向かう靱帯。
大坐骨切痕(だいざこつせっこん)を上下に分けている靱帯。
この走行は、仙骨神経叢(せんこつしんけいそう)がまとまってできる坐骨神経の走行に干渉することがあり、殿部や下肢の神経障害を引き起こしてしまうことがあります。
停止部は、大転子の上縁部。
停止部のわずかな違いによっても、梨状筋が股関節の動きに与える影響が変わります。
梨状筋の作用
歩行バランスの安定
片足立ちの安定化
体幹と下肢をつなぐ
下肢からの衝撃を吸収
梨状筋には、それだけでなく大事な働きがあるのです。
実は、股関節においては梨状筋を含む深層の筋肉がその役割をしているのです。
梨状筋の運動作用
梨状筋の運動の作用は通常、
股関節の外旋(がいせん)
(※股関節屈曲60°以上で内旋作用)
股関節の外転(がいてん)
梨状筋は深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)のひとつ。
股関節を外旋、つま先や膝を外に向ける動き。
しんそうがいせんろっきん。
内閉鎖筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋・梨状筋の6つの筋肉。
臀部の深層で股関節を外旋させる作用のある筋肉群。
もうひとつは、股関節を外転、足を外側に持ち上げる(開く)動き。
梨状筋の運動で複雑なところは、もうひとつあります。
実は、股関節を屈曲(前方に膝を持ち上げる)動き60~90°で、股関節内旋(つま先と膝を内側に向ける)の作用がある点。
「運動作用の逆転」といって、骨の位置によって作用が変わることをいいます。
筋肉は縮むことで力を発揮します。
股関節が深めに屈曲することで、梨状筋は内旋の作用になるわけです。
股関節が深く屈曲されると大転子の上縁部だった部分は後方に移動。
その結果、梨状筋が縮もうとすると、大腿骨を内旋させることになります。
ただし、大腿骨の形状には多少個人差があります。
股関節屈曲時での内旋作用は弱く、人によっては「外旋作用が消失」する程度のこともあります。

運動以外の作用
梨状筋には、運動以外の働きもあります。
大腿骨頭を骨盤に引きつける!
股関節の周囲には強力な靱帯が多く存在して、関節の安定性を保ちます。
ただし、股関節の姿位によっては、それが緩んでしまうことがあるのです。
歩行バランスの安定
片足立ちの安定化
梨状筋は常に大腿骨頭を寛骨(かんこつ:骨盤)に押しつけるような働きをしています。
立位や片足立ちのときには、他の殿部の筋とともに骨盤が傾かないように働き、安定させているのです。
体幹と下肢をつなぐ
下肢からの衝撃を吸収
骨盤と大腿骨を繋いでいることから、体幹部の力を下肢(脚)へと伝える働きがあります。
それと同時に、足裏からの衝撃を他の筋肉とともに股関節で吸収することも梨状筋の役割のひとつです。
坐骨神経痛の原因にもなる!
梨状筋の作用は、股関節の運動(動き)だけに関するものだけでなく、大腿骨頭を関節窩に押しつける役割もあります。
ということは、「日常的に使われている筋肉」ってこと。
梨状筋は疲れやすい!
ゴルフやテニス、野球など身体を回転させながら打つようなスポーツ。
体幹部をひねっているように見えますが、実際の軸は前方にあたる「股関節」。
回転系のスポーツのほかにジャンプや切り返し(ターン)、Stop&Goの多いスポーツでも頻繁に使われています。サッカーやバスケットボールなど。
さらに、ランニングの多いスポーツでも繰り返し使われる(衝撃吸収)ので、オーバーユースに陥りやすい筋肉でもあるのです。
一方で、デスクワークなどの長時間の同一姿勢。
とくに座った姿勢で骨盤が後方に倒れがちな人。
こんな人は、梨状筋が体重の下敷きになりやすいのです。
ってことは、
「使っても、使わなくても疲れる」
薄い筋肉なので、筋線維の数も少ないです。
少ない線維に強い負荷がかかりやすいインナーマッスルなので、緊張しやすい筋肉といえます。
オーバーユースってなに?
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脚の神経痛は梨状筋が原因の場合も。
梨状筋は、仙骨の前方から腸骨の後方へとつながる筋肉。
仙骨孔から出てくる末梢神経で構成される「坐骨神経」と似たような走行をします。
坐骨神経は仙骨孔の前方からでて、大腿部後方を通過。
このときに梨状筋が坐骨神経の走行を邪魔して干渉しやすいのです。
人によって、坐骨神経が梨状筋をどう避けるかは個人差があります。
- 梨状筋上部を走行
- 梨状筋下部を走行
- 梨状筋の上と下から走行して合流
- 梨状筋を貫くように走行
どの経路を通っても、梨状筋の緊張によって坐骨神経が締め付けられる「神経絞扼障害」(しんけいこうやくしょうがい)を生じやすいのです。
梨状筋の緊張は「梨状筋症候群」(りじょうきんしょうこうぐん)と呼ばれ、坐骨神経の支配領域に痛みやしびれ、知覚障害を起こします。
しかも梨状筋は、仙骨神経叢(せんこつしんけいそう)の支配を受けます。
神経絞扼によって、よけいに梨状筋が緊張して、神経圧迫を助長して症状を悪化させる場合もあるのです。
参考
梨状筋症候群
梨状筋は、臀部の深部にある小さな筋肉で、坐骨神経に非常に近い位置にあります。梨状筋症候群は、この筋肉が異常に収縮し、坐骨神経を圧迫することによって引き起こされる痛みの状態です。この症候群は、長時間の座位や足の運動不足、スポーツの過剰な活動などが原因となることがあります。症状は坐骨神経痛に似ており、腰から臀部、脚の裏側にかけて痛みやしびれが生じることがあります。
梨状筋のストレッチとトレーニング
梨状筋の緊張や弱体化は、スポーツパフォーマンスの低下だけでなく、坐骨神経痛を引き起こすことも。
さらに歩行バランスを崩したり、股関節が不安定になり変形性関節症を助長したり、腰痛を引き起こしたりする危険性も。
日頃からストレッチ、トレーニングでケアをしておきたい筋肉です。
ストレッチ
ストレッチは起始と停止を遠ざけるようにするのが基本。
股関節の回旋運動や内転運動によって梨状筋を伸ばすことができます。
膝を抱えて、股関節を屈曲&外旋
(股関節を深く屈曲させると内旋作用が働くので「外旋」で伸ばせる)
股関節を内転させるように伸ばしてもOK。
「筋肉をほぐす」手段としては、テニスボールもアリ。
自分で効きやすいポイントを探しながら、優しくマッサージするように。
↑坐骨神経があるので、ゴリゴリしないように注意が必要。
トレーニング
単独で鍛えるのは難しいので、他の筋肉と一緒にトレーニング。
片足立ちになって外転。
バンドを両大腿にかけて横歩き。
足を開いた状態でスクワットすると殿部にも効きやすいです。
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梨状筋についてまとめ
- 仙骨前面から後方へと走行
- 深層外旋六筋のひとつ(インナーマッスル)
- 股関節外旋と外転。
- 屈曲60°以上で内旋作用に変わる。
- 大腿骨頭を骨盤に引きつける働き
- 使いすぎても使わなくても緊張してしまう筋肉
- 坐骨神経を絞扼しやすい(梨状筋症候群)
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