「骨棘」(こつきょく)とは?骨にトゲができる原因とは?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

身体の骨にトゲができる!って聞いたことありませんか?

実は私たちの骨にもいつの間にかできてしまっていることがあるんです。

痛みを伴うこともあるし、全く伴わないこともある、

骨棘

読み方は「こつきょく」。
いったいどうやって骨棘が形成されるのでしょうか?

実は骨のトゲは形成のしかたによって3種類に分けられます。

①筋肉の付着部の骨棘(生まれつきあるもの)
②骨がぶつかってできるインピンジメント型骨棘
③腱や靱帯の牽引によって生じるトラクション型骨棘

今日は骨にできるトゲのようなもの「骨棘」(こつきょく)について紹介していきましょう。

背骨にできた骨棘。ルシュカ関節で骨棘が神経根をあ大阿久している様子

「骨棘」(こつきょく)とは?骨にトゲができる原因とは?

※ご注意!
このページでは「骨棘」(こつきょく)について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

骨にトゲが生えてくる?!骨棘って何?

骨に生じる「トゲ」のような突起を「骨棘」(こつきょく)といいます。
骨棘はもともと正常な骨にもある「棘」(きょく)といわれるもの、後天的に骨の変形によって生じる「骨棘」とがあります。

基本的に「骨棘」といったときには、後者(骨の変形)を指すことが多いです。

正常な骨にもともとある骨のトゲのようなもの

椎骨にある棘突起・横突起は筋肉や靱帯の付着部

骨盤にある上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)や下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく)、背骨にある棘突起(きょくとっき)、肩甲骨にある肩甲棘(けんこうきょく)などがこれに当たります。

ほとんどが筋肉や靱帯の付着部になっていて、トゲというより隆起突起のように見えるのが特徴です。少しなだらかな隆起は「結節」(けっせつ)と呼ばれます。

頚肋ってどんな骨?

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骨組織の変形によって生じる「骨棘」

股関節では関節軟骨化摩耗することで関節裂隙が狭小化。骨同士がぶつかることで骨棘が生じる

骨に加わる繰り返しの刺激によって生じるとがった骨の突起のことを「骨棘」と呼びます。

骨の変形で、過度の負荷が長期間にわたって繰り返されることで生じる骨組織の増殖性の変化によって「トゲ」のようになります。

程度は異なりますが、背骨の椎体部分では60歳以上のほとんどの人に骨棘がみられるといわれています。遺伝的な関与も疑われています

骨棘形成のしくみと原因

過剰な負荷・長期間・繰り返しの刺激

骨組織の損傷+炎症

修復

再生と石灰沈着

骨棘形成

繰り返される骨組織への刺激と加齢による骨や軟骨の水分保持力低下が原因と考えられています。

関連記事:子供の骨端症は「骨棘形成」に原因が似ている?!

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骨がぶつかって生じる骨棘(インピンジメント型)

軟骨の水分減少

衝撃吸収力の低下

骨どうしが衝突

骨棘

骨どうしが衝突して生じる骨棘は「インピンジメント型」といいます。ほとんどが関節やその近辺に生じるものです。

関節軟骨と半月板の摩耗によって骨同士がぶつかり膝関節で骨棘が形成される

関節軟骨の摩耗と大きく関係していて、変形性関節症の多くで骨棘形成がみられます。

※変形性関節症
関節軟骨(骨軟骨)のすり減りや過剰な負荷により、関節を構成する骨や靱帯、関節軟骨が変性する。
周囲の組織の損傷を引き起こすため、炎症を繰り返す。

骨組織の増殖と石灰沈着は関節の不安定性によって促進(*)するため、関節軟骨・関節円板の減少した関節や靱帯が延長した関節では起こりやすいです。

*(参考ページ)理学療法学Supplement様 第52回日本理学療法学術大会 抄録集

インピンジメント型の骨棘ができやすい場所は?
股関節・膝関節・足関節・肩関節・脊椎椎体…
足関節のインピンジメントによる障害⇒足関節インピンジメント症候群ってなんだ?
足の親指にも骨棘ができる?⇒足の親指つけ根、反らすとイタイ!強剛母趾ってどんな疾患?

腱や靱帯の牽引によって生じる骨棘(トラクション型)

筋・腱・靱帯の牽引

停止部(付着部)の炎症

骨の損傷と修復

付着部の変形、骨棘形成

腱や筋肉の過剰な牽引力や繰り返しの強い刺激によって生じるタイプの骨棘です。
引っ張るという意味の「トラクション型」と呼んでいます。

足底腱膜炎は荷重を受けた時に縦アーチの沈み込む。このときに足底腱膜が引き伸ばされて組織が微小損傷する

多くが使いすぎる「オーバーユース」によるものですが、かかとにできる踵骨棘(しょうこつきょく)などでは、いつの間にか形成されていることもあります。

トラクション型の骨棘ができやすい場所は?
かかと(足底腱膜やアキレス腱付着部)・上腕骨外側上顆(肘の上)など

なお、正確には骨棘ではありませんが、ヘバーデン結節(手のDIP関節)も同じ機序(側副靱帯の牽引力)で関節部分が変形するものといわれています。

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骨棘のおもな症状

関節のこわばり・違和感
痛み
炎症の繰り返し(腫脹や熱感)
関節可動域制限
神経圧迫
周囲組織の損傷
上腕骨内側上顆では内側足副靱帯や前腕屈筋群の牽引で骨棘を生じることがある

主な症状としては上記のとおりですが、骨棘のできる原因によって力が入りにくくなったり、他の部分への症状(神経麻痺など)が生じることもあります。

骨棘の症状

骨棘が形成するのは長期的・継続的に過剰な負荷が背景にあるので、炎症を繰り返します。それに伴って腫脹や熱感、疼痛が生じます。

そのほかにも骨棘形成によって生じる周囲組織への影響も挙げられます。
関節のこわばりや違和感、可動域の制限のほかに、骨棘が神経を圧迫することによって知覚障害や神経痛、麻痺などの神経症状を生じることがあります。

もちろん骨棘ができる場所によっては、直接あたることで痛みを生じる場合もあります。

骨棘があっても痛くないこともある!

背骨の椎体に生じた骨棘によって後方を通る脊柱管や脊髄を圧迫してしまうことがある

身体の中に「トゲ」があるって、痛そうですよね。でも実は生じた骨棘自体に痛みがあることはほとんどありません。(形成される途中は痛みあり!)

骨棘による痛みのほとんどは周囲の組織(靱帯や滑膜、神経、筋、腱)のものなんです。

だから、骨棘があっても痛みがない人もたくさんいます。
日ごろから身体を支えている椎骨(背骨)は骨棘がいちばんできやすい場所です。
60歳以上のほとんどの人が椎体に骨棘があります。
もちろん症状がある人もない人もいます。

また、踵骨(かかと)も骨棘の好発部位。
こちらも骨棘があっても痛みがない人がいます。

なので、骨棘の治療の基本は「保存療法」で症状に応じた治療が選択されることが多いです。
日常生活やスポーツ生活で支障がある場合にのみ「手術」が選択されます。

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骨棘のまとめ

変形性膝関節症では膝関節の内側または外側に骨棘がみられることもある

〇骨棘は骨の増殖性の変化によるもの
〇長期間・継続的に繰り返される過度の負荷によるもの
〇形成する原因によって衝突型と牽引型がある
〇関節の不安定性により骨棘への石灰沈着が亢進する
〇骨棘自体には痛みはない
〇神経圧迫による神経症状に注意が必要
〇変形性関節症・腱の付着部炎で生じることが多い
〇多くは保存療法が選択される

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