こんにちは、ほんだ整骨院の山内です。
足首を内返しでひねってしまったときに、外くるぶしの周囲が大きく腫れたり、内出血を起こすことがあります。
外くるぶし(腓骨外果・ひこつがいか)には、足首を安定させるための靭帯が複数くっついています。
この外果周辺の靭帯が、足首(足関節)の外側支持機構として働いているのです。
内返し(足裏が内側へ)でひねるとこの外側支持機構の能力を超えた強制力が働くと、靭帯損傷や骨折、脱臼などのケガになるのです。
今日はその中のひとつ「踵腓靭帯」(しょうひじんたい)の損傷について紹介していきます。
『踵腓靭帯(しょうひじんたい)。足首捻挫に合併しやすい靭帯断裂』
このページでは「踵腓靭帯の損傷」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
踵腓靭帯の読み方&呼び方
「踵腓靭帯」って難しい漢字です。
両方とも普段使わないので読めなくても当然。
「しょうひじんたい」って読みます。
「踵」はかかと。
「腓」はこむら。腓骨(ひこつ)を表しています。
「かかと」と「腓骨(外果)」を結ぶ靭帯なので「踵腓靭帯」。
英語で「Calaneofibular Ligament」。
略して「CFL」って呼びます。
スポーツやリハビリの現場などではこの略称が使われることも多いです。
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内返し捻挫で損傷しやすい靭帯!
内返し捻挫や内反捻挫で損傷しやすいのは、
踵腓靭帯損傷(しょうひじんたい)
後距腓靭帯損傷(こうきょひじんたい)
二分靭帯損傷(にぶんじんたい)
外果剥離骨折(がいかはくりこっせつ)
第5中足骨基底部(近位部)骨折(下駄骨折)
などでしょうか。
内返しのときのつま先の下がりぐあい(底屈の角度)しだいで、損傷する部位は変わります。
踵腓靭帯は、底屈が浅いとき(あまりつま先が下がっていない状態)に損傷されることが多いといえますね。
踵腓靭帯断裂(部分断裂含む)の頻度は、最も多い「前距腓靭帯(ATFL)」に次いで多いです。
踵腓靭帯が損傷するほとんどで、前距腓靭帯が損傷しています。「踵腓靭帯のみ」の単独損傷は少ないのです。
踵腓靭帯の断裂は「前距腓靭帯の合併症」としてもあつかわれるのはこのためです。
(前距腓靭帯損傷のうち、20%以上に踵腓靭帯が損傷している)
ということは、内返しで足首をひねってしまった場合、外くるぶしの前側(前距腓靭帯)の腫れと同時に、下側~後ろ側(踵腓靭帯)も同時に腫れることがあるのです。
踵腓靭帯の役割。
腓骨の末端部分を「外果」(がいか)といいます。
足首の外側の骨が出っ張った部分で、外くるぶしといわれています。
踵腓靭帯は外果の下部から踵骨(かかとの骨)外側に向かって走行しています。
踵腓靭帯の役割は、足関節(足首)の安定性を保つこと。
脛骨・腓骨が足根部の距骨を挟み込むようにしている。
距骨と踵骨との関節。
足関節は、上記ふたつの関節と7つの足根骨(そっこんこつ)が組み合わさった複合関節です。
それぞれ骨どうしがバラバラにならないようにつないでいるのが靭帯。
踵腓靭帯の役割は、
過剰な内反の防止!
同時に損傷することの多い前距腓靭帯や後距腓靭帯とともに過剰な内反を抑止しています。
(補助的に遠位前脛腓靭帯や遠位後脛腓靭帯も)
踵腓靭帯損傷があると重度の捻挫!
踵腓靭帯の損傷は、
「内返し強制における外側靭帯損傷の重症度」
の判定にも使われることがあります。
②前距腓靭帯の単独損傷
③前距腓靭帯 + 踵腓靭帯損傷
①→③にいくほど重症度が高い!
踵腓靭帯の損傷は、多くが前距腓靭帯損傷が強いほど起こりやすいので、上記のように重症度(内反強制力の強さ)の判定に使われることもあるんです。
この他に一般的な捻挫(靭帯損傷)の重症度の分類として
Ⅱ度 靭帯の部分断裂
Ⅲ度 靭帯の完全断裂
長・短腓骨筋腱脱臼にも注意が必要!
外果の後方には「腓骨筋腱」(ひこつきんけん)という筋肉のスジ(正確には腱)が通っています。
外くるぶしを周って、
短腓骨筋は、第5中足骨基底部
長腓骨筋は、足底を横断しながら第1中足骨周辺
に付着します。
踵腓靭帯は腓骨筋腱の下側(骨寄り)を走行していて、上側(外側)には「腓骨筋腱支帯」(ひこつきんけんしたい)が二本の腱を押さえています。
内返し強制力が強く働くと、
+
腓骨筋腱支帯が断裂する!
腓骨筋腱支帯が断裂してしまった場合、腱を外果の後ろ側に抑えておくのは、腱を通す溝(みぞ)だけです。
こうして溝が浅い場合や外果のふくらみが少ない場合には、腓骨筋腱が外果を乗り越えてしまうことがあるのです。
「腓骨筋腱脱臼」
(ひこつきんけんだっきゅう)
といいます。
踵腓靭帯の損傷と痛みの出る場所がほぼ同じで、陳旧性(古いケガ)になると保存療法での治癒が難しくなることから、鑑別が必要です。
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踵腓靭帯損傷の症状・固定・予後
踵腓靭帯の場所と役割を理解して、固定とリハビリを正しく行うことが大切です。治癒過程で間違った対処法をしてしまうと、陳旧性(ちんきゅうせい)となって治癒が難しくなってしまったり、後遺症を残してしまう、さらには再負傷してしまうこともあるので必ず専門家に相談しましょう。
症状
外くるぶし後下方を中心に腫脹と皮下出血。
(前距腓靭帯損傷も合併することが多いので前方にも腫れ・血腫はみられることも多い!)
足関節を内反しようとすると疼痛、不安感。
必ず医師のもとで骨折や骨軟骨損傷の有無を確認しましょう。
治療
受傷直後~3日間はPRICE処置(=プライス処置って?)を心がける。
とくに冷却(=アイシング)は重要!
固定は損傷度に応じて行いますが、期間は2週間~4週間の間で調整されることが多いです。
「踵腓靭帯の走行は個人差がある」ことを前述しましたが、固定肢位(固定する角度)にも注意が必要です。
踵腓靭帯は、底屈(つま先を下げる)でも、背屈(つま先をあげる)でも引き延ばされる靭帯(注)です。
固定するときの角度は、地面と脛骨が直角になるように固定することが多いです。
↑(注)踵骨に付着する微妙な違いによっても緊張度は異なる!
Ⅲ度損傷(完全断裂)の場合は、他の損傷との兼ね合いもありますが、手術の適応となることがあります。
さらに、陳旧例(ケガをしてかなり時間が経過してしまっているもの)も手術になることが多いです。
踵腓靭帯のゆるみを放置してしまうと「回外足」が生じやすくなります⇒「回外足」(かいがいそく)の治し方は?原因と予防も考えよう!
急性期の処置としては「POLICE」⇒「POLICE 処置」(ポリス処置)はケガ急性期の管理方法。
予後とリハビリ
予後について、実際には前距腓靭帯損傷の予後と同様にあまり良くありません。
後遺症として、
変形性即関節症
足根洞症候群
などを残してしまうことも多いです。
足関節不安定症って?⇒「足関節不安定症」足首の長引く痛みや不安感、音が鳴ることも。
足根洞症候群って?⇒足根洞症候群。ケガをした後、足首の奥に継続した痛みや痺れ。
リハビリ
おもに腓骨筋を強化するものと再受傷を防ぐ固有知覚を再教育するものです。
リハビリは、再受傷しないように専門家の支持に従いながら行いましょう。
腓骨筋訓練
踵腓靭帯と協力して働く(内反防止機能)腓骨筋を強化します。
底屈位(つま先を下げた状態)で
と力を入れます。
タオルやゴムバンドで負荷をかけながら行います。
腓骨筋の起始と停止⇒足部の形状維持に重要な筋肉、長腓骨筋・短腓骨筋・第3腓骨筋の機能
腓骨筋を強化する!
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バランストレーニング
足関節周囲の靭帯損傷は、一時的に深部知覚と呼ばれる靭帯や筋肉に分布するセンサーの能力が低下します。
低下したままだと、再受傷やさらなる事故にもつながってしまうので、
神経と脳、筋肉の命令系統の再教育が必要になります。
①片足立ち(ケガしたほうで)
②片足立ちで上げた方を前後左右に振る。
③バランスマットやバランスディスクを利用。
踵腓靭帯の断裂。まとめ
〇前距腓靭帯損傷と合併する。
〇腓骨筋腱脱臼にも注意が必要。
〇受傷後のRICE処置は予後にも関わる。
〇底屈でも背屈でも伸張されるので固定肢位に注意。
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