こんにちは。山内健輔です。
「疲労骨折」(ひろうこっせつ)ってよく聞きますよね。
文字通り、〈骨が疲労して損傷する〉ことなのですが、
どうして骨が疲労するんだろう?
って思ったことはありませんか?
今回の記事では「疲労骨折」がどんな骨折なのか、注意することや治療について全般的に紹介していきます。
『「疲労骨折」ってどんな骨折?見逃されやすいので注意が必要!』
このページでは「疲労骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
疲労骨折とは?
軽微な外力(弱い力)が同じ場所に繰り返し加わることで生じる骨の損傷
軽微な外力とは、
1度で骨折が起きないぐらいの力
をいいます。
たとえば、ランニングで起きる足の甲の疲労骨折「中足骨疲労骨折」やゴルフのスイングで起きる「肋骨疲労骨折」など。
多くは、同じ動作を繰り返すことで発生します。
スポーツや身体を使う労働で生じることが多い、「オーバーユース」によるものです。
本人もぶつけた!ころんだ!ひねった!など外傷の記憶がないため、まさか骨折しているとは思っていないことがほとんど。
似ている疾患として「病的骨折」(びょうてきこっせつ)があります。
骨粗しょう症などの身体的な背景があり、通常では骨折を起こさない外力で骨折してしまうこと
レントゲンで写らないこともある!
早期の症例ではX線上明らかな骨折線や変化は認められません。 この様な時期には骨シンチグラフフィー(放射線を出す物質を注射して骨への集まりを見る検査)やCT、MRIで確認する必要があります。 2~3週間すると、骨折線が明らかになったり骨折線の周りに淡い骨の像が見えてきたりします。
一般社団法人 日本骨折治療学会ホームページ「疲労骨折」より引用
多くの人が「骨折だからレントゲンでわかるよね~?」と思っています。
ですが、実際には骨の損傷が起きた直後(痛みがいちばん強くなった時期)でのレントゲン検査では分からないことも多いんです。
(初期にはMRI画像や骨シンチグラフィによって診断されます)
むしろ、直後でもレントゲンに写るような損傷だとよっぽど重症化しているといってもいいでしょう。
基本的に疲労骨折では、損傷した初期では明確な骨折線はレントゲンで発見しにくく、骨が再生する過程で「仮骨形成」(かこつけいせい)で発見されることが多いです。
受傷後、1週目~4週目にかけて、骨芽細胞(こつがさいぼう)が仮骨(少し柔らかい)を形成して損傷個所を埋める。
その後、仮骨が硬化して、さらに多めにできた仮骨が吸収されて、修復(リモデリング)されていく。
すべての症例で、骨シンチグラフィやMRI検査が選択できるわけではありません。
外傷の記憶がないことから、多くがレントゲン検査のみで終わることも多いです。
レントゲン上では異常がないからといって、そのままにするのではなく、患部の「保護」と「固定」をしておくことは重要なのです。
疲労骨折は、おもに負担のかかりやすい部位に発症するので、治りにくい「難治性」のものも数多いので注意が必要です。
第5中足骨近位の骨幹部疲労骨折「ジョーンズ骨折」
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疲労骨折が多い部位・年代
10代に多い
スポーツ選手
再発も多い
疲労骨折は圧倒的に下肢(脚~足部)に多いです。
他の部位と違って、荷重や衝撃の強さ、頻度ともに大きいのが理由。
かといって、他の部位で発生しないわけではなく、どの部位でも発生します。
(肋骨や上肢(腕)や背骨にも発生することもある)
10代のスポーツ選手に多い理由
・骨がしなりやすい
・身体が大きくなる
・骨の成長に筋量が追いついていない
・運動量や強度が増加する時期
・自分で練習量を管理できない
もちろん10代のスポーツ選手だけに発生するわけではなく、オーバーユースなのでどの世代でも発生します。
また、生理不順による骨の弱化や体重増加による負担増などの身体的理由でも疲労骨折を発症することがあります。
治療と再発防止について
疲労骨折は、他の骨折と違って、安静にしていると痛みが少ないことが特徴です。
ということは、本人も周囲も骨折と気づかずに「軽視されやすい!」ってこと。
きちんと治療・再発予防をしておかなければ、いつまで経っても治らないばかりか、完全骨折(骨組織が分断される)に発展、偽関節になってしまうこともあるんです。
治療
初期の治療としては、骨折線が不明瞭な場合でもまずは、「骨折」(不全骨折)として処置しておくことが望ましいです。
(ガチガチに固めるまではしないことが多い)
通常であれば1~2週で仮骨形成が始まるので、レントゲン検査を再度したり、痛みの程度をみながら固定を弱くしていきます。
荷重のかかる部位であれば「免荷」(体重をかけないように)。
さらに物理的な外力を避けるために「保護」も必要です。
発症原因はオーバーユースなので「患部を使わないこと」で回復を促します。
固定期間は部位や程度によって大きく異なります。
4~12週間。
6~8週で癒合することが多いですが、患部の状態をみながら固定器具も代えていきます。
部位や負傷状況によっては手術が必要になることもあります。
再発防止・予防
「予防」も再発防止とほぼ同じ内容です。
環境のみなおし
地面や道具など外的要因を見直して患部の負担を減らす。
練習(作業)内容・量・頻度のみなおし
オーバーユースになった原因を見直すことも重要。
身体能力・成長に合わせたプログラムを組む
練習(作業)フォームのみなおし
特定部位にだけ負荷がかからないように、身体の使い方を工夫する。
とくに10代のスポーツ選手は自分で練習量や頻度をコントロールできないことが多いです。
10代は成長期の早い・遅いでも体格・体力にも違いが大きくなる時期でもあります。
指導者や周囲の大人が「無理をさせない」ことを意識する必要があります。
疲労骨折のまとめ
- 軽微な外力が繰り返されて起きる骨折
- レントゲンで写らないことがある
- 仮骨形成で発見されることも
- 必ず「安静」「保護」が必要
- オーバーユース症候群のひとつ
- 下肢に多い
- 10代のスポーツ選手に多い
- 体重やカルシウム代謝の変化が背景にあることも
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