こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。
母趾球とは、あしうらの親指付け根のかかと側にあるふくらみ部分。
アメリカンフットボールやラグビーなどのコンタクトスポーツで生じやすい母趾球部分の組織損傷は、
ターフトゥ
と呼ばれます。
一度の強い外力で起きることもあれば、繰り返しの外力によっても生じることがあります。
今回の記事ではターフトゥの概要と原因、治療と気を付けることについて詳しく紹介していきます。
『「ターフトゥ」はMTP関節底側(母趾球)の損傷。反らせると痛い!』
このページでは「ターフトゥ」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
「ターフトゥ」ってなんだ?
英語で書くと「turf toe」。ターフは「芝」ですね。
第1中足趾節関節(母趾MTP関節)の底側靱帯(腱)の損傷
アメリカンフットボールの選手に多いけがです。
とくに、地面の硬い人工芝ー靴底が反りやすいシューズの組み合わせで生じやすいといわれています。
ターフトウの病態
第1中足骨と第1趾基節骨の関節(MTP関節:中足趾節関節)の底側(足裏側)にある組織が、過度の背屈(反る動き)によって損傷。
母趾のMTP関節部にはふたつの「種子骨」があります。
種子骨は通常時、中足骨頭部底側あたりにありますが、MTP関節が背屈されると関節軟骨のほうへと移動します。
このときにさらに強い力(背屈強制)が加わることで種子骨と基節骨の間にある組織(腱・靱帯・滑液包・蹠側板)が損傷。
場合によっては、第1中足骨頭部の関節軟骨や種子骨も一緒に損傷します。
種子骨は「短母趾屈筋腱」(たんぼしくっきんけん)と底面にある底側靱帯によって第1中足骨頭部底面におさえられていて、MTP関節(足指のつけ根)の屈伸に合わせて滑ることで摩擦を減らす役割をしています。
ターフトゥでは種子骨の遠位部分(基節骨寄り)の軟部組織が過伸展によって損傷します。
Plantar Plate(プランタープレート)ともいわれます。
母趾MTP関節の足底側を安定させる軟部組織(軟骨に近い成分)が「蹠側板」(せきそくばん)。
バレエなどでこの部分の損傷を「Plantar Plate Tear」ということもあります。
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症状
母趾球部分の腫脹(腫れ)
皮下出血斑
圧痛
運動痛(MTP関節背屈)
急性期の症状は、腫れと内出血と痛み。
とくに歩行時では母趾を反らすときの「踏み返し」で痛みが強くなります。
牽引力が加わり、損傷個所が裂ける方向に負担がかかるためです。
とくに完全に断裂していると、背屈したときに母趾の中足骨頭部が種子骨を圧迫して強い痛みを訴えます。
完全断裂の症例ではMTP関節に動揺性や不安定性がみられます。
受傷機転(負傷した経緯)から外反母趾や強剛母趾との鑑別はしやすいです。
ターフトゥの原因と生じる要因
ターフトゥの原因となるのはMTP関節の過伸展(過背屈)。
原因のほとんどがつま先立ち(MTP関節伸展)の状態で、上から強い力が働くことによるものです。
例
・ラグビーのスクラム時、押し合いでつぶれて他人の体重もかかる。
・アメフトで相手とぶつかって二人の体重がMTP関節へかかる。
切り返しやジャンプの着地が多い
踏ん張ることが多いスポーツ
コンタクトスポーツ
人工芝など硬い地面
アウトソール(靴底)が柔らかく反りやすいシューズ
関節が柔らかくMTP関節が背屈しやすい
スパイクやシューズが問題になることが多いものの、裸足で相手と接触するようなスポーツ(柔道や相撲など)でも発生頻度は高いです。
足裏の名前も覚えておこう。
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種子骨や関節軟骨損傷の合併にも注意!
ターフトゥでは種子骨より遠位部の軟部組織が損傷するものですが、種子骨や第一中足骨頭部の関節軟骨も損傷することがあります。
母趾球にある種子骨は内側と外側に2つあり、骨折や疲労骨折を起こすこともあるのでレントゲン診断も必要です。
また、第1中足骨頭部の骨折や骨頭部の関節軟骨(骨軟骨)損傷も疑う必要があるので必ず医師のいる整形外科で診断を受ける必要があります。
種子骨障害についてはこちらの記事で紹介しています。
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ターフトゥの治療は背屈制限が基本。
治療は、急性期には積極的にアイシングを行います。
同時に患部を安静にするためMTP関節が背屈しないように固定しましょう。
冷却・アイシングの効果とやり方
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安静と固定
固定期間は、
重度……4週間以上必要
テーピング(背屈制限)
非荷重パッド(母趾球に荷重しないように)
装具サポーター(背屈制限)
背屈しにくい靴
ステンレス副子
ターフトゥの治療では痛みがある状態で背屈させないこと中足骨頭部に圧をかけないことを優先します。
スポーツ選手では、靴底が反らないように硬いインソールを入れたり、「ロッカーボトム」のシューズを準備することもああります。
アウトソールが船底状になっていて、背屈せずに踏み返し(蹴りだし)できるようになっている靴。
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再発防止
きちんと固定して安静を保つことで損傷部位は再生しますが、新生した組織は伸張しにくい状態です。
必ず可動域を回復させるリハビリを行って再負傷させないようにしましょう。
また、スポーツ現場では、指導者や選手ともに地面・シューズ・プレー環境を再考して、再発防止に努めましょう。
母趾MTP関節まわりの痛み「まとめ」
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ターフトゥについてまとめ
○母趾MTP関節底側の軟部組織損傷
○過伸展(背屈)強制によって発症
○滑液包や関節包が損傷する場合もある
○種子骨や関節軟骨の損傷にも注意
○短母趾屈筋腱の損傷
○症状は腫脹や内出血、背屈時痛
○踏み返し時に強い痛みを生じる
○「柔らかい靴ー硬い地面」の組み合わせで起きやすい
○コンタクトスポーツ、切り返しの多いスポーツ
○つま先立ち(MTP背屈)で上方から圧がかかることで発症
○治療は背屈制限
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参考にさせていただいたサイト
古東整形外科内科 様 「Turf Toe(つま先立ちで踏ん張ると、 母趾の付け根が痛い!)」
Academic Accelerator 様 「足底板 Plantar Plate」
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