足外側の骨「立方骨疲労骨折」はどういうケガ?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

足部外側(小指側)にある立方骨(りっぽうこつ)
「足の甲」に当たる部分ですが、ほとんど可動性はありません。

動かないことで「ケガしにくい」面もあるのですが、可動性が全くないと衝撃や圧迫力を他に逃がせないデメリットもあるんです。

あまり知られていなくて、非常に稀(まれ)なので、なかなか見られないといわれています。

ですが、負傷の原因を考えると、身近に起こってもおかしくないものばかり。
(ランニングや部活などのスポーツ障害)

今回の記事では「立方骨疲労骨折」について紹介していきましょう。

立方骨疲労骨折は周囲が平面関節で荷重や踏み返しによって腱やコネから圧迫力を受けるために生じる

 

足外側の骨「立方骨疲労骨折」はどういうケガ?

※ご注意!
このページでは「立方骨疲労骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

立方骨は圧迫を受けやすい!

立方骨は外側縦アーチを構成する骨のひとつ。 荷重を受けることで沈み込み圧迫を受ける

立方骨(りっぽうこつ)は足の甲にある骨のひとつ。
ヒトの足には、直立二足歩行するための秘けつがたくさんあります。

そのうちのひとつが「足部のアーチ」。
3つのアーチは、二足歩行の接地面である足を支える緩衝材(かんしょうざい)。

立方骨はアーチを形成する骨でもあるのです。

立方骨の場所

立方骨は踵骨(しょうこつ:かかと)の骨、第4、第5中足骨基部、外側楔状骨と隣り合っています。

隣接する骨の数は多いのですが、ほとんど可動性のない「平面関節」です。

※平面関節
骨どうしが平面で隣接して、靱帯・腱で強く接合されているのでほとんど動きがない。

ただし、「ほとんど動きがない」といっても、立方骨は外側縦アーチを形成する骨のひとつ。

荷重(体重がかかる)されることで、アーチは沈みます。
ということは多少は「可動性がある!」ってことになりますね。

ストレスの逃げ場がない!

長腓骨筋腱は足底を通って母趾中足骨へ付着。縦・横アーチの維持のほか足首を底屈・外返しに働く

立方骨は周囲を平面関節で囲まれるので、圧迫や衝撃を逃がしにくいのが特徴です。

  • 立位時の外側アーチの沈み込み
  • 踏み返し(歩行・ランニングでの蹴りだし)
  • 着地やターン時の衝撃

これらのストレスを常に受けているのが立方骨です。
さらに、もうひとつ大きなストレスになるのが、

長腓骨筋腱(ちょうひこつきんけん)

長腓骨筋腱は外くるぶし(外果)から立方骨を滑車のようにして、足底(足ウラ)方面に向かいます。

この時に立方骨にある「長腓骨筋腱溝」(ちょうひこつきんけんこう)を通りますが、このときの圧迫力も大きいのです。

踏み返し(蹴りだし)のときには、立方骨に荷重が強くかかっていることに加えて、長腓骨筋も使われます。
長腓骨筋は足首を底屈する作用もあるので)

立方骨周囲には外側支持の靱帯や腱が多い

長腓骨筋に力が入ると立方骨は内側に押しつけられるのと同時に、踏み返しは母趾側(親指側)で行われるので内側からも押し返されるんです。

 

これによって、骨組織が損傷するのが「立方骨疲労骨折」。
稀な骨折ですが、「立方骨症候群」と発生機序(原因)が同じなのです。

立方骨症候群がひどくなったものが「立方骨疲労骨折」ともいえるかもしれません。

※立方骨症候群
立方骨が周囲の骨に圧迫されておきる痛み。
足部外側の外くる部の前側周囲が全体的に痛みがでる。
関連記事;立方骨症候群とは?⇒足の外側(小指側)が痛い!「立方骨症候群」とは?

立方骨骨折になりやすい人

立方骨への負荷はランニングの蹴りだしのときがいちばん強い

疲労骨折なので、原因は「オーバーユース」。
(⇒オーバーユースとは?

なので、なりやすい人は、

ランニングの多いスポーツ選手!

とくに10代では、骨がまだ完成されておらず、柔らかくしなりやすかったり、まだ硬化していない軟骨の状態だったりします。

それに加えて、身体が急激に大きくなることで体重も増加
部活動やスポーツクラブのチームでは練習量が多くなる世代です。

骨にミネラル分が沈着して硬くなる時期には個人差があります。
学校競技などで画一的な練習メニューが多くなりがち。
下級生は痛みが出ていても言い出せない人もいるものです。

10代の人だと「骨端症」を思い浮かべやすいですが、それ以外にもスポーツ障害は多くみられます。

その他にもジャンプが多いスポーツでも踏切りや着地のときに、長腓骨筋腱や外側アーチの沈みによって立方骨へ圧迫力が働きます。

診断と治療

立方骨症候群では画像に異常はみられないことが多いです。
立方骨疲労骨折では画像診断が中心になります。

荷重時(体重がかかったとき)に足の外側に痛みが出る場合には、これらの障害も念頭においておきましょう。

立方骨は周囲を平面関節で囲まれるため、固定しやすいので予後は良好なことが多いです。

診断・鑑別

立方骨骨折の症状
立方骨周囲の腫れ・痛み
荷重時の痛み
運動時の痛み
内出血が出ることは少ない

立方骨骨折では、単純X線では異常が見られないことが多いです。
時間が経過してから仮骨(新しくできる骨)が写ることもあります。

MRIや骨シンチグラフィでは、立方骨に輝度変化がみられます。
それ以外では立方骨症候群と完全に鑑別できないことが多いです。

鑑別が必要な他の疾患

立方骨周囲の痛みには多くの種類があるので鑑別が必要

ジョーンズ骨折
第5中足骨骨幹部の基部よりの疲労骨折。
行軍骨折ともいわれる。
「ジョーンズ骨折」足の甲外側の疲労骨折。予後にも注意が必要

イセリン病(イズリン病)
短腓骨筋腱付着部の骨端症。
腱の引っ張りによって骨端軟骨が障害される。
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短腓骨筋付着部炎(たんひこつきんふちゃくぶえん)
イセリン病と同じ機序によって付着部で炎症が起きる。
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長腓骨筋腱腱鞘炎(ちょうひこつきんけんけんしょうえん)
長腓骨筋腱と立方骨の間でおきる摩擦によって生じる痛み。
腱の中にある「副骨」(ふくこつ)による障害の場合もある。

下駄骨折(ゲタばき骨折)
第5中足骨基部骨折で、足首を内反(足裏を内側に向ける動き)させることで短腓骨筋腱の引っ張りによって骨折する。
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治療

立方骨疲労骨折では、足首を底屈させないのと長腓骨筋腱を使わないようにするため直角で固定する。シーネでかかと荷重歩行するとよい

最初は運動時にのみ痛みがでていますが、進行してくると体重を乗せただけでも疼痛が生じます。

熱感や腫脹(腫れ)があればアイシング(冷却)が必要。
体重をかけただけでも痛い場合は、一時的に松葉づえで免荷(めんか)します。

もちろん運動は中止
固定は足首(足関節)を90度で固定します。

足首を直角に固定する理由は、足首を底屈(つま先を下げる動き)をさせないため。

かかと歩きで荷重を避ける!

かかとで歩くようにすることで、患部に荷重がかからないだけでなく、踏み返し(けりだし)もなく、縦アーチの沈み込みをおさえることができるのです。

運動を中止するのは4週間ほど。
それ以降は痛みの状態をみながら徐々に運動を再開させます。

それと同時に、

  • 練習量
  • フォーム
  • 道具
  • 練習環境

を見直して再発の防止を考えておくのも治療のひとつと考えましょう。

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まとめ

  • 立方骨はほとんど可動しない
  • 踏み返し・アーチ・長腓骨筋腱による圧迫
  • レントゲンでは写らないことが多い
  • 確定診断はMRIまたは骨シンチ
  • 近くに発生する別疾患との鑑別は必要
  • 運動は中止
  • 足首90度で固定する。
  • かかと歩きで荷重を避ける
  • 練習量や環境の見直し
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