こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。
足首をひねって断裂(損傷)する靭帯はいろいろありますが、どの形の捻挫にも合併する可能性のある靭帯が、
遠位前脛腓靭帯(えんいぜんけいひじんたい)
遠位後脛腓靭帯(えんいこうけいひじんたい)
足首の前後で両下腿骨(脛骨・腓骨)が離れないように保持している靭帯です。
この靭帯は他のケガに紛れてしまいがちな疾患で見逃されていることもあるんです。
きちんと治療しないと後々「不安定症」の原因にもなりかねないケガなので、この機会に詳しく知っておきましょう。
『遠位前・後脛腓靭帯の損傷。足首の少し上の捻挫!』
このページでは「脛腓靭帯の損傷」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
遠位脛腓靭帯は前と後ろにある!
まずは、脛腓靭帯の場所と役割を知っておきたいですよね。
遠位脛腓靭帯は脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)をつないでいる靭帯です。
脛骨と腓骨は足首部分の他に膝のちょっと下でもつながっていて、こちらをつなぐ靭帯は近位脛腓靭帯といわれます。
脛骨と腓骨は、遠位と近位の脛腓靭帯でつながっているほかに、
「下腿骨間膜」(かたいこっかんまく)という組織でも強固に結合されています。
遠位脛腓靭帯は脛骨と腓骨の骨端部どうしをつないでいる靭帯で、
前下脛腓靭帯(ぜんかけいひじんたい)
後下脛腓靭帯(こうかけいひじんたい)
ということもあります。(ややこしいですよね)
おもに足首の底屈と背屈(つま先の上げ下げ)を担っている「距腿関節」(きょたいかんせつ)。
脛骨と腓骨がつくる門に「距骨」(きょこつ)がちょうどハマって動く構造になっています。
この距腿関節の上部(屋根の部分)で脛骨と腓骨を結合させているのが前後の脛腓靭帯です。
荷重されている(体重がのっている)と脛腓靭帯は離開させるように力が働きます。
日常的に負荷がかかっているので、実は強靭な結合組織でできている靭帯です。
遠位前脛腓靭帯と遠位後脛腓靭帯を英語でいうと?
専門書や医療現場では英語からくる略語が使われることもあります。
遠位前脛腓靭帯(AITFL)
Anterior inferior tibiofibular ligament
遠位後脛腓靭帯(PITFL)
Posterior inferior tibiofibular ligament
遠位脛腓靭帯はどうやって損傷することが多い?
遠位脛腓靭帯損傷が起きやすいといわれているスポーツは、
2サッカー
3バレーボール
4ラグビー
相手の足の上に着地して受傷することが多い原因です。
他の選手と接触のあるコンタクトスポーツで起きやすいケガといえます。
脛骨と腓骨は強靭な骨間膜と前後の脛腓靭帯に補強されているのでかなり強い結合です。
損傷するときには非常に大きな外力が働いたと考えられます。
足首の動きで受傷する可能性がある?!
足関節は、底背屈以外にも内返し(足裏が内向き)や外返し(足裏が外向き)という動きがあります。
このときに距腿関節にしっかりかみ合っていた距骨が、正常な可動域以上に動かす外力が加わることで、前後の脛腓靭帯を離開する力が加わってしまうことで損傷が発生!
・・・ということは、足首(足関節)のケガに付随して起きることが多いケガなのです。
よくある発生原因。
ここでは、「距骨」の動きに注目しましょう!
前後の脛腓靭帯損傷には、距骨が大きく関わっています。
ほとんどの損傷が、距骨に伝わった力によって起きているといってもいいでしょう。
足関節の内反強制
足関節を内返し方向に強い外力で強制されたときには、距骨は「内転」します。
内転したときに、脛骨・腓骨を引きはがそうとして損傷。
このときに損傷しやすいのは、足関節外側の支持機構と「遠位前脛腓靭帯」。
果部骨折(くるぶしの骨折)にも注意が必要です。
足関節の外反強制
先程とは反対に外反方向に強制されると、今度は内側の靭帯、おもに三角靭帯が損傷されます。
距骨は「外転」して、上部の角が遠位脛腓関節を押し開きますね。
このときは、遠位後脛腓靭帯が損傷しやすいのですが、強力な外力が働くと前方でも断裂が起きることがあります。
脛腓靭帯の損傷は足関節捻挫に合併しやすい!
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足関節に回旋強制
↓
身体が回旋
↓
足関節に「ねじれ」強制
↓
距骨に回旋強制
↓
前後の脛腓靭帯が損傷する!
この機序で断裂(損傷)した場合の特徴は、
外側や内側の支持靭帯(前距腓靭帯や三角靭帯など)の損傷がないことも多い!
「足首をひねった!」というと側方の靭帯損傷ばかりをケアしてしまいがちですが、この発生機序の場合では、側方靭帯損傷の所見がみられないことも多いです。
つま先に側方から外力が働いてもこのように回旋して、前後の脛腓靭帯が損傷します。
特殊な損傷のしかたもある。
足関節の底屈・背屈の状態で繰り返し衝撃を受けることがあります。
繰り返し衝突することを「インピンジメント」といいます。
スポーツでのジャンプや着地などですね。
このときに距骨が繰り返し、距腿関節の天井部分にぶつかることで遠位脛腓関節に負担をかけます。
これによって、前後の遠位脛腓靭帯を痛めることがあります。
「骨性」のものと「軟部組織」(靭帯や関節包、滑液包、腱など)によるものがあります。
ここで起きるのは「軟部組織」によるもの。
とくに後方の遠位脛腓靭帯の線維は「果間靭帯」(かかんじんたい)と一緒になっているので、後方インピンジメントを生じやすいといわれています。
損傷するとどんな症状が出る?
損傷した部位に腫脹(腫れ)・皮下出血斑(内出血)・熱感が著明に現れます。
前側の遠位脛腓靭帯が損傷すると、外くるぶし~足首前側に腫脹や皮下出血がみられます。
後ろの遠位脛腓靭帯が損傷すると、アキレス腱~外くるぶし後方に腫脹や皮下出血がみられます。
ただし、受傷してから時間が経過すると他の損傷部位や腫脹の広がりによって、遠位脛腓靭帯の損傷が隠れてしまうこともあります。
前距腓靭帯や後距腓靭帯と場所が近いので間違えないようにしましょう。(合併していることも多いです!)
足関節を動かすと距骨も動くので、距腿関節の外側に疼痛が誘発されます。
底屈時には距骨が後方に当たるので後ろ、背屈時には前方に距骨が当たるので前の脛腓靭帯の損傷が疑われます。
側方に足関節を動揺させても距骨は距腿関節内で遠位脛腓関節を押し開くので疼痛が誘発されます。
また、荷重時の疼痛が強いのも特徴的です。
荷重時痛が強いのは、距腿関節において荷重されると距骨が遠位脛腓関節を押し広げるためです。
どんなケガを合併する?
足関節側方の靭帯損傷
脛骨・腓骨の果部骨折
距腿関節の軟骨損傷
遠位脛腓靭帯の損傷での合併は、発生機序(受傷のしかた)によって異なります。
たとえば、足関節内反での受傷であれば、前距腓靭帯や踵腓靭帯。外反であれば、三角靭帯の損傷を合併することも多いです。
また、強い外力が働いた場合には、脛骨・腓骨の骨折にも注意が必要です。
さらに、距腿関節の関節面にある関節軟骨(ツルツルした部分)の損傷も同時に起きていないか注意する必要があります。
⇒足首の離断性骨軟骨炎。長期続く痛みに注意。不安定症の原因にも。
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治療と固定期間、予後は?
受傷直後はPRICE処置を行います。
(⇒PRICE処置とは?)
その後は冷却を継続することも大切です。
(⇒アイシングのやり方)
ひねったときの応急処置
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固定は、損傷の程度、合併するケガの具合に応じて行います。
固定期間は2週~5週間ほど。
(期間は他のケガとも兼ね合いながら調整します。)
ギプス固定
副子(添え木)を入れた固定
サポーターやバンド
テーピング
荷重時に距骨が損傷部を離開させる方向に働くため、必要があれば免荷(体重をかけない)をします。
遠位脛腓靭帯は脛骨腓骨をつなげる靭帯なので固定は、両くるぶしを締めるように行います。
固定はしやすい靭帯なので、適切に固定ができれば予後は良好なことが多いです。
距骨の動きでも痛みが出るので足関節全体を固定することも大切です。
ただし、荷重時に負荷がかかりやすい=治りにくいともいえるので、しっかり固定したうえで慎重に荷重はしていく必要があります。
競技を行っている場合は、固定除去後サポーターやテーピングで靭帯を補強しながら復帰しましょう。
意外と有効なのが、アーチを保持するインソール。
荷重時にアーチがつぶれる形になると踵骨・距骨が外転して、脛腓靭帯に張力が働きます。
それを防ぐことで脛腓靭帯への負担を減らすことができるのです。
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「遠位脛腓靭帯の損傷」まとめ
〇距骨の動きによって損傷する。
〇足が固定された状態で身体が回旋して負傷することもある。
〇荷重時が強いのが特徴。
〇固定は両果を締めるように。足関節全体を。
〇予後は悪くない。
〇合併する他のケガにも注意。
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