こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。
外くるぶしの後ろ側に痛みが出たり、腫れたりする症状が出る疾患はいくつかあります。
足首を内反(足裏が内側を向く)してひねって足首を捻挫したとき、多くの場合、外側の「靭帯」を損傷します。
「まれに」ですが、このとき外くるぶし(外果)の後ろを走る腱を一緒に損傷してしまうことがあります。
比較的めずらしい疾患ですが、今回は「短腓骨筋腱縦断裂」(たんひこつきんけんじゅうだんれつ)について紹介していきましょう。
『足首外側(外くるぶし後ろ)の痛み。「短腓骨筋腱縦断裂」(損傷)はどんな疾患?』
このページでは「短腓骨筋腱縦断裂」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
症状は外くるぶし後方の痛みと腫れ
おもな症状は、
腫れ…外果後方(外くるぶしの後ろ)から下方
運動痛…背屈や内反、外側に体重をかけたとき など
圧痛…後方から外果に向かって押したとき
短腓骨筋腱(たんひこつきんけん)の損傷であるため短腓骨筋を動かしたり、引っ張ったりしたときに疼痛が誘発されます。
また放置されたままでいると損傷が広がって、腓骨筋腱に沿って疼痛や腫脹がでることもあります。
ただし、上記のような症状は足関節(足首)をひねったとき、他の組織の損傷でもよく生じるものです。
なかなか部位を特定しにくいことも多いので、外くるぶし周囲に症状がみられるときは慎重に対処するべきですね。
短腓骨筋腱縦断裂になるしくみ
短腓骨筋腱が縦に断裂するのは、
腓骨外果(外くるぶし)に強く押しつけられるため!
と考えられています。(外果では、短腓骨筋腱は長腓骨筋腱の前方を走行する!)
一般的に腱は「索状組織」(さくじょうそしき)といって、縦方向に線維が走っているものです。
このため縦への牽引力には非常に強くできていますが、突起物などの圧力によって長軸方向に裂けてしまうことがあります。
(線維は縦に走行しているため)
短腓骨筋腱が縦に裂ける原因として挙げられるのは3つ。
①足関節内反強制(足首内返し)による急性のもの
②短腓骨筋腱が脱臼した際に生じる急性のもの
③上腓骨筋支帯内部で繰り返し押しつけられる亜急性のもの
①足関節内反強制(足首内返し)による急性のもの
足関節を内返し強制(足裏が内側を向く動き)されたときに、上腓骨筋支帯(じょうひこつきんしたい)の内部で長腓骨筋腱(ちょうひこつきんけん)が短腓骨筋腱を腓骨外果に押しつけることで発症。
②短腓骨筋腱が脱臼した際に生じる急性のもの
これも内返し強制や急激なターンによって、上腓骨筋支帯が損傷して、短腓骨筋腱が脱臼(だっきゅう)または亜脱臼(あだっきゅう)して外果にのり上げてしまったもの。短腓骨筋腱が外果にこすれやすくなります。
一度の脱臼によるものと、脱臼や亜脱臼が繰り返されることで徐々に損傷が広がる場合とがあります。
③腓骨筋支帯内部で繰り返し押しつけられる亜急性のもの
上腓骨筋支帯は正常で、その内部のトンネルで長腓骨筋腱によって、短腓骨筋腱が押しつけられて縦方向に断裂。
長腓骨筋腱・短腓骨筋腱は外果を滑車のように使って、方向転換します。
※腓骨筋滑車(ひこつきんかっしゃ)では曲がり具合は小さい。
このため背屈や内反、ターン動作の繰り返しによって、細かい損傷が広がっていく可能性がありますね。
同じ理由で極端な「回外足」(内反足)でも生じることがあります。
他の腓骨筋腱による疾患と鑑別しにくい
短腓骨筋腱縦断裂では、長期にわたる外くるぶしの痛みや腫れが特徴です。
しかし、外くるぶしに腫れや痛みが生じる疾患も少なくはありません。また、受傷する原因も他の疾患に似ています。
縦断裂は「まれ」な疾患とされていますが、その他の腓骨筋腱の疾患として見逃されていたり、合併していたりする可能性があります。
確実に診断を受けるためにはMRI画像が必要で、水平断面で短腓骨筋腱の断裂がみられます。
腓骨筋腱脱臼
上腓骨筋支帯が損傷して、長腓骨筋腱や短腓骨筋腱が外果を越えて前方に脱臼する。
縦断裂と合併して生じることもある。
⇒腓骨筋腱脱臼は習慣化しやすい障害。見逃されやすいので要注意!
腓骨筋腱炎
くるぶしの後方で短腓骨筋腱が摩擦によって炎症を起こす。使いすぎ(オーバーユース)や内反捻挫で生じることもある。
こちらも長期にわたる外果後方の腫れが特徴。
腓骨筋腱炎がひどくなると縦断裂に移行する可能性もある。
⇒【外くるぶし】の下や後ろの痛み。「腓骨筋腱炎」は足の着き方が原因!
短腓骨筋の停止部での炎症⇒足の外側の骨が痛い!「短腓骨筋腱付着部炎」原因と再発予防。
踵腓靭帯損傷(しょうひじんたいそんしょう)
長・短腓骨筋腱の深部にある踵腓靭帯(しょうひじんたい)の損傷や断裂。
内反強制(足首が内側に強制)によって生じるので、腓骨筋腱の疾患とも合併しやすい。
⇒踵腓靭帯(しょうひじんたい)。足首捻挫に合併しやすい靭帯断裂
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治療は「長期の固定」が必要
短腓骨筋腱の損傷では、他の外側靭帯も同時に損傷していることが多いので、それらの症状に紛れてしまいがちです。
腱や靭帯といった強靭な結合組織は、筋肉と違って栄養血管に乏しいので、再生が遅い傾向にあります。
また再生しても瘢痕化(はんこんか)してしまうこともあるので、強めの固定(ギプス固定)を長期間(5週以上)することが必要です。
固定を長期間行っても症状が改善しないときには、手術で縫合する場合もあります。
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短腓骨筋腱縦断裂のまとめ
〇症状は長期にわたる外果後方の腫脹と疼痛
〇内反強制や脱臼によって腓骨とこすれることで損傷する
〇腱は索状組織で縦に裂けやすい
〇他の腓骨筋腱疾患や靭帯損傷と合併しやすい
〇鑑別しにくい・見逃されやすい⇒MRIが有効
〇長期のギプス固定か手術で縫合が必要
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