子どもが足の親指を痛がる。母趾基節骨の骨端症の原因と治療

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

子どもの骨は大きくなるために、骨のはじっこ部分に軟骨組織があります。

とくにスポーツをする人は足の親指の付け根部分には大きな負担がかかります。
子どもは骨と同時に体重も運動量もどんどん増加しますよね。

母趾の基節骨基部(きせつこつきぶ)は、足の親指の根元部分
10代後半までは、骨端軟骨(こったんなんこつ)という柔らかい部分があるので、大きな負担がかかりやすいです。

この部分の痛みは、負荷をかけなければ痛みが弱いことがあったり、歩けてしまうことがあったりすることから「ねんざ」として処理されがちです。

正しく「ねんざ」として処置されていればまだいいのですが、軽視されてしまっていると大きな問題が生じることもあります。

今回は足の親指の根元部分の痛み「母趾基節骨骨端症」(ぼしきせつこつこったんしょう)について紹介します。

母趾基節骨骨端症は、つま先立ちなどで母趾背屈状態で地面に足を着いたときに痛みが生じる

子どもが足の親指を痛がる。母趾基節骨の骨端症の原因と治療

※ご注意!
このページでは「母趾基節骨骨端症」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

母趾基節骨骨端症とは?

母趾基節骨の基部にある骨端軟骨に負荷がかかりすぎたものが骨端症

子どもの長細い骨の成長は、骨端軟骨(こったんなんこつ)という部分が石灰化(カルシウムが沈着)することで伸びていきます。

骨端症(こったんしょう)
骨端症は骨端軟骨部分が損傷したり、血行路が遮断されることで骨壊死(こつえし)を引き起こしたりすること。
(骨端症とは⇒骨端症ってどうして起きる?子どもが痛みを訴えたら軽視しないで!

足の親指のつけ根の関節(MTP関節または中足趾節関節)の近くには、基節骨側(親指の骨)に骨端軟骨があります。

※第1中足骨の骨頭~頚部には骨端線はない
第2~第5中足骨にはある。
第一中足骨頭部のみ骨端軟骨はない。母趾背屈で荷重されることで基節骨骨端軟骨に負荷がかかる

母趾のMTP関節部分には

歩行やランニングでの踏み返し
ジャンプの踏み切り
つま先立ち

によって、体重プラス床反力(地面から押し返す力)で圧迫される力が加わります。

とくに足指を伸展(反る)する動きが繰り返されることで、骨の柔らかい部分=骨端軟骨が大きなダメージを受け続けることになります。

第1中足骨の骨頭部には骨端線(骨端軟骨)がなく、中足骨頭部はかたくなっています。
一方で基節骨の基部側は骨端軟骨で柔らかいので、こちらが傷つきます。

スポーツをしている人に多いことから、「オーバーユース」によるものと考えられています。

母趾基節骨骨端症の症状
腫脹(腫れ)
歩行時痛(踏み返し時)
背屈時痛(親指を反らせる)
子どもの骨はどうやって大きくなる?
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どんな動きが原因になる?

母趾基節骨骨端症は跳躍の踏切りを繰り返すことでなりやすい母趾基節骨骨端症はランニングの踏み返し(蹴りだし動作のときに負荷が強くなる
痛みが出る運動
陸上競技・ランニング・跳躍種目・ジャンプの多い競技・サッカーのキック(インフロントキック)

母趾MTP関節(中足趾節関節)に負担のかかる動きは、

歩行・ランニング・ジャンプでの

母趾背屈(親指を反らせる)

踏み返し(蹴りだし)
踏み切り(ジャンプの)

この動きを繰り返すのがスポーツ。
母趾が長い人のほうが負担が大きくなりやすいです。

とくに10歳前後の子どもは成長スピードが上がり、体重も上昇してくるころ。
運動の量も強度もそれに伴い増加します。

サッカーも母趾基節骨骨端症の好発スポーツ

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見分けておきたい別の疾患

子どもの足の骨は成長軟骨があり、大人よりも数が多く見える
MTP関節周囲の疾患
ターフトゥ
種子骨障害
強剛母趾
長母趾伸筋腱炎
靱帯損傷
骨折
骨端線損傷(こったんせんそんしょう)

ターフトゥ
母趾のMTP関節底側の靱帯や蹠側板(せきそくばん)という支持組織の損傷です。
「ターフトゥ」は中足趾節(MTP)関節底側(母趾球)の損傷。反らせると痛い!

種子骨障害
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強剛母趾(きょうごうぼし)
変形性関節症のひとつで子どもが発症するの稀ですが、関節軟骨のインピンジメント(ぶつかり)によって生じることがあります。
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長母趾伸筋腱炎
親指を背屈させる筋肉の腱(けん)がなにかと擦れて炎症を生じるものです。
足首前側や足の甲にある「すじ」(腱)が痛い!長母趾伸筋腱の炎症(損傷)

靱帯損傷
繰り返しの痛みというよりも一度の外力で生じることが多いです。
足指の側副靭帯の損傷。足の指をぶつけたときに起きやすい捻挫

骨折
靱帯の牽引による剥離骨折や外力による骨折の場合もあります。
足指の骨折。タンスに足をぶつけた!ヒールで指を踏まれた!
足の指を剥離骨折。足指をひっかけたり、ぶつけたり。

骨端線損傷
骨端軟骨部分が損傷すること。骨折のひとつ。
骨端線の損傷は成長障害を引き起こす可能性があるので慎重な治療が必要。
骨端線が損傷して離開(りかい)してしまうこともあり、「骨端線離開」といいます。

母趾基節骨骨端症の治療と予防

足指のシーネ固定↑初期は強めに固定しておくほうが安心。

多くが保存療法(手術しない治療)が選択されます。
急性症状(熱感や腫れ)がある場合はアイシング
(⇒受傷後のアイシング(冷却)。治療期間を短縮する効果あり!【応急処置】

患部を安静にさせるために固定も行います。

固定の方法は、初期は底屈・背屈ともに強めに制限しておくことが重要。
痛みの具合をみながら固定を弱いものにしていきます。
(拘縮を引き起こさないため)

母趾のMTP関節は固定したまま(手で押さえながらがよい)、IP関節(趾節間関節)の曲げ伸ばしは積極的に行っておきましょう。

スポーツ復帰までは3週~4週の安静をみて、経過に応じて運動を再開させる必要があります。

早期に復帰させすぎると再発させたり、成長障害の可能性があるので気を付けなければいけません。

【まとめ】成長期母趾基節骨骨端症 7 例の臨床像を検討した.ジャンプの踏み切り動作が発症に関与している可能性が考えられた.全例保存療法で良好な結果が得られたが,他のオーバーユースによる障害に対する注意も必要であると思われた

 「成長期母趾基節骨骨端症の検討」公益財団法人スポーツ医・科学研究所 熊澤雅樹 横江清司 亀山 泰

予防について

オーバーユース」を防止すること!

といっても、わかりづらいですね。

痛みが出た時点で、その痛みが出る動きは休止させる!

子どもの成長には個人差があり、体力や筋量、骨の耐久力は大きな差が出ます。
とくに10歳前後の子どもでは第2次成長期を迎える時期。

運動を指導する大人や保護者は、この世代の子どもは運動への耐久力や能力の個人差が大きいことを理解しておきましょう。

硬い地面での運動や組織の再生速度を超える反復運動は「オーバーユース症候群」を発症させやすくします。

練習環境やフォーム、道具の整備(シューズ)などケガを予防する態勢を整えることも大切です。

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まとめ

  1. 中足骨頭部(かたい)と基節骨骨端部(やわらかい)がぶつかる
  2. ジャンプや跳躍競技で多い
  3. サッカーなど長距離を走る練習でもなることがある
  4. 母趾が長い人がなりやすい
  5. ジャンプ踏み切りや踏み返しが原因と考えられる
  6. 背屈+体重によるもの
  7. 充分な安静がとれれば予後はよい

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