「前足根管症候群」深腓骨神経を圧迫、第1~2趾間のしびれが特徴

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

今回紹介する障害は、あまり聞いたことがない人も多いかもしれません。

前足根管症候群
(ぜんそくこんかんしょうこうぐん)

足首の前側がなんらかの理由で圧迫を受けることによって、その内側を通る神経が異常信号を発信。

これによってその神経支配領域で、知覚異常(痛みやしびれ、感覚麻痺)が起きるものです。

珍しい疾患ではありますが、誰にでも生じるリスクをはらんでいる前足根管症候群
詳しく紹介していきます。

前足根管症候群では下伸筋支帯の下を通る深腓骨神経が外部からの圧迫を受けることで、母趾~第2趾つけ根の知覚異常が起きる

「前足根管症候群」深腓骨神経を圧迫、第1~2趾間のしびれが特徴

※ご注意!
このページでは「前足根管症候群」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

前足根管症候群とは

前足根管は足首前側にある伸筋支帯と骨との間にある腱や神経血管を通すトンネル

足首の前側には、つま先をもち上げる方向に動く筋肉の腱、神経、血管が通る管(トンネル)があります。

足首前側が締め付けられることでこのトンネルが圧迫されることでおきる障害全般を「前足根管症候群」といいます。

で、その中で(腱・神経・血管のうち)ほとんどが神経圧迫による障害。
この記事では、「前足根管における深腓骨神経の圧迫」を前足根管症候群(下部深腓骨神経麻痺として解説しています。

前足根管の場所

足首前側を通る腱・神経・血管がバラバラに(こんがらがらない)ならないように2つのバンドで留められています。

上伸筋支帯(じょうしんきんしたい)
下伸筋支帯(かしんきんしたい)

このうち下伸筋支帯の内側のトンネルを前足根管といいます。

前足根管を通る腱
前脛骨筋腱(ぜんけいこつきんけん)
長趾伸筋腱(ちょうししんきんけん)
長母趾伸筋腱(ちょうぼししんきんけん)
第3腓骨筋腱(だいさんひこつきんけん)
※トンネル内では摩擦が起きないように腱鞘で保護されている。
前足根管を通る血管
前脛骨動脈(足背動脈)
前脛骨静脈
※前脛骨動脈は下伸筋支帯のすぐ下で足背動脈と外側足根動脈に別れる。
前足根管を通る神経
深腓骨神経(しんひこつしんけい)
総腓骨神経は腓骨頭を回るようにして身体の前面へでたあと、浅腓骨神経と深腓骨神経に別れる。足関節では浅腓骨神経は伸筋支帯の前面を、深腓骨神経は伸筋支帯の後ろを通る
※深腓骨神経
感覚神経(求心性神経)は第1~2趾(親指~人差し指)の間の一部分のみ。
ほとんどが運動線維(遠心性神経)。
前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋・第3腓骨筋の外在筋に加えて、短母趾伸筋・短趾伸筋の内在筋を動かす。
足首をひねって足首前側が腫れているときに疑うのは?
遠位前・後脛腓靭帯の損傷。足首の少し上の捻挫!

症状

前足根管症候群でしびれや知覚異常の出る範囲は母趾つけ根外側半分~第2趾内側半分の背側。

母趾の外側半分~第2趾(人差し指)内側半分の背側(甲側)に症状がみられます。

  • しびれ
  • 痛み
  • 知覚異常

加えて、圧迫を受ける部分(足首や足の甲)に腫れがでることも。

足首より下の深腓骨神経は、短趾伸筋短母趾伸筋を支配しています。
神経麻痺が起きると、足の親指~第4趾(薬指)を持ち上げる力が弱くなることがあります。(短指伸筋は第5趾にはつかない!)

ちなみに、外在筋(長趾伸筋・長母趾伸筋)は健在なので、足指の背屈が不能になるわけではありません

 

原因

靴ひもの締めすぎは前足根管症候群の原因となる

  1. 靴ひもの締めすぎ
  2. サンダルやハイヒールのバンド部分
  3. ガングリオン
  4. ギプスやサポーターなどの固定具

ヒールの高いサンダルは前足根管症候群が起きやすい

 

これらによる圧迫が原因になることがほとんどで、ハイアーチ(甲高)の人は、より圧迫を受けやすいです。

また、正座による圧迫が原因になることもあります。
(⇒正座と足のしびれ。 )

深腓骨神経が圧迫される実態

足部を走行する深腓骨神経は下伸筋支帯部分と短母趾伸筋腱の交差部分で圧迫を受けやすい

前足根管症候群による深腓骨神経麻痺は、「絞扼性神経障害」(こうやくせいしんけいしょうがい)のひとつ。

簡単にいうと神経が圧迫されているってこと。
神経圧迫が起きる好発ポイントは2か所あります。

下伸筋支帯のトンネル内赤い〇部分)
短母趾伸筋腱との交差部分青い〇部分)

外部からこのポイントが強く押され続けることで生じるのが、遠位部分での「深腓骨神経麻痺」。

圧迫が直接の原因による場合と圧迫による血流障害による場合が考えられます。
深腓骨神経が異常信号を発することで、その支配領域で起きる知覚異常が病態といえるでしょう。

治療

足部深腓骨神経麻痺の起きる原因は外部からの圧迫

似ている痛みに注意!

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腰部や臀部でなんらかの神経圧迫によるもの

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舟状骨は内側アーチをつくる骨。

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まずは、これらがないことを確認しましょう。

治療は、外的な要因を除去するだけで緩解(かんかい)することがほとんど。
神経圧迫が強い場合でも、圧迫を取り除いて1週ほどで症状がなくなります。

それでもとれない場合は、内部的な要因も考慮して専門医に相談しましょう。

パッドは余計に患部を圧迫しないように、中心をくり抜く。

前足根管症候群では神経の圧迫部分をくり抜いたパッドで圧を逃がす。神経の走行部分にも切り込みを入れるとよい

予防としては、シューズ紐の結び目を少しずらしたり、緩めるなどの工夫をしてみましょう。

スパイクはシューズのひもを締めすぎることで前足根管症候群が生じる

ちなみに、足首より上位での深腓骨神経麻痺では!
下垂足(つま先が持ち上がらない)
足指が持ち上がらない
第1~2趾間の知覚麻痺
が発生します。
〈坐骨神経痛や総腓骨神経麻痺などによる〉
参考ページ
古東整形外科・リウマチ科 様「前足根管症候群(深腓骨神経麻痺)ぜんそくこんかんしょうこうぐん

まとめ

前足根管症候群は外部要因を取り除くことで警戒することが多い

  • 第1~2趾間のしびれ・痛み・麻痺
  • 外的な圧迫力によるものがほとんど
  • 原因を除去することで症状もなくなる
  • パッドで圧を分散させることも有効

足の親指つけ根の疾患についてはこちらの記事もご覧ください。

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