内くるぶしの下や後ろが痛い!後脛骨筋腱炎ってどんなケガ?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

 

ランニングやハイキング、または長時間の立ち姿勢で内くるぶしの下や後ろが痛いと思ったことはありませんか?

捻挫(ねんざ)した覚えはないのに、押すと痛かったり、少し腫れていたり。

今回は、『内くるぶし(脛骨内果)の痛み』について紹介していきましょう。

内くるぶしの下や後ろが痛い!後脛骨筋腱炎ってどんなケガ?

【後脛骨筋腱炎】

内くるぶしの後方から下方を走る「後脛骨筋腱」が物理的刺激を受けることで、腱鞘・滑膜・腱が摩耗したり損傷したりします。内くるぶしの後方や下、さらには少し前方の舟状骨ちかくに痛みを生じます。

〇初期はつま先立ちや押すと痛い(圧痛)。
〇進行してくると立位や歩行時にも強い痛みを生じます。

物理的な摩擦や荷重、衝撃などの外力だけでなく、関節リウマチや痛風発作、糖尿病や加齢による腱の変性(もろくなる!)によっても起こることがあります。

※このページでは「後脛骨筋腱炎」を紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

後脛骨筋腱とは。

 

後脛骨筋は脛骨内果’内くるぶし)のすぐ後ろを通り、骨と擦れやすい。縦アーチを支える役割もしている。

後脛骨筋は、ふくらはぎの奥にある筋肉です。
脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)の後ろ側が起始部。
広い範囲から起始した後脛骨筋は、足首の後ろ側でひとつにまとまり、「後脛骨筋腱」を形成します。

後脛骨筋腱は、脛骨内果(けいこつないか)=内側のくるぶしを滑車のように使って、前方の「舟状骨結節」(しゅうじょうこつけっせつ)に停止(骨にくっつく)します。

「腱」というのは、筋肉がまとまってひとつになり、骨にくっつく繊維なんです。
よく一般の方は「すじ」と呼んでいますね。

後脛骨筋に力が入ると筋肉は縮みます。
腱は伸縮しない硬い結合組織なので、この力が付着部の舟状骨に伝わります。

後脛骨筋腱は、内くるぶしの後ろから前に走行しているので、後脛骨筋に力が入ると足首の動きは、

底屈ーつま先を下げる。
回外ー親指側を持ち上げる。
内反ー「底屈」+「回外」

という動きをします。

後脛骨筋腱は「足根管」という管を通ります。⇒「足根管」。内果とかかとの間にある大事なものを通すトンネル!

後脛骨筋の役割は「衝撃吸収」!

 

後脛骨筋は足根管の内果寄りを通り、急に曲がるので擦れやすい。舟状骨を上方に持ち上げることで内側縦アーチを持ち上げる役割をしている

後脛骨筋は足首の運動に関しては、大きな筋肉の動きを補助する形で使われることが多いです。

が、

もっと重要な役割があります!

『内側縦アーチの維持』

足部の縦アーチには、ふたつの重要な役割があります。

〇歩行やランニング、ジャンプによる衝撃をやわらげるクッションのような役割
〇歩行やランニング時に地面を蹴りだすバネのような役割

後脛骨筋腱は舟状骨結節(足部の内側)を持ち上げるように付着するので、内側縦アーチの維持を担っているのです。

後脛骨筋が疲れてしまったり、弱くなってしまうと地面からの衝撃が吸収しづらくなり、地面の蹴りだしが弱くなるので疲れやすくなります。

後脛骨筋の牽引力が弱くなる。

足部の変形
内側縦アーチの減少(偏平足
足部後方(かかと)が外反(過回内:オーバープロネーション)

衝撃吸収・蹴りだしが弱くなる。

骨・荷重関節への負担増、変形。

詳しくは、こちらの記事で解説しています。
⇒【「後脛骨筋」(こうけいこつきん)。立位でバランスとるための大事な筋肉!

関連記事:足指のつけ根付近の痛みにはどんな障害がある?⇒前足部の足指のつけ根付近「中足骨頭部の痛み」はどんな種類がある?

内側縦アーチへの負担が原因!

後脛骨筋腱炎の原因
ランニング・ジャンプ・ウォーキング
長時間の立ち仕事

上記のように後脛骨筋は内側縦アーチの形成に役立っています。

ただ、縦アーチが地面からの衝撃を受けるたびに後脛骨筋は引っ張られますよね。
このとき、腱は内くるぶしを回るように走行しているので、摩擦を受けやすいのです。

さらにシューズの縁が内くるぶしの下縁を圧迫するのが重なると余計に炎症を起こしやすくなります。

とくに中高年以降の女性や糖尿病をもっている方では腱が傷つきやすい状態になっているので注意が必要です。
関節リウマチ(RA)や痛風発作では炎症が腱鞘(けんしょう)や周囲の滑膜(かつまく)に及んでいることもあります。

また、長時間の立位姿勢は、常に縦アーチに荷重がかかっているので、後脛骨筋は緊張しっぱなしの状態です。
立ち仕事などで負荷が長時間や長期間に及ぶと痛みも出やすくなります。

後脛骨筋機能不全(PTTD)
後脛骨筋腱が伸張してしまったり、断裂してしまったりすることで、偏平足が進んだ状態。
かかとが過回内して内側縦アーチが消失。
外反母趾や変形性関節症の原因にもなります。
とくにはっきりした原因が特定できない場合が多いです。

後脛骨筋腱機能不全とは?

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後脛骨筋の機能が低下すると「回内足」になりやすい!⇒「回内足」(かいないそく)と「過回内」(オーバープロネーション)

関連記事:内側縦アーチを保持することは、下肢全体の健康にとても重要です!⇒足の(縦)アーチの役割。崩れると身体全体にも大きな影響!

後脛骨筋腱機能不全になりやすいリスク要因⇒かかとが傾く後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の原因とリスク要因とは?

後脛骨筋腱炎の症状は?

後脛骨筋腱の痛み

初期は、

ときどき痛い!
つま先立ちで痛い!
押すと痛い!

進行すると、

歩行時・ジャンプ・ランニングで痛い!
腫れやむくみ。
つま先を下げるだけで痛い!

その他にも偏平足や過回内がみられることもあります。

有痛性外脛骨(外脛骨障害)って?

外脛骨障害

後脛骨筋腱の付着部に「過剰骨」とよばれる外脛骨がみられる人がいます。

外脛骨があること自体はなんの問題もありません。
ただし、偏平足や足部の過回内が併発するとその外脛骨が痛むことがあります。

腱の付着部なので負担や摩擦がおきやすく、外脛骨自体もぶつけたりこすれたりしやすいのです。

「シンスプリント」はスネの痛み。

痛みが出る場所

シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)はスネの内側が痛む障害です。

10代のスポーツをする人に多い疾患です。
「過労性」であるためオーバーユース(使い過ぎ)が遠因です。

10代の脛骨は弾力性がある骨なので、繰り返しのランニングやジャンプによる衝撃でたわみます。

さらにその衝撃をやわらげるために後脛骨筋が強く収縮するために、脛骨の骨膜部分で炎症が起こるのです。

治療と予防

急性期(腫れや熱感があるとき)には冷却安静を要します。
損傷している場合や断裂しているときには手術になることもあります。

さらに重症例では、足関節装具サポーターインソール「内側縦アーチの保護」と「足部の外反予防」を行います。

ヒールカップ」といって、かかと(踵骨)を少し上げて
、かかとの骨が倒れにくくするものも有効です。

後脛骨筋腱がもろくなり、損傷や断裂を引き起こすと足部変形の原因になります。
初期のうちに対処しておきたいですね。

後脛骨筋のストレッチとトレーニングについてはこちらの記事でも紹介しています。

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鑑別が必要!

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離断性骨軟骨炎
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三角靭帯損傷脛骨内果骨折は明らかな原因があるはずです。転んだ・捻った・ぶつけたなど

長母趾屈筋腱炎・腱鞘炎
後脛骨筋腱炎と同じような場所に痛みがあります。
足首を背屈(つま先を持ち上げる)しながら、母趾(親指)を反らせることで疼痛が憎悪するならば「長母指屈筋腱炎」です。
長母趾屈筋腱炎・腱鞘炎は足首の後ろの痛みやひっかかり感。

足舟状骨の疲労骨折
Nスポット(前脛骨筋腱と長母趾伸筋腱の間の舟状骨部分)に圧痛。荷重で痛みます。
アーチが沈み込むことによって舟状骨が前後に圧迫されることで生じることが多いです。
足舟状骨の疲労骨折。上部内側のしつこい痛みには要注意!

他にも痛風発作化膿性関節炎関節リウマチによる炎症も考えられますので、痛みがあれば整形外科を受診しておきましょう!

後脛骨筋腱機能不全によって生じやすい痛みや変形⇒後脛骨筋腱機能不全が進行することで生じる足の痛みや変形。

「後脛骨筋腱炎」まとめ

足部の縦アーチ

〇内くるぶし(内果)の下や後ろを押すと痛い。
〇初期にはときどき痛み。進行すると立ち上がるだけでもイタイ。
〇つま先立ちで痛みが出ることが多い。
〇明らかな外傷(ぶつけた・捻ったなど)がないことが多い。
〇内側縦アーチをつり上げている腱。
〇後脛骨筋に関連する疾患「シンスプリント」「外脛骨障害」
〇内くるぶし周囲の痛みは鑑別すべき疾患が多い!

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