足舟状骨の剥離骨折。

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

足首の内側、内くるぶしの前にある骨。
ちょうど土踏まずの頂点にある部分は「舟状骨」(しゅうじょうこつ)といいます。

この舟状骨には、後脛骨筋(こうけいこつきん)という足部の形状を保つための重要な筋肉(腱)が付着しています。

さらに足首や足の甲をつくる足根骨どうしをつなげる靱帯が豊富にあります。
重要どころだけでも、

三角靱帯
バネ靱帯
背側距舟靱帯(はいそくきょしゅうじんたい)

足部(かかと=つま先)は片足だけで28個の骨で形成されています。
それらがバラバラにならないようにしているのが靱帯。

足部に強い外力が働いた時に、これらの腱や靱帯の付着部にある骨組織が剥がれるのが、剥離骨折。
裂離骨折(れつりこっせつ)ともいわれます。

今回は足の舟状骨剥離骨折について紹介していきます。

足の舟状骨剥離骨折は、後脛骨筋腱による結節部裂離骨折と背側距舟靱帯による背側部裂離骨折

足舟状骨の剥離骨折。

※ご注意!
このページでは「足舟状骨剥離骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

足舟状骨の剥離骨折する場所

舟状骨を後面からみると結節部は内側、背側部は外側寄りに位置する

舟状骨に停止する腱や靱帯は、強固なものが多いので付着部ごと剥がれるようにして損傷する「剥離骨折」(裂離骨折)が多いのが特徴です。

そのほとんどが背側(上部)結節部(内側)で生じています。
多くが強制的にねじるなどの急性外傷によるものですが、オーバーユースによるものもあります。

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背側裂離骨折

足舟状骨の剥離骨折は底屈強制により背側距舟靱帯が骨を牽引して生じる

内反強制(足裏が内側をむく)や底屈強制(つま先をさげる)によって、背側距舟靱帯(はいそくきょしゅうじんたい)の張力によって骨が剥がれるもの。

背側距舟靱帯は、足首の前側にある靱帯でやや内寄り

骨片が大きくなると舟状骨と距骨(きょこつ)との関節面に骨折線が達する(関節内骨折)ので注意が必要です。

※関節内骨折
関節面に骨折線があるもの。関節面のアライメントが崩れ、関節運動に摩擦が生じる。
関節強直(かんせつきょうちょく)や関節変形が生じる恐れがある。
※関節強直
関節構成組織の損傷によって、骨どうしが癒着して関節運動が不能になるもの。

骨片が小さく、転位(骨片のズレ)が少なければ、足関節を背屈して固定することで、骨折部は安定しやすいので、予後は悪くないことが多いです。

結節部裂離骨折

足の舟状骨結節部裂離骨折は、外反強制絵を受けて、後脛骨筋腱の牽引で剥離骨折する

後脛骨筋腱の牽引力によって、結節部(土踏まずの上にある突起)が剥離。

外反強制によって、後脛骨筋腱に張力が働き、付着部の骨組織が損傷します。

※後脛骨筋
足関節を回外(内返し+底屈)させる筋肉。
足舟状骨が倒れないように支えるとともに内側縦アーチを保つ筋肉でもある。
腱部分は内果(内くるぶし)の後方で足根管(そくこんかん)を通る。
(⇒「後脛骨筋」(こうけいこつきん)。立位でバランスをとるための大事な筋肉!)

完全骨折(骨片が舟状骨と汗腺に離断)の場合、荷重しただけ、かかとを下げただけでも骨折端は離開します。

荷重(体重をかける)すると縦アーチは沈み、後脛骨筋腱に付着した骨片は舟状骨と離れる

かかとを下げると、これも後脛骨筋は収縮して、後脛骨筋側の骨片は舟状骨の本体と離れる

受傷機転が三角靱帯の損傷と同じで、痛みの出る場所もかなり近いので、外反強制(回内強制)での外傷は画像診断での鑑別も必要です。

結節部骨折では「外脛骨障害」(有痛性外脛骨)と鑑別する必要があります。
圧痛部位や腫脹だけでは、判断できません。

外脛骨と裂離骨片とを見分けるには画像診断が有効です。
おもに舟状骨本体との辺縁形状を見比べます。

剥離骨折の場合はギザギザになっていたり、鋭利な輪郭になっていたりしますが、外脛骨の場合はなめらかな辺縁。
また健側(痛くない側)と見比べることもあります。

外脛骨か剥離骨折かは、舟状骨と骨片との線が滑らかか鋭利になっているかを確認する必要がある

※外脛骨
過剰骨や副骨といわれる、足の舟状骨結節部の小さな骨。
成長期に骨端線部が骨化せずに残ったり、結節部が分離したりしたもの(足の舟状骨は骨化遅い特徴)だと考えられている。
外脛骨障害はどうしてなる?
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他の部位での裂離骨折は少ない

舟状骨の三角靱帯や底側踵舟靱帯の付着部では剥離骨折は起きにくい

足の舟状骨には、三角靱帯も付着します。
ですが、三角靱帯は、広い範囲に付着部をもっており、剥離骨折する前に靱帯組織が断裂(損傷)することが多いです。
裂離骨折は少ないといえます。

足舟状骨でもうひとつ重要な靱帯が「ばね靱帯」(スプリング靱帯)といわれるもの。
正式には底側踵舟靱帯(ていそくしょうゆうじんたい)といい、縦アーチの形成に深く関わります。

ただし、この靱帯が引き伸ばされるのは前足部が背側方向に強制されたとき。
この場合には、長足底靱帯や足底腱膜など多くの軟部組織も合併損傷することになり重症化して、足部アーチが崩壊します。

足の舟状骨の疲労骨折

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オーバーユースでの裂離骨折

亜急性(オーバーユース)による足の舟状骨裂離骨折では、荷重によって内側縦アーチが沈むことで、後脛骨筋腱停止部が繰り返し牽引されることで裂離する

亜急性(繰り返しの弱い外力でのケガ)でも、後脛骨筋腱付着部が剥離することもありえます。
(オーバーユース⇒「オーバーユース」(使いすぎ)ってよく聞くけど、どんなもの?

亜急性による舟状骨結節部裂離骨折

  1. 繰り返しの荷重=縦アーチが沈む回数が増加
  2. アーチが沈むたびに付着部(結節部)に牽引力
  3. 後脛骨筋腱付着部炎
  4. それでも続けると付着部の骨組織が損傷(骨折)
  5. 後脛骨筋腱機能不全
  6. 内側アーチが崩れる・かかとが倒れる

後脛骨筋腱は、内側縦アーチをもち上げている筋肉です。
この部分が完全に剥離してしまうと、後脛骨筋が効かなくなります。

内側アーチをもち上げていると同時に、足根管の部分で踵骨(かかと)が倒れないように内側を支えています。

踵骨が内側方向に倒れることで起きるのが、回内足扁平足
また、回内足や扁平足によって、足趾の腱の牽引方向が変わってしまうこともあります。
そうなると、外反母趾内反小趾開張足など足部変形の原因にもなりかねません。

後脛骨筋腱機能不全によって、腱の牽引方向が変化することから足部形状の変形が現れる。回内足・偏平足・外反母趾・開張足・外反扁平足

足部の形状の変化は、

  • 易疲労(疲れやすい)
  • 膝関節・股関節痛
  • 外反膝(O脚)
  • 腰痛

これらの症状を引き起こしやすくなります。

加えて、舟状骨が内側方向に倒れがちになることで、舟状骨を通過する「前脛骨筋」の腱がこすれやすくなります。

この摩擦によって「前脛骨筋腱炎」の痛みが生じる原因にもなります。

前脛骨筋腱は第1中足骨基底部に停止し、舟状骨の側面を通過する。舟状骨が内側に倒れると摩擦を生じやすくなる

前脛骨筋腱炎ってどうしてなる?

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治療とリハビリ

転位がなければ、ギプス固定で保存的に治療します。
ただし、結節部の剥離骨折の場合、荷重したときにアーチが沈まないように固定する必要があります。
(アーチの低下によって、骨折端が離開するため)

また、骨片が大きい場合、関節面(多くが距骨関節面)に骨折線が及ぶので、観血療法も含めて検討されます。

固定期間は6週間以上になることが多いです。
(不全の場合は短縮される)

足の舟状骨は血流が届きにくいので骨癒合がほかの骨よりも遅くなりやすいのです。

実は手の舟状骨も特徴的な血管分布になるので、「偽関節」(ぎかんせつ)になりやすい特徴があるんです。

舟状骨の裂離骨折、とくに結節部の骨折はきちんと骨癒合を得られないと、後遺症として「後脛骨筋腱機能不全」(PTTD)になりやすいです。

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必ず専門医の指示に従って治療しましょう。

リハビリにおいては、固定期間中、足関節(足首)は固定されているため動かすことはできません。

ただし、足指を動かすのは、背側骨折、結節部ともに問題ないはず。
むしろ、足指の底屈運動は縦アーチを増強させる方向に力が働きます。積極的に行いましょう。

※必ず、医師や理学療法士の監督のもと行う。

固定が外れてからは、骨癒合に応じて可動域訓練を行います。

ボールを足裏で転がす訓練。ボールコロコロ。足裏でボールを転がす。

片足立ちのバランストレーニングなど。バランスディスクとバランスボード。不安定な足場でバランスを保つ。

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足舟状骨裂離骨折まとめ

  1. 背側裂離骨折は背側距舟靱帯の牽引による
  2. 結節部裂離骨折は後脛骨筋腱の牽引による
  3. オーバーユースで後脛骨筋腱の裂離骨折もある
  4. 結節部骨折は骨癒合を得られないと後脛骨筋腱機能不全に陥りやすい
  5. 固定期間は6週以上と長め。

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