「回内足」(かいないそく)と「過回内」(オーバープロネーション)

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

自分の足をちゃんとみたことがありますか?
気づかないうちに足部の形が変わっていたり、靴が合わなくなって靴擦れを起こしたり。

とくに、かかとが傾いて、土踏まずがつぶれてくる足。

回内足(かいないそく)

には要注意。

ひどくなると、足周りのいろんな痛みに発展したり、膝や股関節、腰部にまで影響を与えてしまうことがあります。

今回は「回内足」はどんな状態なのか、どんな障害に気を付けたらいいのかを紹介していきましょう。

回内足は扁平足や外反母趾の原因にもなる

「回内足」(かいないそく)と「過回内」(オーバープロネーション)

※ご注意!
このページでは「回内足」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

回内足と回外足

回内足と回外足は後方から踵骨がどちらに倒れているかをみる

回内(かいない)や回外(かいがい)とは、あんまり聞きなれない言葉ですよね。

もとは身体の動きを表す言葉です。

回内…足底(足裏)が外側を向く動き
回外…足底(足裏)が内側を向く動き

もともと私たちヒトが二足歩行で足を着いて歩いていると、回内や回外という動きを知らずに行っています。

足部の回内回外運動

「回内」するときには内側の縦アーチを利用して「衝撃吸収」&「推進力」を向上させます。
「回外」では片足でバランスをとるための「安定機構」として利用されています。

回旋(かいせん)運動
ひとつの関節のみで末梢側の骨長軸を軸にして行われる運動。
いわゆる「ねじる」ような動き。

回内回外運動
二つ以上の関節が関わって行われる「ねじれ」る動き。
とくに足部では「踵骨の回内」や「踵骨の回外」という表現がされることがあります。

体重の移動
かかと

回外しながら前方へ

回内して母趾(親指)側へ

回内足・回外足ってどんな足?

後方からみた回内足回外足。

いちばん簡単な見方は、「かかとの傾き」をみる方法です。
立位や臥位(寝る姿勢)でもかかとの傾きは変わります。

回内足や回外足は、おもに立位状態で後方から踵骨(かかと)の傾きをみます。
また、フットプリント(足底にインクをつけて立つ検査)で足底への荷重をみることもあります。

日本人の多くが「回内足」になりがちといわれますが、実際にはどちらも多くいる印象が強いです。

回内足

回内足は踵骨が内側に倒れている状態

足部が回内(足底が外向き)している足。
重心が踵骨の正中心より内側に移動してしまい、踵骨上部が内側に倒れている状態。

「プロネーション」(pronation)

ともいわれます。
靴の底は、内側を擦るような感じで減っていき、靴のアッパー部分(上部)が変形してしまうことも多いです。

後方からみると足指の小指側がよく見えます。

多くの「回内足」では、距腿関節(きょたいかんせつ:距骨と脛骨、腓骨の関節)は正常に位置しています。
距骨下関節(きょこつかかんせつ:距骨と踵骨の関節)が「く」の字になって踵骨が傾いていることが多いです。

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回外足

回外足は後方からみると母趾が見える

足部が回外(足底が内側へ向く)している足。
重心線が踵骨の正中心よりも外側にあるので、踵骨上部が外側に倒れている状態。

「スピネーション」(spination)

「サピネーション」ともいわれます。

ともいわれます。
足の外側ばかりを使って歩くので、足底のかかと外側から小指側にかけてが減っていきます。

後方からみると足の母趾(親指)がみえます。

ちなみに回内でも回外でもない、正常の位置関係にある足部は

ニュートラルプロネーション

ともいわれます。

「回外足」についてはこちらの記事もご参考にしてみてくださいね。⇒「回外足」(かいがいそく)の治し方は?原因と予防も考えよう!

「過回内」と「過回外」

・・・とはいうものの、多少の「回内足」や「回外足」だけではそれほど大きな問題にはなりません(※)。

立位で荷重されると、内側縦アーチが沈み込むので回内足にみえる!

問題は過剰な回内と回外。

過回内と過回外。でやすい疾患

過回内は「オーバープロネーション」
足部が回内して土踏まず(内側縦アーチ)が減少または消失している状態。

過回外は「オーバースピネーション」または「アンダープロネーション」
距骨下関節(きょこつかかんせつ)が過度に回外してしまうものです。
過回内とは反対に「ハイアーチ」になりやすい傾向にあります。

ハイアーチとは?⇒足の甲が高いと問題?「ハイアーチ」凹足変形によるリスクと対策

過回内(オーバープロネーション)、過回外(オーバースピネーション)ともに、「横足アーチ」が減少します。

 

過回内・過回外ともに本来、必要な足部の形状が失われた状態になるので、さまざまな痛みのもとになる障害や疾患の原因になります。

この記事では「オーバープロネーション」についてみていきましょう。

オーバープロネーションの原因はいろいろ。

考えられる原因

歩き方・立ち方のクセ
繰り返し運動での負荷・衝撃
関節のゆるみ(ねんざや生まれつき)
後脛骨筋機能不全
病気

オーバープロネーションの原因はいろいろあり、どれが原因かを絞るのが難しいことが多いです。
いろいろな原因が複合的に絡んだ結果が過剰な回内足になると考えられます。

オーバープロネーションになる要因
後脛骨筋の筋力低下
前脛骨筋の筋力低下
足底屈筋群の筋力低下
内側靭帯(足首)のゆるみ
腓骨筋の過緊張

内側縦アーチ(内側縦足弓)の減少

踵骨が回内することによって、内側縦アーチが減少する

踵骨(かかと)が回内する原因で多いのが、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)や後脛骨筋(こうけいこつきん)の萎縮(いしゅく)によって、内側縦アーチが支えられなくなるものです。

足部の縦アーチの役割とは?⇒足の縦アーチ(土踏まず)の役割。崩れると身体全体にも大きな影響!

また、足底筋膜や足底にある屈筋群が弱くなったり、伸びてしまうことでも足部の縦アーチが維持できなくなるので、回内足になりやすいです。

腰部疾患(腰椎椎間板ヘルニアや腰椎すべり症など)による神経症状で筋肉に力が入りにくくなった結果、足部が過回内してしまうこともあります。

なかでも、後脛骨筋腱機能不全(PTTD)といって後脛骨筋の腱が延びきったり、断裂してしまうものはオーバープロネーションの原因になります。

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靭帯のゆるみ・関節の変形

足首周りの靭帯が緩むと踵骨が回内しやすい

エーラス・ダンロス症候群や大きな靭帯損傷、加齢による変性による靭帯のゆるみ(靭帯の延長治癒も含めて)によっても、足部が回内しやすくなります。

また、糖尿病などの結合組織がもろくなる病気が遠因にあることも考えられます。

後脛骨筋のテーピングは回内足にも有効。

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腓骨筋の過緊張

短腓骨筋と長腓骨筋は足関節の回内作用をもつ

足根洞症候群(そくこんどうしょうこうぐん)では、短腓骨筋・長腓骨筋が強く緊張することで、結果的に足部が回内します。

足根洞症候群について⇒足根洞症候群。ケガをした後、足首の奥に継続した痛みや痺れ。

腓骨筋はこんな筋肉⇒足部の形状維持に重要な筋肉、長腓骨筋・短腓骨筋・第3腓骨筋の機能

有痛性疾患を起こしやすい。

足部のアーチが使えない。
衝撃吸収力低下
疲労しやすい
怪我しやすい(バランス能力低下)
運動パフォーマンスの低下
膝や股関節障害の原因にも

オーバープロネーション(過回内足)では、横足アーチ、縦足アーチがともに消失していることが多いので、さまざまな足部の傷害が発生しやすいです。

また、足部のアーチの役割(衝撃吸収・バランス・推進力)を他の部分が担うことになるので、膝関節や股関節、腰部への負担が増大することによって、痛みや障害が発生することにもなります。

発症しやすい足部の疾患・障害
開張足
扁平足
外反母趾
モートン病
強剛母趾
立方骨症候群

ハンマートゥ
長母指屈筋腱炎・腱鞘炎
巻き爪(陥入爪)
胼胝(たこ)・鶏眼(ウオノメ)
発症しやすい膝関節の疾患・障害
X脚変性
鵞足炎(がそくえん:ひざ下の内側部分の炎症)
ランナー膝(ひざ上外側の炎症)
変形性関節症
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予防と対策

回内足の予防や対策

予防や対策についてはとにかく、

かかとの回内を防ぐこと!

機能訓練として回内足を防ぐ筋肉を鍛えたり、いろいろなツールを利用して対策しましょう。

筋肉で対策。

縦アーチを維持する筋肉

踵骨(かかと)の骨が倒れていくのを防いでくれるのが、

前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
後脛骨筋(こうけいこつきん)
足底屈筋群(そくていくっきんぐん)

内側縦アーチを形成するための筋肉です。
これらの筋肉を鍛えておくことで、踵骨の回内を予防しましょう。

注意!足底の筋肉を鍛えるトレーニングをするときには必ず踵骨(かかと)が「中間位」(まっすぐ)の姿勢で行いましょう。回内位のまま足底の筋肉を収縮させると外反母趾などを悪化させてしまう恐れがあるためです。

後脛骨筋のストレッチについて

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足周りの筋肉をケア!

下腿三頭筋

過剰な回内足では下腿三頭筋(ヒラメ筋・腓腹筋)が疲れやすくなります。
また、短腓骨筋・長腓骨筋の緊張は、距骨下関節を外反させる作用があるので、ストレッチでケアしておきましょう。

前脛骨筋や後脛骨筋、足裏の筋肉も疲労が蓄積して硬くなると損傷を起こしやすくなります。
積極的にケアしておきたいですね。

距骨下関節の傾きを正常に保つには、腓骨筋群(短腓骨筋・長腓骨筋)と後脛骨筋・前脛骨筋のバランスが大切です。
必ず両方をケアしておきましょう。

前脛骨筋を鍛える!⇒前脛骨筋のストレッチとトレーニング。大事な筋肉のケアをしましょう。

ツールを利用する!

回内足用のインソール

オーバープロネーションを矯正する装具類で、悪化することを防ぐ目的で使用します。
正常な足に使うと他の部分を傷めてしまう可能性があるので、利用するときは慎重に行いましょう。

インソール
足底の内側を高くするようなインソールで矯正する方法。
土踏まずを補強するような形状を選ぶ。
ヒールカップ
かかと(踵骨:しょうこつ)が内側へ倒れないようにかかとを覆うもの。
テーピング
かかと部分が倒れないように固めることで回内を防ぎます。
サポーター
距骨下関節を正常に保つようなものがいいでしょう。
オーバープロネーション対策シューズ
必ず試し履きをして、自分の足に合ったものを選びましょう。
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「回内足」まとめ

後方からみた回内足(オーバープロネーション)の足部

  1. 足裏が外側を向く方向が「回内」
  2. 立位で荷重すると正常でも少し回内する
  3. 過剰な回内足を「オーバープロネーション」という。
  4. 距骨下関節が外反する。
  5. ミクリッツ線(体重がのる線)が踵骨正中より内側を通る
  6. 後脛骨機能不全も原因のひとつ
  7. 悪化させないためには踵骨の回内を防ぐ。
  8. 衝撃吸収力の低下が生じる
  9. 足部だけでなく身体全体の有痛性疾患のもとにもなりうる

回内足によって、足底への内側荷重が続くと「舟状骨疲労骨折」のリスクがあります。

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