かかとが傾く後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の原因とリスク要因とは?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

内くるぶしの後方や下部に痛みが出たあと、かかとが内側に倒れてくる「後脛骨筋腱機能不全」。(こうけいこつきんけんきのうふぜん)

あまり聞いたことがない人も多いかもしれませんね。
ですが、いろいろな人の足を見ているとかかとがきちんと立てずに傾いてしまっている人が多く見受けられます。

後脛骨筋腱機能不全に陥ると扁平足や回内足だけでなく、いろいろな足の痛みの原因にもなってしまうことがあります。

今回は「後脛骨筋腱機能不全(PTTD)のリスク」について紹介していきます。

後脛骨筋腱機能不全を後方から見るとかかとが内側に倒れて見え、足指が多く見える

かかとが傾く後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の原因とリスク要因とは?

※ご注意!
このページでは「後脛骨筋腱機能不全のリスク要因」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

後脛骨筋腱機能不全(PTTD)とは?

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後脛骨筋腱機能不全が生じるしくみ

後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の外観は内果周辺に腫脹や浮腫がみられ、進行すると内側縦アーチが減少して扁平足になる。後方から見ると踵骨がないほうに倒れている

後脛骨筋腱機能不全(こうけいこつきんけんきのうふぜん)は、posterior tibial tendon dysfunctionの頭文字をとってPTTDといわれます。

内くるぶし(脛骨内果)周囲に痛みが出て、進行すると足部の形状が変化するおそれがあります。

後脛骨筋は足部にある内側縦アーチを上方に引っ張る役割をしている筋肉で、その腱が機能不全に陥ると縦アーチを形成するそのほかの組織の負担が急上昇します。

これによってほかの組織に損傷が波及していろいろな痛みや変形の原因になるんです。

後脛骨筋腱が損傷する

修復と損傷を繰り返す

腱が延伸(延長治癒) or 断裂

縦アーチの上方への牽引力低下

周囲の組織へ負担が増大

踵骨(かかと)の外返し

荷重時(体重をのせたとき)の変形

非荷重時にも回内足や扁平足など形状の破綻

運動機能の低下や関節可動域の低下と拘縮

(参考)池田医院様  Ikeda clinicホームページ「後脛骨筋腱機能不全 posterior tibial tendon dysfunction

後脛骨筋の腱部分がなんらかの原因で器質的変化(もろくなる)を生じて、その結果筋肉の作用が低下する機能障害が発生。
これによって次々と足部形状に破綻していく…というしくみです。

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後脛骨筋腱の痛み

後脛骨筋腱機能不全の原因とリスク要因

後脛骨筋は足根管の内果寄りを通り、急に曲がるので擦れやすい。舟状骨を上方に持ち上げることで内側縦アーチを持ち上げる役割をしている

後脛骨筋腱の器質的変化(もろくなる)ことが後脛骨筋腱機能不全の原因です。

最初に起きるのが

腱の損傷
(縦断裂・部分断裂など)

とくに脆弱(もろく)になった腱は傷つきやすいです。
損傷が反復されることで腱は変性して伸張して修復されます。

そこで問題になってくるのが腱を脆弱にする要因はなにか?ということ。後脛骨筋腱の器質的変化のリスク要因ですね。

リスク要因
○過度な運動・衝撃
○立ち仕事
○外傷
○加齢と妊娠
○肥満
○長期のステロイド治療
○人工透析
○膠原病
○糖尿病
○神経障害
○外脛骨障害
○足根管内の腫瘤

まず後脛骨筋は内側縦アーチを持ち上げる筋肉。足を着いた時点でアーチは広がるので腱には強い張力が加わります。

加えて腱の走行は内果寄りを通るので強く押しつけられることになります。このとき後脛骨筋は遠心性収縮といって、縮もうとするが引き伸ばされる状態

腱には大きな張力がかかって損傷を引き起こしやすいのです。
肥満による体重増加や過度な運動による衝撃、立ち仕事や外反捻挫(足裏を外側へ向けるようなねんざ)は腱損傷の大きなリスクになります。

また、内反捻挫(おもに足首の外側靱帯が損傷するねんざ)でも、脛骨内果(内くるぶし)と踵骨(かかと)に挟まれて、後脛骨筋腱が損傷することもあります。

もうひとつのリスクが腱の脆弱性に関するもの。
糖尿病や膠原病、ステロイドによる長期治療、人工透析は腱を傷めやすいです。
また妊娠や加齢によるホルモンの変化によっても腱の変性が起きやすいといわれています。(中年以降の女性に多い理由のひとつ)

脳疾患や腰椎ヘルニアなど脊椎の神経麻痺では後脛骨筋が利かなくなることで機能不全が起こります。
他には舟状骨にある「外脛骨」(がいけいこつ)後脛骨筋の牽引力を弱めてしまうことも。

足根管のなかに腫瘤があると、摩擦を生じて腱に損傷が生じてしまうことにもなります。

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PTTDになるリスクのある人は予防しておきたい!

足を前後に開いてつま先を内側に向けて後脛骨筋を伸ばす

PTTDのリスクは前述した通り、

後脛骨筋への過剰な負担による要因
腱を脆弱化させる要因

に分けられます。

どちらが決定的な要因といえるものではなく、いろいろな要因が合わさって後脛骨筋腱機能不全になっているといえそうです。

PTTDは進行してしまうと治りにくい性質をもちます。
ということは、なるべく悪化を予防しておきたいですね。

数あるリスク要因のうち、病気に関するものや病気の治療に関するものは予防は難しいことも多いです。
ってことは、後脛骨筋腱の損傷を防ぎたい!ですよね。

腱への過剰な負担を減らすためには、

靴や履き物の見直し
衝撃を収集しやすいもの、ヒールが少し持ち上がるものを選ぶ。
靴底が減ったり、かかと周りがヘタってきた靴は取り換える。

運動環境の見直し
硬い地面や運動頻度など衝撃を必要以上に足に与えないこと。

体重の管理
急激な体重増加を避けて足部アーチへかかる負荷を減らす。

後脛骨筋のケア
後脛骨筋がかたいと常に腱は引っ張られ、骨に押しつけられている状態。日ごろからストレッチをしておく。

足底やふくらはぎのケア
後脛骨筋と共同して衝撃吸収を行う足底屈筋群や腓腹筋、ヒラメ筋を鍛えたり、ほぐしたりしておくことで後脛骨筋腱の負荷を減少させる。

ふくらはぎのケア

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まとめ

○原因は腱のオーバーユースと腱の変性による。
○内側縦アーチへの過剰な負荷を避ける。
○体重管理や靴の見直しも予防のひとつ。
○女性ホルモンの影響で腱の器質的変化を起こすことがある。
○後脛骨筋をほぐすだけでなく、足底やふくらはぎのケアも大切。

後脛骨筋腱機能不全の治療とリハビリ

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