ペルテス病って?股関節(大腿骨頭部)の初期症状(足のひきずり)に注意!

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

誰しも一度くらいは股関節部分に痛みを感じたことはあるかもしれませんね。

ほとんどが一時的な痛みで済むことが多いのですが、なかには重大な病気が隠されていることもあるんです。

ペルテス病」は、大腿骨頭部(股関節の大腿骨側)の骨がつぶれてしまう子どもの病気

とても珍しい病気なのですが、初期症状は一般的な股関節痛と非常に似ているため治療が遅れてしまう恐れがあるんです。

早くに治療することで再生しやすくなるので、早く気づいてあげることが必要。

今回の記事では、「ペルテス病」について紹介しています。

ペルテス病は大腿骨近位の骨頭部の骨端症。血流が途絶えることで球形部分が壊死して体重を受けてつぶれる(扁平化)

ペルテス病って?股関節(大腿骨頭部)の初期症状(足のひきずり)に注意!

※ご注意!
このページでは「ペルテス病」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

ペルテス病とは?

正式な名称は、

レッグ・カルベ・ペルテス病

大腿骨頭部(大腿骨近位の球形の部分)の頂点がつぶれてしまう病気です。
大腿骨頭部に血流が供給されなくなり、体重のかかる頂点部分が傷ついて壊死することから進行していきます。

発症頻度は非常にまれで、4~9歳の幼児から小学校低学年に多い疾患です。
小柄で活発な男の子に多い(男女比6:1)とされています。
(基本的に片側で、両側に出るのは10%未満)

日本におけるペルテス病の多施設調査報告
全国95施設から回答を得た、1993年~1995年の3年間に711症例(766股)がペルテス病と診断された。発症率は小児10万人に対して約1人程度で、3年間の平均は0.9人であった。男女比は6.3:1……
(省略)
小児10万人に約1人という数字は欧米の報告より低い。回答のなかった施設分が不足していると考えられた。

2009年 金 郁喆 日本小児整形外科学会MCS委員「日本におけるペルテス病の多施設調査報告」より引用

大腿骨頭部の骨端症

大腿骨の頚部では骨頭部への血流は末梢からの2本の血管に頼っており、骨端軟骨が損傷すると骨端核に阻血性骨壊死が起きる

子どもの長管骨(細長い骨)には、骨の長軸成長が止まる10代の後半になるまで「骨端軟骨」(成長軟骨)という部分が存在しています。

レントゲンでみるとその部分が透過して黒い線のようにみえるので、「骨端線」(こったんせん)「成長板」(せいちょうばん)ともいわれます。

で、なんらかの理由でその骨端軟骨部分が損傷するのが、「骨端症」(こったんしょう)

ペルテス病も骨端症のひとつです。

ペルテス病の原因はよくわかっていませんが、何らかの理由で骨端軟骨部分が傷つき、骨頭部へ向かう血流が障害されます。

※個人差は大きいですが、15歳~17歳ぐらいで、大腿骨近位の骨端線閉鎖が起きるといわれています。
大腿骨頭部(球形の部分)は末梢側の血管によって、栄養・酸素が供給されています。
子どもの骨の特徴についてはこちらの記事も参考にどうぞ。
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後遺症が残りやすい

骨端核は骨が大きくなるための中心部。 血行が途絶えると壊死して骨がもろくなる

骨の成長で末端部の骨が硬化した部分は「骨端核」(こったんかく)です。

骨端軟骨部分が硬化(ミネラル分が沈着)して、骨端核が大きくなることで骨は成長しています。

ペルテス病では、骨頭部分への血液供給が遮断されることで、骨が脆弱になります。
脆弱になるのは阻血性骨壊死(そけつせいこつえし)が起きるため。

※阻血性骨壊死(そけつせいこつえし)
血液供給が遮断されて、酸素・栄養が行き届かなくなることで骨細胞が消滅すること。
骨は骨細胞が梁(はり)や柱になって(骨梁という)、それらにミネラルが沈着してできている。

体重のかかる頂点部分からつぶれていきます(圧潰)
骨は損傷されると再生しようとするのですが、血液供給が断絶しているとそれができません。

子どもは小さいうちには「自家矯正力」によって、元の形に戻ろうとする能力があります。
が、体重がかかったり、動かしてしまう部分なので、完全に元の形に戻れないことも多いのです。

股関節の痛みや可動域制限脚長差(足の長さ)などの後遺症が残ってしまうこともあります。

後遺症なく過ごせても、成人してから骨頭部分の変形によって「変形性股関節症」(へんけいせいこかんせつしょう)を発症してしまうこともあります。

一般に、年齢が低いほど、骨壊死の範囲が小さいほど予後はよく、後遺症や変形性股関節症のリスクも下がります。

大人になってから大腿骨頭部に壊死を生じる「大腿骨頭壊死」(だいたいこっとうえし)では、すでに成人の骨にっているために「リモデリング」能力が低いので回復は望めません。

その点、ペルテス病の発症は4~9歳なので、回復と再生を望めます

原因は不明

大腿骨頭部への血液供給が断たれる原因は(いまのところ)不明です。
いくつかの説があります。

  • 繰り返し生じる微小な骨端軟骨の損傷(外傷)。
  • 大腿骨頭部は骨髄からの栄養ではなく、末梢側血管からの供給に頼る。
  • 血液が血管内で固まる。
  • 骨年齢<活動量

症例数は少ないながらも、家族で発症しているケースもあるので、環境的要因や遺伝的要因も研究されています。

骨端軟骨がある程度硬化するまでは、変形する(骨頭がつぶれる)可能性があるので治療期間も長く、その後の経過を観察する期間も長期になります。

注意したい初期症状と進行のしかた

ペルテス病が進行すると壊死した部分が弱くなって、扁平化(つぶれる)する。

早期治療するためには、異常に気づいてあげる必要があります。
とはいっても、骨壊死している範囲が小さいうちは症状も出にくいです。

症状が軽いからといって、診察をためらうのではなく、ペルテス病を除外するつもりで専門医の診察を受けることも必要です。

初期に現れる症状

跛行(はこう)
初期のころから足をひきずる動作がみられます。
股関節の可動域制限からくることが多いです。
本人は気づかなくても、歩き方にも気を付けておきましょう。
痛み
股関節部分(鼠径部あたり)だけでなく、大腿部膝の痛みを訴えることもあります。
ジャンプしたり、足を着いたり、体重をかけたりするときの痛みも現れます。
運動制限
外転(足を広げる)や内旋(ひざを内側に)ができなくなったり、嫌がるそぶりがでます。
ときには外旋(あぐらのような)でも痛みが生じます。
屈曲(ひざを前に出す)や外転(足を広げる)する力が低下することも。

ペルテス病の難しい点があまり症状がなく、進行してしまうこと。
本人も遊んでいて楽しかったり、症状が長く続かなかったりすると、重い病気だと気づかないこともあるんです。

日ごろから歩き方や遊ぶ様子を観察しておきましょう。

進行の段階

進行ぐあいによって、4つの段階に分けられます。

滑膜炎期
骨壊死になる前に起きている炎症状態。
この時期だと、レントゲン画像上ではあまり変化がみられず、超音波やMRIで診断される。
硬化期(壊死期)
骨頭が壊死してつぶれてくるので、レントゲンではつぶれた骨部分が濃くみえるので硬化期(扁平化)といわれる。
分節期
壊死した部分が吸収されている時期。
骨があった部分が吸収されるのでレントゲンではその部分が薄くなってみえる(骨透亮像)。
血管も新生して新しい骨で修復されて始める時期でもあるので、この時期でも荷重(体重をかけること)は禁物。
修復期
骨が新生して硬化していく時期。
徐々に硬化して骨頭部が修復される。
骨頭部を球形に戻すためにも完全免荷(体重ををかけない)。

参考:池田医院ホームページ「ペルテス病」より


早期に詳しい専門医のもとへ

ペルテス病では荷重をかけない・外転・内旋の精を保つ装具が工夫されている

ペルテス病は阻血性骨壊死の範囲が軽微なうちに、さらに年齢が若ければ若いほど後遺症を発症する可能性は低くなります。

治療期間も3~5年もの長期を要することが多いので、ペルテス病に詳しい専門医のもとで早期に治療を始めることが重要。

ペルテス病になってしまうのは、活発に遊びまわりたい年代の子どもです。
ベッド上での長期の生活と装具の不自由さは、どちらも本人の精神的負担が大きいことが予想されます。

もちろんご家族への負担も大きいので、周囲の理解と協力が不可欠です。

似ている疾患と鑑別

大腿骨頭すべり症
大腿骨近位の骨端線部分が体重や衝撃によってズレてしまう病気。
ペルテス病よりもやや年齢が高い9~13歳で発症することが多い。
単純性股関節炎
明確な原因がなく、股関節が一過性に炎症を起こして痛みを発する。
3~10歳のペルテス病と同年代の男の子に多い。
レントゲン上では異常が見られないことが多い。
化膿性股関節炎
股関節内部に細菌感染が起こり、炎症を生じる。
創傷や風邪、尿路から侵入した細菌によって、関節内部が化膿。
長期にわたると関節を破壊してしまうことがある。

他にも若年性のリウマチや内分泌疾患での関節炎も頭に入れながら、X線、MRI、血液検査、臨床症状などをもとに診断されます。

完全免荷で治療が必要

ペルテス病では外転+内旋位を保つための装具があり、長期にわたることで精神的苦痛も大きい。

ペルテス病の治療は、大腿骨頭の扁平化した壊死部分の強度が回復するまでは体重をかけずに行われます。

治療のいちばんの目標は「骨頭がつぶれないようにする」こと。

とくに滑膜炎期と硬化期にあたる4~10か月は最も骨頭が扁平化しやすい時期です。

体重をかけなくても、筋肉によって軸圧(股関節に骨を押し付けるような力)が加わります。
これを防ぐために常時、足を引っ張る牽引も同時に行われることもあります。

基本的に体重をかけられないためにベッド上での生活になります。長期(12~36か月)にわたり、看護も必要になるので基本的には専門の病院に入院治療が選択されます。
(外来での治療は条件が限られることが多い)

保存療法(手術しない)

車いすやベッド上での生活
骨頭部への圧を避けるために少し寝たような姿勢。
装具なしできちんと座ることは難しい。
装具
コンテイメント療法(外転・内旋位)を維持する。
免荷装具・歩行装具などを使用

観血療法(手術)

「骨切り術」
つぶれてしまった骨頭部へ圧をかけないようにすでに硬化した部分で体重を受けられるようにする方法。
骨頭を回転させる。

保存療法・観血療法のどちらも、

壊死した骨頭部へ圧(荷重)をかけない!

ことを重点に置きます。

骨頭部の骨が硬化して固まる(骨が成人と同じようになる)までは治療が続けられます。

その後も変形性股関節症に発展することもあるので経過観察が必要です。

ペルテス病のまとめ

  1. 大腿骨近位部の骨端症
  2. 骨頭部の阻血性骨壊死によって、頂点が扁平化(つぶれる)
  3. 4~9歳の男の子に多い
  4. 原因は不明
  5. 日本では「まれ」な病気
  6. 股関節だけでなく膝や大腿部の痛みを訴える場合もある
  7. 3~5年の治療期間が必要
  8. 基本的には長期入院で治療を行う
  9. 専門の病院での治療を推奨
  10. 治療は骨頭へ圧をかけないのが目的
  11. 治療は精神的負担が大きい
  12. 家族への負担も大きいので周囲の理解・協力が必要

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