「外反母趾」(がいはんぼし)とは?痛み始めの対策が大切。

こんにちは。ほんだ整骨院、山内です。

足の親指、つけ根の痛みで悩んでいる方が多いです。
足の親指のつけ根に痛みが出る疾患は数多くありますが、その中でもよく見かけるのが、

外反母趾
(がいはんぼし)

による痛み。

なかには、かなり変形してしまっている人もいます。
ひと昔前は、圧倒的に女性の方が多かった疾患ですが、男性でも発生することが増えています。

今回の記事では、足の親指の変形「外反母趾」について解説していきます。

「外反母趾」(がいはんぼし)とは?痛み始めの対策が大切。

外反母趾とは

※ご注意!
このページでは「外反母趾」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
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外反母趾はどんな状態?

外反母趾の状態

母趾(ぼし)は足の親指のこと。
「外反」は小指側に反ってしまう状態。

つまり、足の親指が小指側に反ってしまう状態をいいます。
ただ、多くの場合、母趾のつけ根の骨である基節骨(きせつこつ)だけの問題ではなく、「第1中足骨」(だいいちちゅうそくこつ)の内反を伴うことが多いです。

第1基節骨・・・外反(小指側を向く)
第1中足骨・・・内反(内側へ向く)

足の親指のつけ根の関節は、「中足趾節関節」(ちゅうそくしせつかんせつ)といいます。
長いので「MTP関節」MP関節とも)といわれることが多いですね。

ほとんどの症例で偏平足(へんぺいそく)開張足(かいちょうそく)を伴っています。

偏平足…内側縦アーチの減少
開張足…横足アーチの減少・消失

外反母趾になると、初期のうちは立位時・歩行時に痛みが出る程度ですが、進行すると亜脱臼(あだっきゅう)してとなりの指に乗っかってしまうこともあります。

また小趾(小指)が母趾側に偏位する「内反小趾」(ないはんしょうし)を同時に起こしている人も少なくありません。

「外反母趾」の角度で決まる重症度

外反母趾の変形の角度を測る

母趾が「く」の字に曲がるのが外反母趾ですが、問題なのがその角度。

母趾基節骨の長軸ー第1中足骨の長軸の角度を

外反母趾角(HV角)

といわれています。
この角度が、

20°まで・・・正常
20~30°・・・軽度
30~40°・・・中等度
40°以上・・・重度

この重症度というのは、変形の度合いです。
実際には、母趾の曲がり具合と痛みは比例しないことが多いです。

内側に出っ張る「バニオン」

 

外反母趾でできるバニオン(ブニオン)は滑液包炎

外反母趾の人の第1中足骨頭部の内側が腫れていることがあります。
柔らかくブヨブヨしていますが、中身が固まって硬くなっていることもあります。

関節の周辺にある「滑液包」(かつえきほう)は、筋肉や腱と骨との摩擦を和らげるために存在しています。

外反母趾になると母趾MTP関節の内側にある滑液包が圧迫され摩擦が生じます。
これによって滑液や血漿(けっしょう)成分が溜まったり、滑液包が肥厚したりします。←「バニオン」(ブニオン)といいます。
(小趾(小指側)にできるのは「バニオネット」と呼ばれます)

このバニオンが、靴や反対の足にこすれて、皮膚に胼胝(べんち:タコ)ができたり、発赤をもったりすることも多いです。

中足骨頭も内側に飛び出すのでかなり曲がったように見える人もいます。

バニオンの正体は?⇒「バニオン」(腱膜瘤)足の親指つけ根(MTP関節)のしこり(腫瘤)の正体は?

母趾の背屈強制によって生じる「ターフトゥ

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外反母趾になると現れやすい症状

〇痛み・しびれ・腫れ
〇バニオン
〇荷重時痛・歩行時痛
〇母趾MTP関節の可動域制限
〇偏平足・開張足・浮き指
〇陥入爪(巻き爪)
〇第2中足骨頭部足底側の胼胝(べんち)
〇第1基節骨の亜脱臼

外反母趾では、中足骨が回内(下が外を向くように捻じれる)するので、本来なら中足骨頭の側部(横)にある神経に体重がのってしまうことがあります。
この場合、痺れや強い痛みが生じます。

偏平足や開張足はそれ自体が外反母趾の原因にもなるものですが、外反母趾によって悪化することがあります。

外反母趾では指先の横幅が広がるので、靴下や靴によって、常に爪が圧迫され続けます。これによって爪の変形が起きることも多いです。

また、変形によって足指を動かす腱が正常に作用できなくなるので、母趾の動きが制限されたり、関節自体が拘縮してしまうこともあります。

もうひとつ注意点があります。
痛風発作(つうふうほっさ)強剛母趾(きょうごうぼし)は、外反母趾と同じ場所の痛みです。
また、「種子骨障害」(しゅしこつしょうがい)の痛みも近い場所ですので、混同しないように鑑別する必要があります。

外反母趾になる過程

回内足(オーバープロネーション)=足関節の外反
(足裏が外を向くような方向)

内側縦アーチ(土踏まず)の消失=偏平足

第1中足骨もいっしょに回内かかとが回内して第一中足骨も回内する

深横中足靭帯が損傷して緩む
(しんおうちゅうそくじんたい)

横足アーチ(横足弓)の消失=開張足(かいちょうそく)深横中足靭帯がゆるむと開張足になる

第1中足骨は内反
基節骨は母趾内転筋が緩む作用で外反外反母趾になる理由

第1中足骨・基節骨・種子骨の向きが変わることで筋肉や腱の牽引方向が変化することで外反母趾が悪化する。

どこから始まるのかは説が別れそうですが、多くの外反母趾がこのような過程で「く」の字に変形していくと考えられます。

母趾内転筋(ぼしないてんきん)の斜頭(しゃとう)と横頭(おうとう)が基節骨を外反させる要因になりますが、外反母趾角(HVA)によっては長母指屈筋腱長母指伸筋腱が作用して、さらに変形に加担します。

体重が前足部やつま先にかかるとこれらの筋肉に力が入るために「歩けば歩くほど」進行することもあるのです。

腱の牽引方向が外反母趾を悪化させる

前足部に体重を長時間かけることが多いスポーツ、サッカーやマラソンでなりやすいのはこのためだと考えられます。
(シューズの影響もあり)

踵骨(かかと)の回内は扁平足も引き起こしやすいです⇒扁平足(偏平足)になる要因は?どんな障害がでやすい?
回内足の原因になりやすい後脛骨筋腱機能不全。進行するとどうなる?⇒後脛骨筋腱機能不全が進行することで生じる足の痛みや変形。

どんな原因が考えられる?

外反母趾になりやすい要因

ひと昔前は中高年の女性に多かった外反母趾ですが、近年では若年者にもみられるようになっています。
注意深いのは、男性の外反母趾も多くなってきていること。

というのは、生活様式や生活習慣による原因によるものが増えてきていると考えられます。

身体的要因によるもの

病気や体質、ケガなど外反母趾の原因になる身体的要因があります。

膠原病(こうげんびょう)

膠原病は身体の結合組織(皮膚や靭帯、血管の組織同士をつないでいる組織。コラーゲン)をもろく、弱くしてしまう病気のことです。

結合組織である関節の軟骨、滑膜、靭帯が弱くなっていると、シューズや靴下、ストッキングなどの軽い力によっても変形を引き起こしてしまう恐れがあります。

関節リウマチ

関節リウマチは膠原病のひとつですが、自己免疫によって関節組織を破壊してしまうことがあります。
母趾MTP関節だけでなく、足関節周囲の組織を壊してしまうことで、回内足や偏平足、開張足を誘発して外反母趾の原因をつくることも。

関節がゆるい!

関節がゆるくなる「エーラス・ダンロス症候群」。
また妊娠後期になると靭帯がゆるんできます。
更年期(こうねんき)以降では内分泌系の影響で靭帯や筋肉組織のたんぱく質合成が低下して、関節が緩くなりやすいです。

先天的要因

外反母趾自体が遺伝するわけではありません。
回内扁平足や開張足などの骨格や体型は遺伝することがあるので、「外反母趾になりやすい要因が遺伝しやすい」のかもしれません。

また母趾の長さも遺伝します。
母趾が長い方がなりやすいといわれている)

大きな足部のケガ

足部(足首からつま先までの部分)に大きなケガの既往歴があると足部の形状に変化がでやすくなります。

足指の内側側副靭帯損傷は陳旧性になっていると外反母趾の原因にもなります。(⇒足指の側副靭帯の損傷。足の指をぶつけたときに起きやすい捻挫 

普段の姿勢や歩行

日常の姿勢や歩行姿勢によって、足部の回内方向への荷重が働くと足部の偏平が進むことがあります。

外的要因

外的要因については、気を付けることができるものが多いです。外反母趾になる過程について理解することで、予防や悪化を防ぎましょう。

かかとの高い靴

ハイヒールは前足部に荷重が集中しやすく、開張足、浮き指の原因になりやすいです。

内在筋・外在筋の低下

足部に作用する筋肉の多くは、足部の形状を保つ役割も担っています。
これらの筋力が低下することで、回内足や偏平足、開張足を引き起こすきっかけになります。

また、現代の生活では裸足で歩くことが少なくなりました。靴や靴下を履いて歩行していると、足底の筋肉が使いづらく、筋力低下をまねきます。

予防と悪化させないことが大切

外反母趾の治療は、「痛みを和らげること」「それ以上進行させないこと」が主になります。

基本的には、保存療法(手術しない)が選択されますが、状況に応じて手術も視野に入れて治療が行われます。
(変形していても痛みがなかったり、日常生活に差し支えなければ手術を行わないことがほとんどです)

外反母趾自体は、難治性で一度変形してしまうと元に戻るのは困難なことが多いです。
予防とそれ以上悪化させないことが大切です。

装具療法

外反母趾を悪化させないために必要なことは、回内足にならないようにサポートすることや足のアーチを保持すること。
自家筋力だけでは悪化を防げないこともあります。

装具をうまく使用しながら生活することも考えてみましょう。

サポーター
母趾の外反を防ぐかたちのものと、足部の回内(足底が外を向く)を防ぐものがあります。

インソール・足底挿板
足部の縦アーチ・横アーチをサポートしたり、かかと(踵骨)が倒れない(回内しない)ように支持するものが有効です。

テーピング
母趾を内反方向に引っ張る、アーチをつくるなど状態に応じてテーピングをすることもあります。

外反母趾を矯正するテーピング

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足の形状を保つための運動

すぐに効果が見えるわけではありません。
ですが、足指をあまり使わずに過ごす現代では、気づかぬ間に筋力低下が起きていることも多いです。
どれも手軽にできることなので、地道にやり続けてみましょう。

足でグー・チョキ・パー足指じゃんけん

タオルギャザータオルギャザーは足指・足裏のトレーニング

ビー玉移し足裏の筋肉を使おう!ビー玉移動

ボールコロコロボールコロコロ

ホーマン体操外反母趾の運動。ホーマン体操外反母趾の方向に引っ張っている筋肉をストレッチさせることで、悪化を防ぐ効果がある。

外反母趾の予防には前脛骨筋を鍛えることも大切です⇒前脛骨筋のストレッチとトレーニング。大事な筋肉のケアをしましょう。

後脛骨筋をケアしておくことも大切です。

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他に自宅でできること

足指の間に「趾間パッド」を入れることで筋肉の牽引方向を正しく改善させたり、足底の筋肉や腱膜のケアをしたりすることも、自宅でできる予防方法です。

また靴やストッキング、靴下でつま先を圧迫しないようなものを選ぶ、歩行や運動環境の見直しを行うことで、回内足や偏平足を防げば、外反母趾の予防にもなります。

足裏のケアについて

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外反母趾のまとめ

  1. 中足骨が内反、基節骨が外反
  2. かかとが回内(足裏が内側をむく)することが発端になることが多い。
  3. 母趾内転筋の影響で母趾がねじれる。
  4. 親指のつけ根にできるバニオン(滑液包の腫れ)
  5. 開張足を伴うことが多い。
  6. 難治性

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