かかとが内側に倒れる「後脛骨筋腱機能不全」の治療とリハビリ

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

足の縦アーチが低下したり、かかとが内側に倒れてきたりする「後脛骨筋腱機能不全」(こうけいこつきんけんきのうふぜん)

放置しているとどんどん進行して、足部だけじゃなく膝や股関節にも負担を広げていきます。
まずは進行を止めることが大切です。

今回の記事では「後脛骨筋腱機能不全の治療とリハビリ」について紹介していきます。

 

かかとが内側に倒れる「後脛骨筋腱機能不全」の治療とリハビリ

※ご注意!
このページでは「後脛骨筋腱機能不全の治療とリハビリ」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

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変形が進むと治療は難しい

保存療法
固定装具…テーピング・インソール(内側ウェッジ)・アーチサポート・ギプス・U字シーネ
安静保持…(急性期)外側荷重歩行・松葉杖
運動…足底屈筋群トレーニング、下腿三頭筋ストレッチ
観血療法
骨切り手術・腱移行 など

後脛骨筋腱機能不全ではU字型シーネ、ステー付きサポーター、インソール、アーチサポートなどの装具を使用する

後脛骨筋腱機能不全(PTTD)は後脛骨筋の腱(すじ)が伸びきってしまって筋肉の作用がその付着部である「舟状骨」(しゅうじょうこつ)に効いていない状態です。

原因は外傷(ケガ)や使いすぎ(オーバーユース)、または組織がもろくなる要因によるものです。

後脛骨筋は舟状骨(土踏まずにある骨)を後上方に引っ張る役割をしているので、その機能が失われることで内側縦アーチが低下します。

同時に踵骨(かかとの骨)が内側に倒れる回内(外反)が生じます。
これによって、回内足や外反扁平足といった足部形状の破綻が生じる原因になります。

後脛骨筋のテーピング

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後脛骨筋腱機能不全の急性期

後脛骨筋は足根管の内果寄りを通り、急に曲がるので擦れやすい。舟状骨を上方に持ち上げることで内側縦アーチを持ち上げる役割をしている

後脛骨筋腱が炎症をおこしている時期は急性期とよばれます。
外傷(足首をひねる)や使いすぎによって、後脛骨筋腱や腱鞘がわずかに損傷します。

この時期が後脛骨筋腱炎(こうけいこつきんけんえん)といわれている状態です。

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後脛骨筋腱の痛み

この時期は腱の機能不全に陥っていないので足部の形状は保たれています。
症状は内果(内くるぶし)周囲に腫脹(腫れ)や痛み
この時期には積極的にアイシングと後脛骨筋の保護を行うことで組織の修復を促します。

(冷却のしかた⇒受傷後のアイシング(冷却)。治療期間を短縮する効果あり!【応急処置】

炎症期には後脛骨筋のストレッチやトレーニングは行わず、安静にさせること。
場合によっては松葉づえなどで免荷(体重をかけない)ことも必要。
理由は炎症を繰り返すことで腱の変性(脆弱性)を促してしまう恐れがあるからです。

炎症が治まり、痛みと腫れが減少したところで動きをスムーズにするために軽い足首の運動をしていきます。
同時に後脛骨筋腱に負担のかかった原因を可能な限り取り除きましょう。

後脛骨筋腱機能不全の慢性進行期

後脛骨筋腱機能不全では踵骨の回内(外反)と舟状骨が下方に移動することが問題となる

後脛骨筋腱が繰り返し炎症を起こすことで腱が伸びて、後脛骨筋の引っ張りが舟状骨に伝わりにくくなります。

立って体重を乗せた時に後ろからかかとを見て「八の字」になるときは要注意。かかとが内側に倒れてしまっている状態です。
急性期のように痛みが強くあるわけではないので、「治った」と思って勘違いされてしまうこともあります。

後脛骨筋腱機能不全を後方から見るとかかとが内側に倒れて見え、足指が多く見える

最初は荷重時だけですが、進行すると非荷重時にもかかとが外返し(外反)します。
これは機能不全が後脛骨筋腱だけでなく内側の靱帯にも波及してしまっているためです。

この時期の治療は踵部の回内を矯正した状態で硬質の固定(ギプスやシーネ固定など)を行う必要があります。
固定期間も長期間が必要です。

それでも進行して機能障害が顕著の例や腱の断裂がみられる例では、腱を移行したり、骨を切って足首の角度を整えるように形成しなおしたりする手術が選択されることもあります。

後脛骨筋腱機能不全の治療は「進行させない」こと

後脛骨筋腱機能不全の外観。土踏まずが消失して、後側からみるとかかとが回内(外反)してみえる

腫脹と疼痛のみの急性の「後脛骨筋腱炎」の状態で腱の変性(延びたり、もろくなったり)がなければきちんと固定することで、回復が期待できます。

急性期のあと、一時的に痛みがやわらぐことがあります。
でも荷重時に後方から見てかかとが「ハ」の字にみえるときは、進行している可能性があります。
※もともと回内足(外反足)の人もいます。

後脛骨筋腱の変性や断裂が起きると周囲の支持組織(靱帯や腱など)への負荷が大きくなり、やがて足部形状が破綻してしまうことになるんです。

後脛骨筋腱機能不全(PTTD)の最大の目標は、機能不全の進行を防ぐ!

ここで最も重要なのが、

かかと(踵骨)を直立させて安定させる!

かかとを回内させないことで足関節内側の支持機構(靱帯)を保護

ステージの進んでいない(手で回内を戻せる)ものほどしっかりと固定して進行させないことが大切です。
ステー入りの強固なサポーターや「U字」のギプスシーネなどを用いて、荷重時にかかとが倒れないようにします。

ある程度進行が進んでしまったら、それ以上の進行を止めるため、疼痛を和らげるためにインソールやアーチサポートで荷重を調整します。

後脛骨筋腱機能不全を進行させない!自分でできる運動

注意
必ず急性症状が治まって、腫れや熱感、痛みがない状態で行いましょう!

外側荷重歩行かかと外側で着地→足裏外側を使って→第4~5中足骨頭部でけりだし。
外側に体重をかけたまま歩行する。

後脛骨筋トレーニング椅子に座って足を組むようにして反対の是上にのせる。バンドを足部内側にかけ、反対の端は逆の足で抑える。母趾側を上に持ち上げるようにする。
完全に機能が失われていない場合に行う。
ただし、より進行させてしまう恐れもあるので強い負荷ややりすぎは禁物。

足指の屈曲訓練(足底筋群強化)タオルを引き寄せる足指の屈筋群の訓練。足底腱膜を補助する屈筋群を鍛えることで縦アーチを維持する目的
足指の運動を積極的に行って足部アーチを保持する。

あしうらのケア⇒あしうら(足底)の筋肉を「鍛える」&「ほぐす」で足の不調を防ぐ!

長・短腓骨筋のストレッチ長座になり、タオルで母趾側を引っ張ることでℍ骨金を伸張させるストレッチ。
足関節を外返し方向に牽引する力をゆるめる目的。

アキレス腱・足底ストレッチ縦アーチが低下するので衝撃吸収能力が足底とふくらはぎに依存するのでよく伸ばしてストレッチする
歩行時の衝撃吸収の役割を代替する筋群は疲労しやすくなる。

後脛骨筋のストレッチと筋トレのやり方についてはこちら。

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まとめ

○腱の変性がない急性期は回復も期待できる
○腱の変性がある場合は、進行をとめるのが目標
○踵骨の外返しを防ぐ固定を行う。
○運動療法は急性症状が消失してから。
○足底の運動やストレッチ、ふくらはぎのケアは積極的に。
○後脛骨筋腱に負担をかけないように外側荷重で歩行。

参考にさせていただいたサイト;古東整形外科・リウマチ科 「後脛骨筋機能不全(歩くと内くるぶし周辺が痛い!)
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