「頚肋」(けいろく)って?頚肋症候群は腕や胸に神経症状がでる!

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

もともとヒトの胸部には肋骨(ろっこつ)があって、おもに心臓や肺、大きな動脈や気管を守る役割をしています。

肋骨と脊椎(背骨)で鳥かごのような形をしていて、腹部とは「横隔膜」(おうかくまく)で区切られています。

この部分は、「胸郭」(きょうかく)と呼ばれています。

肋骨(あばら骨)は背中の骨(胸椎)と接続(関節)していますが、中には首の骨(頚椎)にもある人がいます。

頚椎にある肋骨のような骨を「頚肋」(けいろく)といいます。

今回の記事では、「頚肋」とそれに伴うことがある「頚肋症候群」(けいろくしょうこうぐん)について紹介していきます。

頚肋は第7頚椎(隆椎)の横突起が伸びて肋骨のようにみえるもの

「頚肋」(けいろく)って?頚肋症候群は腕や胸に神経症状がでる!

※ご注意!
このページでは「頚肋」「頚肋症候群」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

頚肋と触診

頚肋は第7頚椎の横突起進んから第1肋骨に向かって伸びる。
頚肋
第7頚椎(首のいちばん下)から横突起が伸びたような骨。
頚肋骨」(けいろっこつ)ともいわれる。
まれに第6頚椎からも伸びることがある。
第7頚椎の横突起前結節部分が伸びて頚肋になる
※頚椎の「横突起」。
肋横突起」ともいい、肋骨の痕跡があります。
これが横突起にある「前結節」(ちょっとだけ膨らんだ部分)。
この前結節が伸びたものが「頚肋骨」です。

読み方は「けいろく」。
肋骨奇形のひとつで多くが両側性ですが、左右非対称に伸びていることも多いといわれています。

頚肋を持っている人の確率は、人口の1%未満でめずらしいといえます。

第7頚椎から前下方に向かい、前方の末端は線維状(索状)の結合組織が第1肋骨に付着していますが、人によって大きさや長さはまちまちです。

頚肋の触診では、触知できる(大きい)ものとできない(小さい)ものがあります。
鎖骨と頚の間にあるくぼみ(鎖骨上窩)の後方(胸鎖乳突筋の後方)を触ってみましょう。

頚肋が大きい場合は鎖骨上窩の後方部分で触診できる

胸鎖乳突筋は首を回旋させた時に頚部を斜めにでてくる筋肉。

硬いものが触知できれば、頚肋の可能性があります。
この近くには、腕へと向かう神経や血管が走行しているので、軽く押してみる程度にしましょう。

診断に確実なのはレントゲン写真
第1肋骨の上、第7頚椎の横突起の辺りをみることで、容易にみつかります(存在すれば)。

頚肋症候群とは

頚肋骨の存在自体は「異常」でも「障害」でもありません

ただし、頚肋周囲に重要な血管や神経が走行しています。
頚肋骨や索状組織がそれらに干渉することでさまざまな症状が現れることがあるんです。

頚肋症候群
頚部から出る腕神経叢(わんしんけいそう)や鎖骨下動脈(さこつかどうみゃく)、鎖骨下静脈(さこつかじょうみゃく)に頚肋が干渉することで生じる、頚部痛や上肢への神経症状、血流障害

頚肋が付着する周囲には中斜角筋、前斜角筋、胸鎖乳突筋があります。
さらに腕へ向かう腕神経叢、腕や胸部へ向かう動脈、静脈。

しかもそれらは、第1肋骨と鎖骨の狭い隙間を通過しなければなりません。
その通過する過程のどこかで干渉が生じるのが「胸郭出口症候群」。
胸郭出口症候群のうち、頚肋が症状を引き起こすのが「頚肋症候群」なのです。

胸郭出口症候群のひとつ

胸郭出口には腕へ向かう神経・血管、頚部の筋、鎖骨・第1肋骨がひしめき合っている。

鎖骨と第1肋骨周辺は、狭い隙間を腕神経叢・鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が通過します。
この部分が「胸郭出口」と呼ばれます。

筋肉や肋骨・鎖骨の影響で上肢に向かう神経・血管が障害されるのが「胸郭出口症候群」(TOS)
手や腕にしびれや知覚障害、血行障害が生じます。

腕の重み、頸の動きによって第1肋骨・鎖骨が上下することで胸郭出口の隙間(肋鎖間隙)の大きさが変わる。

頚肋症候群は「胸郭出口症候群」のひとつ。

胸郭出口が狭くなる「なで肩」「やせ型」の人がなりやすいです。

鎖骨
上肢(腕)の重みで引き下げられる
(リュック・重い荷物)

胸郭出口狭小化による神経血管圧迫!

第1肋骨
斜角筋群の力で持ち上げられる

多くが腕神経叢を圧迫する神経性(nTOS)ですが、動脈性(aTOS)静脈性(vTOS)によるものもあります。

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頚肋があると血管や神経に干渉しやすい

頚肋がない人でも、胸郭出口は配線(筋・神経・血管)が混み合っていてお互いが干渉しやすい状況です。

頚肋骨とそれに伴う靱帯のような線維は、腕神経叢や鎖骨下動脈、鎖骨下静脈と接触しやすくなります。

通常の安静時には無症状でも、咳やくしゃみ、ものを飲み込むときなどで頚部の内圧が変化することで接触が生じることがあります。

とくに多いのが神経絞扼(しんけいこうやく)
腕神経叢に斜角筋群や鎖骨、肋骨が押しつけられることで胸・肩・腕~手に神経症状を発現させることがあります。

頚肋症候群の症状

症状はおもに上肢(腕~手)が多いですが、胸部や肩まわりにも出ることがあります。

代表的な症状
疼痛
しびれ
脱力・筋委縮
冷感

手は尺側に出やすく、人によっては握力の低下もみられます。

第1肋骨を挙上
手を持ち上げる(つり革など)
頚をかしげる(斜角筋の作用)
鎖骨を下げる
リュック・重い荷物

これらは腕神経叢に接触しやすい状況です。

腕神経叢(わんしんけいそう)

頚部から出た末梢神経が、おもに腕へ向かう神経が複雑に入り組んでいる部分。
「叢」(そう)は、草むらを表し、神経が草むらのようになっていることを表現している。
前・中斜角筋(斜角筋症候群)、第1肋骨・鎖骨(肋鎖症候群)
小胸筋(小胸筋症候群)で神経絞扼が起きやすく、胸郭出口症候群と呼ばれる。

頚肋症候群の治療は、基本的に保存療法が選択されます。
保存で改善がみられないとき、日常生活にも支障があるような場合には手術によって、骨を除去することもあります。

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まとめ

  • 第7頚椎の横突起から伸びたものが「頚肋」
  • 人口の1%以下の確率で持っている人がいる
  • 無症状なら異常でも障害でもない
  • 神経や血管の圧迫があると頚肋症候群
  • 多くが腕神経叢の圧迫(90%)
  • 症状は上肢に出ることが多い
  • 胸郭出口症候群の原因にもなる

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