足の外側の骨が痛い!「短腓骨筋腱付着部炎」原因と再発予防。

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔(やまうちけんすけ)です。

足の外側に体重をかけたときや歩行時の踏み返し(蹴りだし)のときに足の外側の痛み。
具体的にいうと赤い部分。

短腓骨筋腱付着部炎では、足部外側のかかと寄りにある突起部に痛みが出る

短腓骨筋腱付着部炎
(たんひこつきんけんふちゃくぶえん)

第5中足骨のかかとより部分に停止(くっつく)する腱に負担がかかりすぎて炎症が生じているものです。

足の甲側(背側)だけでなく、側面や底面側に痛みを訴えることもあります。
今回は「短腓骨筋腱付着部炎」の病態と治療について紹介していきます。

短腓骨筋腱付着部炎は繰り返しの牽引による他、内反強制や外側荷重、Okyaku 変形によっても生じる

足の外側の骨が痛い!「短腓骨筋腱付着部炎」原因と再発予防。

※ご注意!
このページでは「短腓骨筋腱付着部炎」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

短腓骨筋腱付着部炎は足部外側の痛み

おもな症状
圧痛(押して痛い)
腫脹(腫れ)
踏み返し時(歩行のけりだし)の痛み
外側荷重での痛み
ターン(切り返し)での痛み

 

短腓骨筋腱は外果や腓骨筋滑車でも摩擦を起こしやすく、付着部炎とともに腓骨筋腱炎ともいわれる

足の外側、かかと寄りにある骨の隆起部(でっぱり)で生じる痛みを生じるのが短腓骨筋腱付着部炎です。
短腓骨筋腱が付着部を引っ張ることで生じるもので、腓骨筋腱や腱鞘部分が炎症を起こす「腓骨筋腱炎」のひとつ。

腱の第5中足骨基部に停止(付着)部での炎症

短腓骨筋は長腓骨筋の下部にあり、腱は腓骨外果のすぐ後ろ、長腓骨筋腱の前方を走行。第5中足骨基部に停止する

短腓骨筋は下腿部のまん中ぐらいから下部に向かってある薄い筋肉です。
筋肉は腓骨の後外側にあり、腱は外くるぶし(腓骨外果)のすぐ後ろを走行します。長腓骨筋腱と腓骨に挟まれやすいのも特徴です。

短腓骨筋腱は外くるぶし(外果)とかかとにある「腓骨筋滑車」(ひこつきんかっしゃ)の突起をつかって前方へ向かうように方向転換します。

短腓骨筋腱はこれらの走行と位置の特徴によって、摩擦が起きやすく、停止部の第5中足骨基部(だいごちゅうそくこつきぶ)にも大きな負荷をかけやすいです。
(第5中足骨基部は足の小指につながるいちばん外側の骨の出っ張り。)

短腓骨筋腱付着部炎になるしくみ

短腓骨筋は下腿部外側にある筋肉、作用は、

足部の外返し(回内)……足裏を外に向ける
足関節(足首)の底屈……つま先を下に向ける

これらの動きのほかに歩行着地時に足裏の体重移動を行って踏み返し(蹴りだし)を行います。
(体重を小趾球から母趾球に移動させる時に使われるー下図の④)

歩行時における荷重の移動↑④の場面で短腓骨筋は使われる

他にも「外側縦アーチ」の維持という大事な役割があります。
縦アーチは衝撃吸収やバランス保持、推進力の補助に使われるので、短腓骨筋は日常でも「大忙し」な筋肉なんです。

筋肉は収縮(ちぢむ)して能力を発揮するので、当然、停止部(遠位側の付着部)には繰り返し引っ張る力が加わり続けます。
この力で腱や骨膜に微小な損傷が起きることで痛みがひき起こされるしくみです。

イズリン病や骨折との鑑別

腱の停止部の骨膜部分では、



非石灰化線維軟骨

石灰化線維軟骨

骨組織

という構造になっていますが、明瞭に分かれているわけではなく混ざり合っています。

腱と骨との付着部分はこの構造によってかなり強力に結合しているんです。
この結合部分で炎症を生じているのが短腓骨筋腱付着部炎ですが、強固に結合しているがゆえに、骨膜や骨組織を損傷(裂離)してしまうこともあります。

イズリン病(イセリン病)
第5中足骨基部で短腓骨筋腱の牽引力によって、骨端軟骨を損傷、部分的に骨壊死を生じる骨端症。
イズリン病(イセリン病)は足の外側の骨端症。類似疾患にも注意!

下駄ばき骨折(下駄骨折)
第5中足骨基部において足部に内反強制(足裏が内側を向く)によって生じる。第5中足骨基部骨折。
直達外力(ちょくせつぶつかって)による骨折と短腓骨筋の牽引力による裂離骨折(剥離骨折)の場合とがある。
軽視はダメ!【下駄骨折】捻挫(ねんざ)に似ている剥離骨折!

ジョーンズ骨折(行軍骨折)
第5中足骨近位骨幹部骨折(だいごちゅうそくこつきんいこっかんぶこっせつ)。
足部の外側荷重で繰り返し、外側アーチが沈み込むことによって生じる疲労骨折(ひろうこっせつ)。
直達外力(なにかがぶつかる)による場合もある。
「ジョーンズ骨折」足の甲外側の疲労骨折。予後にも注意が必要

第5中足骨基部周辺の鑑別。イズリン病は縦。下駄ばき骨折は横。ジョーンズ骨折は骨幹部に骨折線が見える

鑑別で重要なのがレントゲン
短腓骨筋腱付着部炎ではレントゲンで骨に異常はみられません。
下駄ばき骨折やジョーンズ骨折では骨折線や剥離した骨片、イズリン病では骨端線がみられるのが特徴です。

受傷機転(負傷した経緯)だけでは、判断がつきかねることが多いので、必ず整形外科医の診断を受けましょう。

立方骨症候群(りっぽうこつしょうこうぐん)も同じような部位に痛みが生じることがあります。⇒足の外側(小指側)が痛い!「立方骨症候群」(りっぽうこつしょうこうぐん)とは?
立方骨疲労骨折にも要注意!
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短腓骨筋腱付着部炎になる原因

好発要因(短腓骨筋腱付着部炎になりやすい人)
10代の運動選手
陸上選手
ターン(切り返し)を繰り返す体育館スポーツ
慣れない靴
靴底が減りすぎた靴
足部外傷(捻挫や骨折)
関節がルーズ
外側荷重

基本的には短腓骨筋腱の使いすぎと過剰な負荷が原因です。
スポーツ選手の多くがオーバーユースによるものですね。
体育館などの滑りにくい床でのプレーはストップや着地、切り返しで大きな牽引力を付着部に生じさせます。

痛みの原因になるオーバーユースって?⇒「オーバーユース」(使いすぎ)に注意!

もうひとつの要因が靴。
短腓骨筋は着地時に左右のバランスをとるために多く使われます。
なれない靴では腓骨筋(長・短)や後脛骨筋が常時使われることが多くなります。

かといって、かかとの外側が減りすぎた靴では、踵骨(かかとの骨)が内返しすることになり常に短腓骨筋に牽引力が加わり続けることになります。

他の原因としては、内反捻挫によって外側靱帯(前距腓靭帯や踵腓靭帯など)がルーズになることによって、短腓骨筋腱がその役割を代替している場合。

さらにその後の足関節不安定症や距骨下関節症でも短腓骨筋の使用頻度が高くなります。
O脚(内反膝)や変形性膝関節症でも足部の外側荷重になりやすいので注意が必要です。

踵骨の回外が起こりやすい障害
回外足
ハイアーチ
内反捻挫
足関節不安定症
距骨下関節症
O脚(内反膝)

治療とリハビリ、再発予防

短腓骨筋腱付着部炎は予後も良好なことが多く、きちんと治療すれば短期間(とはいっても2週間以上はかかる)でスポーツ復帰も可能です。

ただし使いすぎによるものが多いので再発には充分に注意しなければなりません。

急性期の治療

かかとを持ち上げて短腓骨筋腱の停止部の負担を減少させる治療が行われる↑短腓骨筋腱付着部炎にはヒールパッドで安静にさせる治療が行われる

急性期で腫脹や圧痛が強い場合には、冷却(アイシング)と安静を徹底します。(⇒アイシングのやり方

安静期間は2~4週
短腓骨筋腱への負担を軽減させるために装具を使うのも有効です。

付着部を安静にするための装具
ヒールパッド
インソール
片側ウェッジ
テーピング

ヒールパッド
かかとをもち上げることで短腓骨筋をゆるめます。
踵骨の内返しを防ぐために固めのものがおすすめ。
同時に側方動揺を防げるカップタイプのものもあります。

インソール
足部の縦アーチを保護するようなものがいいでしょう。
ハイアーチ気味の人は外側アーチへの負担が増えるので沈み込みを抑えられるものを選びましょう。

片側ウェッジ
かかと部分の外側をもち上げるものを靴底に入れて使われます。
ただしかかとの回内を増長することになるので慎重に扱う必要があります。

テーピング
常時使用できるわけではありませんが、短時間なら短腓骨筋に沿って貼ったり、内反制限したりすることで保護することができます。

腓骨筋のテーピングはこちら。

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リハビリと再発予防

腫れや痛みがひいてきたら徐々にリハビリを行います。

長座になり、タオルで母趾側を引っ張ることでℍ骨金を伸張させるストレッチ。

まずはストレッチ
痛みの様子をみながら慎重に伸ばしていきましょう。

同時に負荷の軽い運動も取り入れます。

チューブを足部に巻き付けて腓骨筋をトレーニングする方法。膝とかかとをつけたまま、つま先を開いたり閉じたりする

不安感の残る場合はバンド型のサポーターやテーピングで保護しながら行いましょう。

片足で立つバランストレーニングも行います。
脳と関節にある腱や靱帯の伸び具合を感知する受容器(センサー)をつなげる神経の再教育です。

バランストレーニング

再発防止のためには短腓骨筋のストレッチが最も重要なので、こまめに伸張させておきたいですね。」

腓骨筋のストレッチ&トレーニング

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まとめ

  • 短腓骨筋腱は第5中足骨基部に付着
  • 足関節の外返しと底屈運動に関与
  • 短腓骨筋腱の牽引によって炎症を生じる
  • イズリン病・下駄骨折・ジョーンズ骨折との鑑別が必要
  • 回外足や外側荷重ぎみの人、O脚変形などで起きやすい
  • ターンの多い体育館スポーツ、陸上でも多い
  • ヒールパッド(かかとを高く)が有効
  • 安静期間は2~4週
  • オーバーユースの場合は再発予防に努める
  • 内反捻挫後に後遺症として発症することもある。
  • 靴の外側すり減りによっても短腓骨筋腱の負担増加

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