こんにちは。荻窪教会通りにあるほんだ整骨院の山内健輔です。
足の小指、つけ根の外側に突出した腫れがある人も多いですね。
人によっては、ブヨブヨしていたり、硬くコリコリしていたり。
痛みがある人もない人もいます。
これは「バニオネット」とよばれています。
(足の親指側にできるものは「バニオン」)
足の小指の外側にある「滑液包」(かつえきほう)という組織が圧迫や摩擦を受けることによって、肥大化したものが多いんです。
今回の記事では、「バニオネット」について詳しく紹介していきましょう。
足小指の付け根が痛い。腫れや発赤となるバニオネットとは?
このページでは「バニオネット」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
バニオネットの実態と症状
バニオネットは、足の小指(小趾・第5趾)のつけ根外側にある腫れや発赤、痛みのこと。
「腱膜瘤」(けんまくりゅう)や「テーラーズバニオン」と呼ばれることもあります。
内反小趾(digitus quintus varus ラテン語)は日本整形外科学会用語集(第5版)に収載されています。tailor’s bunionとは昔、縫い物をする人があぐらをかいて座るのをtailor’s sittingと呼び, 床に当たって胼胝や炎症を起こす事から呼ばれます。bunionette(バニオネット)は「第五中足骨骨頭外側の滑液包腫脹」と日整会用語集に記載されています。外反母趾の滑液包炎(bunion)に対してbunionetteと呼びます。中足骨の形から Metatarsus quintus valgus(第5中足骨外反症、ラテン語)とも呼ばれます。
英独仏語では医学用語としてラテン語のdigitus quintus varus、英語では一般的にbunionette と呼びます。
足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一『内反小趾(ないはん しょうし)、バニオネットに関する質問集』より引用
内反小趾(ないはんしょうし)と同時に合併することが多いので、混同されやすいですが、正確には別もの。
※内反小趾は足の小指が親指側に曲がってしまう変形
足指のつけ根部分を「中足趾節関節」(MTP関節)とよびます。
MTP関節の中足骨側は「中足骨頭」(ちゅうそくこっとう)。
中足骨頭部は少しふくらんでいます。
その外側部分や背側、底側部分には、腱や皮膚との摩擦を緩和する「滑液包」(かつえきほう)という軟部組織が存在します。
バニオネットのほとんどは、その滑液包が膨らんだものといわれています。
※なかには、皮膚が肥厚したものや第5中足骨頭が突出したものもあります
滑液包炎ってどうして起きる?
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バニオネットができるまで
足の末梢、外側にある第5中足骨頭部は、靴や靴下、地面などの物理的刺激が頻繁に加わります。
とくに小趾つけ根部分は「小趾球」(しょうしきゅう)といい、足の外側縦アーチ、横足アーチの着地部分。
- 滑液包への機械的刺激による炎症
- 滑液の増加・滑膜の腫脹→ぷくぷく(やわらかい)腫瘤
- 炎症の消失・水分の吸収、滑液が濃縮・セリー状→ぷくぷく腫瘤
- もっと水分が吸収されしこり状、滑膜の肥厚が瘢痕化→硬い腫瘤
①圧迫や摩擦が繰り返し加わることで、滑液包は炎症を起こします。
②滑液包内部の滑液が増加や滑膜(滑液包の外側)が腫脹。
この段階では弾力性のある柔らかい腫瘤。
③増加した滑液の水分が吸収されていき、ゼリー状に。
この段階でもまだ軟性の腫瘤。
④さらに水分が吸収されたり、滑膜の肥厚が瘢痕化したり。
また、腫瘤部分の皮膚が機械的刺激を受けることで胼胝(べんち:たこ)を生じます。
痛みと腫れがおもな症状
バニオネットの主な症状
- 腫脹(腫れ)・腫瘤
- 疼痛(痛み)
- 発赤(赤くなる)
- 胼胝(べんち:たこ)
- 鶏眼(けいがん:ウオノメ)
腫れや腫瘤、発赤以外の症状がみられないことも多いです。
炎症を生じている間は、自発痛や荷重時痛がでることもあります。
胼胝や鶏眼は外側や底側に生じやすいですが、腫脹や腫瘤が背側にまで及ぶ場合には、靴にこすれることによって上面の皮膚が肥厚することもあります。
他に合併しやすいものは、
が挙げられます。
「母趾」(足の親指)側にできるのは「バニオン」
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バニオネットの原因
バニオネットの原因は、ほぼ「機械的な刺激」によるものと考えられます。
シューズや労働環境などの「外部要因」と、内反小趾や筋肉バランスなどの「内部要因」に分けられます。
機械的な刺激とは、同じ場所に繰り返し物理的な刺激が加わること。
外部的な要因
- 靴や靴下(ストッキング)
- あぐらや下り坂歩行
- 外側荷重や小趾球で踏み返し
①靴
サイズが小さすぎたり、幅が狭かったりするもの。
大きすぎてもシューズ内部で動いてしまうもの。
ヒール(かかと)の高いものも小趾に圧が加わりやすいです。
きつい靴下やストッキングでつま先を締め付けることも要因になります。
②あぐらや下り坂
バニオネットの別称として「テーラーズバニオン」があります。
服飾職人(テーラー)があぐらで小趾を圧迫していたことが語源です。
下り坂での歩行が続くと、つま先からの圧迫力が働くのでバニオネットも生じやすいです。
③外側荷重や小趾球での踏み返し
外側荷重では、小趾側に圧迫力が働きやすいですね。
さらに、足の前外側、すなわち小趾球(足小指裏側にあるふくらみ)で踏み返し(歩行での蹴りだし)でも機械的刺激が起きやすくなります。
※通常は母趾球~母趾で踏み返すといいといわれる
内部要因
基本的には物理的な圧迫や摩擦が原因ですが、その物理刺激を生じやすくさせる要因があります。
- 内反小趾・寝指
- 第5中足骨頭部の大きさ
- 小趾外転筋の走行
- 内反膝・回外足・開張足
- 内また歩行(股関節内旋)
- 回内足(オーバープロネーション)
①内反小趾・寝指
小趾(第5趾)が内側(母趾側)に向く。
バニオネットのように小趾側を強く圧迫することで生じることが多い。
②第5中足骨頭部の大きさ
中足骨頭部の大きさは、個人差が大きいです。
第5中足骨頭部のふくらみや弯曲の具合によって、外側の滑液包が刺激を受けやすくなります。
③小趾外転筋の走行
内反小趾や寝指は、小趾基節骨の向きが変わります。
第5中足骨頭と外側を走る小趾外転筋(しょうしがいてんきん)の腱がこすれやすくなるのです。
④内反膝・回外足・開張足
内反膝(O脚)や回外足は外側荷重になりやすく、開張足では内反小趾が起きやすくなります。
⑤内また歩行(股関節内旋)
もともと股関節が内旋(つま先が内側を向く)している人も多いですね。
小趾側で踏み返し(蹴りだし)を行う傾向にあるので、バニオンのリスクも高くなります。
⑥回内足(オーバープロネーション)
かかとが内側に垂れるのが「回内足」(オーバープロネーション)。
これにより、中足骨全体も回内方向への力が働きます。もちろん第5中足骨も。
第5中足骨は外側縦アーチを形成しているので、少しだけ弓のようにカーブしています。
それが回内方向に強制されると、第5中足骨頭部の底面は外側に突出することに。
正確にはバニオネットではありませんが、骨頭が突出するタイプです。
バニオネットが内反小趾と一緒に紹介されることが多いのは、これらの原因が内反小趾と共通していることによるものだと考えられます。
治療と予後
とくに外傷の心当たりがなく、腫脹している場合はバニオネットであることが多いですが、ぶつけた・ひねった・踏まれたなどによる痛みの場合は詳しい検査も必要です。
近くの医療機関に相談しましょう。
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急性期・慢性期にやること
バニオネットの急性期での対処は、
冷却と保護
腫れや痛みが強い場合には、アイシングとバニオネットが当たらないようなサンダルを履くなどで保護しましょう。
ケガ急性期の応急処置はPRICE⇒ケガしたときの応急手当てRICE(ライス)処置とPRICE処置(プライス)。
慢性期でもやっぱり「保護」は大事。
バニオネットは物理的刺激が原因なので、徹底的に避けることで早めに回復させましょう。
パッドやテーピングでの保護も効果的です。
同時に靴や靴下、歩行環境の見直しを行いましょう。
痛みは消失するが腫れは残ることも
冷却と保護によって急性症状は治まりますが、腫瘤はしこりとして残存してしまうことが多いです。
バニオネットがくつに当たらないように注意をしても、年単位で消失するかどうかといったところです。
内反小趾に合併している場合には、ほぼ残存します。
原因となるものに気を付けて再発防止に努めましょう。
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まとめ
- 小趾MTP関節外側の滑液包炎
- 機械的刺激(摩擦と圧迫)によって起きる
- くつや足部変形がリスク要因
- 腫瘤は残存することが多い
- 内反小趾に合併することが多い
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