痛みは「冷やす」「温める」どっちがいい?温熱と冷却を使い分ける!

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

ケガをしたとき。
朝、起きて腰が痛いとき。
首や肩がだるいとき。
じっとしていても関節が痛いとき。

温めたほうがいいのか、冷やしたほうがいいのか迷う人も多いですよね。

痛みの対処法はその原因によって変わってくるので余計に、

わかりにくい!

今回の記事ではどんなときに、

冷やしたほうがいいのか
温めたほうがいいのか

迷ったときに覚えておいてほしいことを紹介します。

※この記事における「痛み」とは、骨や筋肉に由来する痛みを想定しています。
中枢神経や臓器に由来するものは専門医にご相談ください。

たらいなど間口の広い容器に湯を入れて足を温めている

痛みは「冷やす」「温める」どっちがいい?温熱と冷却を使い分ける!

※ご注意!
このページでは「痛みに対する冷却と温熱」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

基本的には「炎症」の有無で決める

冷やす 温める 交互に
急性期
慢性期
回復期
疲労

 

結論からいうと、

炎症があるときは、冷却(アイシング)
それ以外は、温熱。

と覚えておけばいいでしょう。

炎症が起きるのは、ケガなどなんらかの組織損傷の後(ほかにも細菌やウィルス感染によるものもあります)

軽いケガで3日間前後、損傷が大きいほど長期間にわたります。
具体的には、「ぶつけた・ひねった・ちぎれた」「腱鞘炎などの機械的刺激による痛み」「関節炎」・・・などなど

温熱も冷却もどちらも痛みを和らげる作用(疼痛緩和)があります。

炎症
組織損傷や感染が起きたとき、血液成分が侵入物や不要物を攻撃するための作用。
血管透過性(血液の成分が組織間に滲出する)が亢進(増加)して、生命活動を守ろうとする反応でもある。
腫脹・熱感・発赤がおもな症状で強い痛みも特徴的。(炎症の四徴候)(+機能障害で5徴候

炎症があるときに冷却する理由

氷のうで膝を冷却(アイシング)している様子
おもな理由
①血管収縮によって、過剰な出血を抑える
②筋緊張の亢進による出血防止と患部保護
③細胞活動(代謝)を減少させる
③疼痛・苦痛の緩和

組織が損傷すると毛細血管から血液成分が大量に滲出します。
壊れた細胞を除去するため、感染があれば免疫細胞が異物と闘うためです。
これが腫れ(腫脹)の原因。

細胞の活動には酸素が必要ですね。
「腫れ」が損傷組織以外の正常な細胞周辺にまで広がると、毛細血管からの酸素が届きません
正常な細胞まで酸欠になってしまいます。

このときに

冷やすと・・・細胞活動(代謝)が下がり必要酸素量も減少する。

温めると・・・細胞活動が活発になり必要酸素量も増加する。

炎症があるときに温めてしまうと!

酸欠で壊死する細胞が増える
↑↓
壊死した細胞を取り除くために余計に血管透過性が亢進する
腫れがひどくなる

負のループが繰り返されて、炎症が広がる結果になります。

一方、炎症があるときに冷やすと!

酸欠で壊死する細胞が減少

再生する細胞が少なくて済む

治癒までの期間を短くできる!

一方で「アイシングをしない」という選択もされるようになってきています。

アイシングを行うと筋肉の再生が遅れることが確認されたのです。アイシングによる血流の低下によって、筋肉の再生に必要なマクロファージという細胞の働きに影響が出ていると考えられます。アイシングには痛みを緩和する効果がありますが、損傷した組織の回復にはマイナス面があるようなのです。
NHK「冷やす?温める?最新ケア 打撲・捻挫・肉離れの対処法」より引用

これについては、また別の記事で紹介しますね。

寒冷療法と温熱療法の比較

冷却 温熱
血管収縮
筋緊張亢進
細胞活動減少
疼痛・苦痛の緩和
効果 血管拡張
筋緊張緩和
細胞活動活発化
関節動きやすくなる
リラックス・疼痛緩和
炎症があるとき
急性でも慢性でも熱感があるとき
使うとき 慢性期回復期
疲労などいろいろ使える
循環障害
意識障害
感覚障害
皮膚疾患
血栓ができやすい
寒冷アレルギー
レイノー病
心臓周囲
禁忌
(きんき)
急性炎症
悪性腫瘍
循環障害
意識障害
感覚障害
出血部位
血管の疾患
重度の浮腫

 

温熱・冷却ともに皮膚損傷(熱傷・凍傷)に気を付けながら行いましょう。
禁忌(やってはいけないとき)に注意しながら行うこと!

両方使う治療もある!

寒冷(アイシング)と温熱を交互に行うことで血流の改善が期待できる

実は、どっちかしか使ってはいけないわけではなくて、それぞれの効果を狙って、冷やすのと温めるのを交互に行う治療もあります。

冷と温を交互に行うと何が起きるかというと、

筋肉の緊張と弛緩
血管の収縮と拡張

両方繰り返し起こりますね。
これらを利用して血流を向上させることで、血管のポンプ作用を増進させます。

※急性の炎症がひいてから行われます。

静脈には「弁」がついているので、血液還流(静脈血が心臓へ戻る)
を上昇させて患部の血流量を増やす目的で行います。

血流をよくすることで組織の回復も早くするわけですね。

他にもあります。
拘縮(こうしゅく)は固定後に起きやすい組織の癒着が原因。
関節の可動域が狭くなる、動きにくくなるものです。

拘縮(こうしゅく)
外傷後、患部の固定により組織が再生するときに、周囲の組織といっしょにくっついてしまうこと。

その拘縮を除去するためには、癒着した組織を壊す必要があります。

リハビリでは、最初に温めてから筋肉や関節をやわらかくして、動かします。

このときに癒着した結合組織が損傷して炎症が起きることになりますね。当然、痛みもでます。

このときの炎症はわずかなので、患部を冷やしておくと痛みが長引くことを防げるのです。

拘縮のリハビリでは施術前に温める→施術後に冷却をすることもあります。

まとめ

〇外傷後や使いすぎで炎症があるときは冷却(寒冷療法)
〇筋緊張や関節痛、神経痛、慢性期、回復期の場合は温熱。
〇血流促進の目的で交互に行うこともある。
〇凍傷・熱傷に気を付ける。
〇禁忌(やってはいけない)を守ること。
〇「温」でも「冷」なく冷やさない「保温」も治療のひとつ。

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参考サイト

久我山病院HP
「あなたの常識あってますか?~痛みが出たとき温める?冷やす?~」

NHK
冷やす?温める?最新ケア 打撲・捻挫・肉離れの対処法