こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。
内くるぶしの下や後ろまわりが腫れたり、痛みが出たりして悩んでいる人が多くいらっしゃいます。
足首をひねったり、ぶつけたわけでもないのに・・・。
後脛骨筋腱機能不全(こうけいこつきんけんきのうふぜん)
聞きなれない名前ですね。
内くるぶしの後ろを通る「後脛骨筋腱」が異常をきたして、扁平足(偏平足)や回内足、外反母趾などを引き起こしてしまう障害です。
ちょっと長い名前なので、英語の頭文字をとって
PTTD
ということもあります。
今回は「後脛骨機能不全はどんな疾患なのか」を紹介していきます。
『足首内側が痛い!かかとが倒れる!「後脛骨筋腱機能不全」ってどんな疾患?』
このページでは「後脛骨筋腱機能不全」(PTTD)について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
後脛骨筋の特徴
後脛骨筋(こうけいこつきん)はスネの骨(脛骨)のちょうど後ろを通る筋肉。
〇足首の運動
底屈(つま先を下げる動き)
回外(内返し+内転+底屈)(足裏を内側に向ける動き)
後脛骨筋の働きについて詳しく⇒「後脛骨筋」(こうけいこつきん)。立位でバランスをとるための大事な筋肉!
〇内側縦アーチ(内側縦足弓)を維持する
舟状骨を上方に引き上げている。
縦アーチはバランス保持・衝撃吸収・推進力の役割がある。
縦アーチについてくわしく⇒足の縦アーチ(土踏まず)の役割。崩れると身体全体にも大きな影響!
〇足根管(そくこんかん)を通る
内くるぶしの下にある踵骨(かかと)の溝「足根管」を通る。
足根管の内部はいろいろな理由で圧迫されやすい。
足根管についてくわしく⇒「足根管」。内果とかかとの間にある大事なものを通すトンネル!
足根管内の圧力上昇によっておきる⇒足根管症候群。足の裏側の痺れや痛み。チネル徴候に要注意!
〇後脛骨筋腱は急な方向転換が多い
腱は内果(内くるぶし)後方を通過して、足根管へ。
その後、土踏まずにある「舟状骨」(しゅうじょうこつ)に停止。一部は足底側から中足骨や楔状骨底面に停止。
何か所かで大きく走行角度が変わる。
足の舟状骨情報⇒足の舟状骨はどんな骨?関連するケガや障害に関する情報も。
後脛骨筋腱機能不全とは?
後脛骨筋腱機能不全(こうけいこつきんけんきのうふぜん)は、
後脛骨筋腱になんらかの器質的変化が生じて筋の収縮を伝えられなくなっている状態
です。
簡単にいうと「もろくなって伸び切ったゴム」のような状態を想像してください。
後脛骨筋は足部を上に引っ張り上げて、縦アーチの弓部分を持ち上げています。
後脛骨筋腱機能不全はその能力が働かなくなることでさまざまな痛みを引き起こす可能性があるんです。
「腱」は入る?入らない?
英語でいうと
posterior tibial tendon dysfunction
それぞれの頭文字をとって「PTTD」とよばれます。
tibial 脛骨(スネの骨)
tendon 腱
dysfunction 機能不全
ということで全部をつなげると
「後脛骨腱機能不全」
となるんですね。
なので正確には「腱」が入ります。
ただし、腱も筋肉の一部分。
「腱」が入らなかったとしても普通に使われているし、間違われるわけでもないのでそれほど気にする必要もないでしょう。
内くるぶしの痛みや腫れから始まる
↑足根管内では後脛骨筋腱がいちばん脛骨側に位置するので物理的刺激を受けやすい=損傷しやすい
後脛骨筋腱機能不全は中年以降の女性に多いとされていますが、男性でもしばしばみられます。
最初の症状としては、
内くるぶしの後ろから下にかけての痛みと腫れ
後脛骨筋腱が炎症を生じる原因はいろいろと考えられますが、この内くるぶし(内果)あたりでの物理的刺激が大きな影響を与えていると考えられます。
内果の後方や足根管の内部で機械的刺激が長期間にわたって繰り返すことで、微小な損傷と修復(再生)が反復されます。
これによって、腱が変性してもろくなったり、延伸(延長して治癒)することで後脛骨筋の張力が腱に伝わりにくくなるんですね。
特徴は「明らかな外傷歴」が見当たらず、後脛骨筋腱炎を繰り返すことでPTTDへと移行してしまうことが多いです。ときにはもろくなって断裂してしまっている例もあります。
後脛骨筋腱炎ってどんなもの?
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足部の構造に重要な後脛骨筋
後脛骨筋は足部の内側縦アーチを上に引っ張る筋肉。
後脛骨筋の機能が低下したことで、内側縦アーチがすぐに崩壊するわけではありませんが、他の縦アーチを維持する組織に大きな負担をかけることになります。
さらに、内側縦アーチだけではなく、踵部(かかと)の内側支持機構(内側を支える)にも影響を与えます。
足底屈筋群(あしうらの筋肉やふくらはぎ)
足底腱膜
三角靱帯(足首内側の靱帯)
ばね靱帯(底側踵舟靱帯=スプリング靱帯)
これらの組織に大きな負荷がかかることで、徐々にさまざまな症状が進行していきます。
↓
内側縦アーチの低下
↓
踵骨の回内(かかとが内側に倒れる)
↓
回内足や扁平足、足底腱膜炎になりやすい。
↓
足部の形状維持がより困難
↓
足関節インピンジメントや変形性関節症を生じる
↓
膝や股関節、腰にも影響
後脛骨筋腱機能不全の症状と診断
内果周辺の疼痛・圧痛
荷重時の疼痛
足関節(足首)の不安定感
足底にも痛み
内果後方~下部の腫脹
踵骨(かかと)の外返し(かかと上部が内側に)
つま先立ちできない
「Too Many Toes」
つま先が外向き
内くるぶし周辺の痛みをみるときに大切なのが「後方からみること」。
踵骨が回内するとカタカナの「ハ」の字に見えます(踵骨の外反)。
さらに後脛骨筋の張力が低下するのでつま先を内側にする力が弱まるのでつま先が外向きになります。
他には「Too Many Toes」といって、正常の足よりも足指が多く見えるのも特徴のひとつ。
↑後方から見ると足指が多く見えることから「Too Many Toes」とよばれる
レントゲンで足部の骨の形状を見るほか、MRIで後脛骨筋腱周囲の水腫や腫脹、炎症の有無などにより診断されます。
内側縦アーチが消失していくので、バランス能力や衝撃吸収の能力が低下することで、足底腱膜や屈筋群、アキレス腱がその役割を代替するので、負担が大きくなり痛みや炎症を生じてしまうこともあります。
つま先立ちは足関節(足首)の底屈だけでなく、後脛骨筋と腓骨筋群が足関節の内側と外側でバランスをとりながら行われます。
後脛骨筋が作用しなくなるとつま先立ちができなくなることもあります。
他につま先っ立ちできない理由として、「拘縮」も挙げられます。
後脛骨筋腱機能不全が進行すると足関節が変形と癒着によって可動域がなくなり底屈しにくくなるためです。
後脛骨筋腱機能不全が進行するとどうなる?
後脛骨筋腱機能不全(PTTD)は、進行すると腱の断裂を起こしたり、足部形状の破綻を起こしたりすることがあります。
後脛骨筋腱機能不全はどんなものが原因になる?
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進行度によって分類される
後脛骨筋腱機能不全(PTTD)から始まる足部の変形(扁平足)は、進行具合によってステージ分けされています。
Myersonによる分類
ステージ1
内果(内くるぶし)の後方から下部にかけての疼痛・腫脹
周囲のむくみがあるが、足部の形状は保たれている。
ステージ2
後脛骨筋腱が微小な部分断裂を繰り返して腱が変性、伸張しつつある状態。
立位で体重をかけたときだけ踵骨(かかと)が外返し(外反)する。
つま先が外を向く。手で戻そうとすると戻る。
ステージ3
非荷重時にも踵骨(かかと)が外返ししている。
手で戻そうとしても癒着・拘縮して戻らない状態。
ステージ4
かかとが拘縮しているだけでなく、足関節(足首)が外返し(足裏が外側へ向く)変形を生じているもの。
足部の形が崩れる原因に。
後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の進行によって足部の形状が破綻しやすいのは、
負の連鎖
後脛骨筋の張力低下→ほかの部分への負担増→周囲の組織が破綻
後脛骨筋は縦アーチの天井を吊るしているような役割をしています。
縦アーチはとくに衝撃を吸収するときによく使われいます。
足で着地するときには、縦アーチがたわむことで衝撃を吸収。
このとき後脛骨筋は「遠心性収縮」(えんしんせいしゅうしゅく)といって、縮みながらも引き伸ばされます。
遠心性収縮は筋や腱、付着部にかかる負担が大きいので損傷しやすくなります。
後脛骨筋が機能低下を起こすことで、縦アーチを底面で引っ張り続けている「足底腱膜」や「足底屈筋群」の負荷があがります。
足関節の内側にある三角靱帯やばね靱帯にも荷重がかかるようになり、踵骨(かかと)の外返しが発生します。
踵骨の回内は扁平足や外反母趾を引き起こし、開帳足や変形性足関節症(足首の変形)へと進行する恐れがあるので注意が必要です。
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PTTDのまとめ
○内くるぶし周辺に腫れや痛みが生じる。
○後脛骨筋腱が損傷を繰り返して器質的変性が生じたことで起きる。
○足の着地時、後脛骨筋は遠心性収縮になるので損傷しやすい。
○踵骨が外返ししていき、進行すると足部の変形が生じる。
○後脛骨筋腱だけにとどまらず、膝や股関節に影響が波及することも。
後脛骨筋のテーピング⇒後脛骨筋のテーピング。後脛骨筋腱炎やシンスプリントから筋・腱を守る
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