イズリン病(イセリン病)は足の外側の骨端症。類似疾患にも注意!

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

10歳前後のスポーツをしている子どもに多い、足部の外側(小指側)の痛み。
成人になっていない骨で起きる「骨端症」(こったんしょう)のひとつ、

イズリン病
(イセリン病)

あまり聞いたことがない人が多いかもしれませんね。
でも、誰にでも起こりえるものでもあるんです。

今回は足部の骨端症のひとつである「イズリン病」(イセリン病)を紹介していきます。

かかとの外側から前方になぞっていくと突起がある。この場所が第5中足骨粗面部

イズリン病(イセリン病)は足の外側の骨端症。類似疾患にも注意!

※ご注意!
このページでは「イズリン病」(イセリン病)について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
足部の骨端症についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
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第5中足骨粗面部の骨端症

第5中足骨粗面部は短腓骨筋の牽引によってイズリン病が発症する

骨端症とは、なんらかの理由で、子どもの骨の端っこ部分、柔らかい軟骨部分が損傷したり、血流障害をおこして破壊されてしまっている状態。

第5中足骨粗面部
(だいごちゅうそくこつそめんぶ)

第5中足骨基部にある短腓骨筋(たんひこつきん)の付着部(粗面)で発生する骨端症なんです。

第5中足骨粗面部の場所

第5中足骨粗面部(基部)というのは、足部の小趾側(小指側)にあり、外側縦アーチ(外側縦足弓)が大きく沈み込む場所にあります。

場所は外くるぶし(腓骨外果)からちょっと前方、外側から押すと小さい突起を触れることができます。
この部分に小児は骨端線(こったんせん)があります。

骨端線とは、小児の骨の末端にある骨端軟骨(成長軟骨)と骨化した骨組織の境界部分。
ここに障害がおきるのが「イズリン病」(イセリン病)です。

8~15歳ごろまでに多い

頻度が多いのが8歳~15歳ぐらいまで。

第5中足骨基部の骨端線閉鎖(こったんせんへいさ)は、14~15歳ごろ。
骨端線の閉鎖は骨端軟骨が骨化することをいいます。

イズリン病を発症する人の大部分が「スポーツ」をしていることが特徴です。
スポーツ障害のひとつともいえそうですね。

明らかな外傷がない

もうひとつ特徴的なのが、

あきらかな外傷歴がないこと。

「ひねった」とか「高所から転落した」とか大きなケガをする覚えがないのに、徐々に・・・または、気づいたら・・・痛かったということがほとんどです。

スポーツをしている子どもに多いのは、繰り返しの負担が第5中足骨基部の骨端線にかかっているからといえそうです。

イズリン病の原因

ジャンプの着地やターン、ストップのときに短腓骨筋の家人によって粗面部が引っ張られる

イズリン病の原因の多くが、骨端線への機械的な刺激です。
(中には原因がはっきりしないものもあります)
第5中足骨粗面部は足部でも重要な場所にあります。

筋肉の牽引

短腓骨筋は下腿外側の下部にある

いちばん大きな原因と考えられるのが、

「短腓骨筋」
(たんひこつきん)

足首を回外や底屈させるときに働きます。
また、足首がグラグラしないようにスタビライザー(安定させる)としても働きます。

第5中足骨粗面部にはこの短腓骨筋が付着します。

ジャンプ
ターン
ストップ
着地

を繰り返すスポーツではこの付着部に大きな負担をかけます。
(サッカー・バスケットボール・バドミントンなどが多い)

他には、足首を内反(足底が内側を向く)させたときにも短腓骨筋は強く牽引を受けるので付着部の骨端軟骨を引きはがすように働きます。

腓骨筋はどういう作用がある?

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外側縦アーチ

短腓骨筋と長腓骨筋は外側縦アーチを引っ張る

第5中足骨は、足部の外側縦アーチを形成する骨でもあります。
縦アーチは、歩行やランニング、ジャンプの着地時にバネのように働き、衝撃を吸収したり、推進力を増す役割をもっています。

外側縦アーチを維持する筋肉が

短腓骨筋(たんひこつきん)
〈縦アーチを引っ張る〉

また足底の外側にある、

短小趾屈筋(たんしょうしくっきん)
小趾外転筋(しょうしがいてんきん)
〈弦を絞る役割〉短小趾屈筋と小趾外転筋はアーチの底面を支える

これらが疲労していたり、弱かったりすることで

外側縦アーチの扁平化が生じる!

これによって骨端線部の損傷が生じることもあります。

短小趾屈筋(たんしょうしくっきん)
第5趾基節骨底から第5中足骨底に付着して、MTP関節屈曲作用がある。
小趾外転筋(しょうしがいてんきん)
第5趾基節骨底から踵骨外側に付着して、MTP関節屈曲と小趾外転の作用がある。

外部刺激によるもの

隆起しているので外側から刺激を受けやすいのと足底からも刺激を受けやすい

第5中足骨粗面部は少し隆起しているため、外側からも触れることができます。
突起になっているので「当たりやすいという特徴もありますね。

回外足やシューズ、スパイクのポイントなどで繰り返し患部に刺激が加わって生じるイズリン病もあります。

見逃されやすい点は、外側からの刺激だけではなく足底部(足裏側)からも刺激を受けやすいところ。

スキーのターンでも強い刺激を繰り返し受けて、発症した例もあります。

イズリン病の症状

初期では圧痛や運動時(スポーツ時)にのみ疼痛を生じます。
進行してくると荷重時疼痛腫脹(腫れ)、熱感がみられることがあります。

最初は運動できなくなるほどの痛みになることが少ないので、がまんして運動を続けてしまう人も多いです。

運動痛は、足関節(足首)を内反させたり、背屈させたりするときに生じます。
またターンや着地などで外側縦アーチをつぶすような力が加わるときにも疼痛が生じやすいです。

運動を制限させることで、痛みが減少することが多いのですが、進行してしまうと軟骨部分が隆起して「異常隆起」や付着部が剥離(裂離)してしまうことがあります。

似ている疾患にも注意

イズリン病との鑑別

近い場所の損傷や障害との鑑別が必要なこともあります。
レントゲン検査が必要なので、整形外科を受診しましょう。

第5中足骨疲労骨折

ジョーンズ骨折行軍骨折ともいわれます。
外側アーチに繰り返し加わる荷重によって疲労骨折するもので、治りが悪いのが特徴です。

イズリン病との違いは、骨折線が第5中足骨の末梢側の骨幹部にあることで見分けられます。

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第5中足骨基底部骨折

下駄骨折(ゲタ)とか下駄ばき骨折ともいわれます。
同じ第5中足骨の基部の骨折です。骨折線は中足骨長軸に対して横方向に走行。
(イズリン病での骨端線は中足骨長軸に対して縦方向に走行)

イズリン病との違いは、明らかな外傷歴があること。
下駄骨折は足首を内反(足裏が内側を向く)させることで生じることが多いです。

イズリン病と同じように短腓骨筋の牽引力によって、第5中足骨基部が剥離骨折してしまうものです。

骨端核癒合不全

骨端線が分節化して骨化できなかった場合は骨端核癒合不全となる

第5中足骨粗面部の骨端線が閉鎖するのはだいたい15歳ぐらいまで。

16歳以上で骨端線が残っているのは、癒合不全といって、骨端核が第5中節骨と癒合せずに分離している場合もあります。

その場合、レントゲン上では骨端線が縦に走ります。
結合組織で第5中足骨にくっついていますが、以前にイズリン病を発症していたことも考えられます。

また、骨端核が癒合途中だと、レントゲンでは剥離骨折(裂離骨折)をしているように見えます。

骨端核(こったんかく)
小児の長骨の末端部にある骨化した部分。周囲に骨端軟骨(成長軟骨)があって、その骨端軟骨が骨化していくことで骨が縦に伸びる。

腓骨筋滑車症候群(ひこつきんかっしゃしょうこうぐん)

外果下部にある骨の隆起部である「腓骨筋滑車」(ひこつきんかっしゃ)で生じる、長腓骨筋腱または短腓骨筋腱の腱鞘炎

場所が第5中足骨基部近くになるため混同されやすいが、よく触っていくと場所が違うので違いは分かりやすいです。

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イズリン病の治療と予後

イズリン病は患部の安静によって治療していくことが可能です。
ただし、治療せずに放置してしまうと剥離骨折骨端核癒合不全になってしまうことがあるので注意が必要です。

イズリン病の治療

炎症が強い場合は、患部を冷却(アイシング)して安静にします。
腫れや痛みが少ない場合は、患部の運動制限をしながらであれば、運動強度を調整しながらのスポーツ復帰は可能です。
(患部の安静は保つこと)

スポーツを復帰する前、さらに復帰した後も短腓骨筋やそのほかの足関節周りの筋肉をストレッチしておくことは大切です。

骨端線が離開してしまったものや難治性のものは、手術の対象になることもあります。

第5中足骨粗面部を安静に保つ方法

〇足関節背屈制限
〇内反(回外)制限
〇外側アーチの保持

簡単にいうと短腓骨筋」の牽引力を弱める目的で行います。
短腓骨筋が繰り返し第5中足骨粗面部を牽引しないように足部を安定させましょう。

〇足関節背屈制限
なるべくつま先を下げた状態を保ちます。
かかとの下にクッションなどを靴に入れてヒールアップさせるのも有効です。

〇内反(回外)制限
足裏が内側を向くと短腓骨筋が引っ張られます。
足底の外側を持ち上げるように固定してみましょう。

〇外側アーチの保持
外側アーチがつぶれる(外側に荷重する)と短腓骨筋は引っ張られます。
インソールなどで縦アーチを保持することも有効です。

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予後

患部の安静を保つことで4~6週間ほどで痛みがとれることが多いです。
多くが後遺症を残さずに運動できるようになります。

ただし、第5中足骨粗面部に大きな負担がかかっていたことで発症したわけですから、シューズや地面、練習環境、練習頻度などの見直しが必要です。

再発させないように、足関節周りのストレッチやインソールの検討もしましょう。

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イズリン病まとめ

〇第5中足骨粗面部の骨端症
〇8~15歳ぐらいのスポーツをしている人に多い
〇運動制限することで4~6週で痛みがとれることが多い
〇短腓骨筋の牽引力によるもの
〇ジョーンズ骨折や下駄骨折との鑑別が必要
〇背屈・回外を制限、外側アーチを保つ努力をする
〇予後は良好なことが多い
〇無理をさせると異常隆起や剥離骨折を引き起こす。

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