「POLICE 処置」(ポリス処置)はケガ急性期の管理方法。

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

昔から、ケガの処置というと「RICE」(ライス)が利用されてきました。

安静━Rest
冷却━Icing
圧迫━Compression
挙上━Elevation

ですが、これに加えて「P」(保護━Protection)が入ります。

これで、PRICE(プライス)

保護(Protection)が入る前には、RICE+Sといわれていました。
(SはSupport支持もしくはStabilization安定・固定

もうひとつ主流になりつつあるのが「POLICE」(ポリス)です。
安静の「R」に変わって、「OL」が入ります。
「適切な負荷をかけて早期回復を目指そう」という考えです。

ただし、安易にケガした患部に負荷をかけるのは危険そのもの。
健康や医療の情報はどんどん更新されていきますが、正しい理解がなければ逆効果になる可能性もあります。

POLICE処置の概要」から、私が考える「POLICEとPRICEの使い分け」について紹介していきます。

POLICE処置はP保護、OL適切な負荷、I冷却、C圧迫、E挙上の頭文字をとったもの。 PRICEのR安静がOLに変化したもの

「POLICE 処置」(ポリス処置)はケガ急性期の管理方法

※ご注意!
このページでは「POLICE処置」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

POLICE処置はケガ急性期の管理に使う!

受傷直後はPRICE処置、損傷程度を見極めてからPOLICE処置

まずは、POLICE処置について。
PRICE(プライス)の「R」(安静)に変わって、「OL」(適切な負荷)なっています。

ただし、受傷直後適切な負荷」が必要かということには、諸説あり、意見が分かれることがあります。

私は、受傷の直後(ケガしてすぐの時期)に限っては、負荷をかけるよりも「安静・固定」(=Rest)する必要がある(PRICE処置)と考えています。

PRICE処置
Protection保護 Rest安静 Icing冷却 Compression圧迫 Elevation挙上
ケガの応急処置で頭に入れておきたい5つのこと
詳しくは⇒ケガしたときの応急手当てRICE(ライス)処置とPRICE処置(プライス)。

理由は、

受傷直後では、損傷範囲が不明なこと。
二次的損傷や新たなケガを防ぐ。

受傷した現場では、ケガに驚いてしまったり、興奮状態でいたりするために、痛みを感じにくい面があります。

さらに受傷直後から徐々に炎症が生じてくるので、直後には炎症の痛みが少ない可能性もあるのです。

骨折や脱臼、神経・血管損傷が隠されている場合があるので、二次損傷や合併症を誘発してしまう恐れがある!

というのが、受傷直後には「PRICE」(プライス処置)を勧める理由です。

ただし!
POLICE処置は、漫然とPRICE処置を継続するよりも、確実に早期回復を促す効果もあるので覚えておきたいですね。

保護 Protection

患部を固定して保護するのが、Protection

患部を動かさないようにする「固定」
外部の刺激から患部を「防御」

これらを含めて、「保護」と考えましょう。

「Rest」(安静)がなくなったというよりも、この「Protection」の中に統合されたと考えることができます。

適切な負荷 Optimal Loading

患部の保護を行いながら適切に負荷をかけて運動させることで、癒着・拘縮萎縮を予防して、血流促進。組織の回復を早める効果がある。

組織が損傷された直後から、周囲の血管透過性が亢進します。
患部周囲の損傷組織を除去するために現れるのが、「腫脹」(腫れ)

損傷組織が除去されるとすぐに組織の「再生」が始まります。

適切な負荷「Optimal Loading」が必要なのはこの場面!

「適切な」(最適な)ってところがポイント。

負荷が大きすぎると、固定をしていても損傷が拡大し、また腫脹が生じて逆戻りしたり、そもそも再生できなくなったり。

「適切な負荷」をかけることで、血流を良くして再生を促進させたり、組織どうしの癒着を防いだりすることが期待できるのです。

結果、ケガをした部位だけではなく、周囲の組織の機能回復も促され、日常生活やスポーツ活動への復帰も早くなります。

要するに、

多少の負荷をかけることで、「組織の癒着(固まる)・萎縮(細くなる)ことを防ぎ、血行を促進させる」のが目的。
早期回復と復帰を実現させるものです。

さらに関節でのケガの場合。

関節面にある「関節軟骨」は、周囲にある関節液に栄養を頼っています。
関節軟骨には血管がない、または乏しいため、関節に外力(体重など)が加わることで関節液が深くまで染み込むしくみ。

関節を動かさないことで関節軟骨に栄養が届きにくくなり、関節軟骨の劣化(もろくなる)を早めることにもつながるのです。

関節液の働き!

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冷却 Icing

ビニール袋に氷を入れて受傷部位を冷やす。細胞の活性を抑えて、壊死部分を減らすねらいがある

急性期の患部は、熱をもって腫れます。
組織が損傷すると周囲の血管から、異物を除去するために白血球などが滲出(しんしゅつ)するのが大きな原因です。
血管透過性(けっかんとうかせい)の亢進(こうしん)といいます。

この場合の「異物」とは、損傷した組織のこと。
再生するためには壊れた組織を一度整理する必要があるためです。

加えて損傷した組織の血管からも出血します。
組織の細胞液もあふれ出ます。
これらが「腫脹」(腫れ)の原因。

通常、細胞の活動には酸素が必要。
この酸素は血管によって運ばれたものを組織液を介して融通し合っています。

組織の損傷によって腫脹が生じると、無傷な細胞にも酸素欠乏が起きて、壊死してしまうのです。
壊死した細胞はまた取り除かれなければ再生できません……。

このようにして「腫脹」の範囲がどんどん広がってしまうのです。
ただし、このときに「冷却」(アイシング)を行うと、

細胞の活動が低下

必要酸素量が減少

壊死する細胞が減少

腫脹が抑えられる

再生が速くなる

「冷却しない」という考え方もありますが、上記の理由から受傷直後の急性期には、アイシングをおすすめしています。

受傷とは別の要因で壊死する細胞を減少させられるので、より早く治癒過程に移行できるので、回復期間を短くできるはずです。

ただし、アイシングを長期にわたって継続しすぎると、今度は細胞の代謝が進みにくくなります。
その結果、損傷組織の再生が遅れてしまうこともあるので注意が必要です。

アイシングの効果とやり方。

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アイシングについては諸説あり、冷却することでマクロファージ(損傷組織を除去してくれる)の到着が遅れる可能性も示唆されています。
今後もアイシングの効果については、さまざまな発表がなされると思われます。
私自身もそれらの研究や発表に注目していきたいと思います。
参考;ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構note「軽微な筋線維の壊死を伴う筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素表現型マクロファージの侵入を制限し、筋再生を促進する」

圧迫 Compression

患部を圧迫することで過剰な腫脹を予防し、安心感を得られる。Compression。

損傷した組織の内出血や腫脹を制限するために患部を圧迫すること。

損傷した部位の断端どうしを密着させる効果も併せています。

時間の経過とともに出血や腫脹が増加することで、圧迫がきつくなることがあるので、経過に注意する必要があります。

また強く締めすぎると血液循環障害や神経麻痺を合併させてしまうことがあるのでこちらにも注意しましょう。

挙上 Elevation

患部を台にのせて、できれば心臓よりも上にあげる。過剰な腫れを抑える効果がある。

患部を挙上させる目的も、過剰な腫脹を抑えること。
おもな痛みのひとつ、「拍動痛」(はくどうつう)は過剰な腫れを抑えることで減少できます。

また、患部より末端部分は浮腫(むくみ)を起こしやすくなるので、「挙上」することで予防する意味も含まれています。

「挙上」というと上から吊り上げたくなりますが、自分が横になることで結果的に「挙上」できることが多いです。

休む姿勢も工夫してみましょう。

ケガ現場ではPRICE処置で対処する!

受傷現場ではPRICEを優先、医療機関に受診してからPOLICEに切り替える

使用する処置のイメージとしては、

受傷直後~医療機関まで・・・PRICE処置
医療機関受診~急性期終わり・・・POLICE処置(PEACE&LOVE処置)

このように使い分けられると良いでしょう。

※急性期(きゅうせいき)。
受傷直後から72時間(3日間)ごろまで続く、「炎症」が強い時期。
熱感や腫脹、疼痛が増加する時期。

応急処置は受傷現場で患部へ施す処置。
ケガの直後は、組織損傷の程度も分かりにくいものです。

とくに受傷後24時間前後までは、応急処置が重要な時間帯。
現場では、保護(Protection)・安静(Rest)・冷却(Icing)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)を心がけましょう。

PRICE処置とは?

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PEACE&LOVE処置
「炎症」は身体の適切な反応で、無理に止める必要はないという考え方から考案された、軟部組織損傷急性期における処置方法。
P(Protection保護)E(Elevation挙上)A(Anvoid Anti-inflammatory-drug抗炎症薬を避ける)C(Compression圧迫)E(Education教育)
L(Lord負荷)O(Optimism楽観思考)V(Vascularization血流増加)E(Exercise運動)
それぞれの頭文字をとってPEACE&LOVE処置と呼ばれています。
参考サイト;ランニングクリニック ブレーズ・デュボワ氏ブログ「軟部組織損傷の回復を早める方法」
British Journal of Sports Medicine「Soft tissue injuries simply need PEACE & LOVE」

OL(適切な負荷)は病院で診断を受けてから!

患部を保護したうえで、適切な負荷をかけることで組織の再生を促進して、損傷部位以外の筋力・可動域の低下を予防することで日常生活への復帰を早めるのがPOLICE処置

「POLICE」OL(Optimal Loading)は、適切な負荷という意味。

多少の負荷をかけることで、血行・代謝を促進させて組織の再生を促進させる目的で行われます。

もうひとつは、損傷した場所以外の癒着・拘縮・萎縮を防ぎ、日常生活やスポーツへの復帰を早める効果も期待できます。

ただし、損傷部位は普段よりも弱くなっている状態のはず。
組織の保護・固定を行いながらでないと組織損傷が拡大してしまう恐れがあります。

「適切な」(最適な)という部分にも注目。
負荷が大きすぎるのも問題が生じます。

とくに患部以外を動かしているつもりでも、損傷した部分に大きな負荷をかけてしまうこともあります。
(合併症と後遺症を誘発してしまう恐れ)

必ず医師に適切な鑑別診断を受け、専門家の指導のもとに行いましょう。

早期に最適な回復を目指すアスリートにはPOLICEは有効な手段です。
しかし、意識消失、ショック、頭・頸・背部の外傷や大量出血、脱臼・骨折が疑われる著明な変形など、重症な傷害の場合はすぐに病院にかかり、むやみに動かさないようにしましょう。そして、医師の指示に従うようにしましょう。

亀田メディカルセンター亀田総合病院 『スポーツ医学科怪我後の早期管理について 〜RICEからPOLICEへ〜』より引用

まとめ

  1. 受傷現場から医療機関までは「PRICE」処置
  2. 鑑別診断を受けて専門的指導のもと「POLICE」処置
  3. PEACE&LOVE処置も回復期に効果的
  4. 「安静」をどこまで行うかは、医師と相談する。

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