「バニオン」(腱膜瘤)足の親指つけ根(MTP関節)のしこり(腫瘤)の正体は?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

足の親指の内側(正中線側)が大きくふくらんでしこりのようなものができてしまうことがあります。

外反母趾(がいはんぼし)の人によく見られますが、そうでない人にもできることがあります。

バニオン」とか「ブニオン」と呼ばれています。
人によって柔らかかったり、硬かったり、痛みがあったり、なかったり。

また、靴の選択に困ったり、ぶつけて擦れたり日常生活でも不便を強いられる人も多いです。

今回の記事では、第1中足趾節関節(足の親指つけ根)にできる腫瘤バニオン」について紹介していきます。

バニオンは第1中足趾節関節(MTP関節)内側の腫瘤で滑液包がふくらんだもの

「バニオン」(腱膜瘤)足の親指つけ根(MTP関節)のしこり(腫瘤)の正体は?

※ご注意!
このページでは「バニオン」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

バニオンは母趾(足の親指)つけ根にできる腫瘤

母趾中足趾節関節内側にできるのがバニオン(腱膜瘤)。小趾中足趾節関節外側にできるのがバニオネット

bunion

多くの人が「バニオン」と呼んでいますが、人によっては「ブニオン」と発音する人もいます。
足の親指(母趾)の中足趾節関節(MTP関節)の内側にできるしこり(腫瘤)です。(背側にまで及ぶ人も)

漢字で書くと「腱膜瘤」(けんまくりゅう)。

〈以下、この記事では「バニオン」で統一します。〉

※内側と外側
身体の正中線(まん中を通る線)寄りを「内側」。遠いほうを「外側」と呼ぶ。
足の親指などは間違えやすいので注意。

外反母趾の人に多く、小趾側(小指、第5趾)にもできる人がいます。小趾側のものは「バニオネットと呼ばれます。

正体は第1中足趾節関節の滑液包

母趾つけ根の滑液包の中に滑液が溜まり晴れたり、肥厚することでバニオンが形成される

「バニオン」は、ラテン語のbunio(蕪:カブ)を語源とし、第1中足趾節関節の内側または背側の軟部組織の限局性腫脹を指す。 原因として、滑液包の腫脹、外反母趾、痛風結節、ガングリオン、強剛母趾に伴う増殖性変化があげられる。
日本足の外科学会「bunionとbunionette」より引用

母趾MTP関節(第1中足趾節関節)内側には、「滑液包」(かつえきほう)があり、組織どうしの摩擦を防ぐ役割をしています。
また、MTP関節の関節包の内側は滑膜(かつまく)でできていて関節液(滑液)を産生しています。

滑液包や関節包、滑膜がなんらかの刺激(摩擦や圧迫)を受けると、滑液の産生が増加。滑液包は内容量が増大して腫脹。

摩擦や圧迫がさらに起きると滑液包や滑膜が損傷、再生を繰り返し、肥厚(ひこう)して分厚くなります。

増加した滑液は時間が経過すると水分が吸収されて硬くなることもあります。
分厚くなった滑液包は増殖性の再生を繰り返して大きく硬くなることも。

※正確にはバニオンとは呼びませんが、外反母趾によって第1中足骨頭部が内側に飛び出したようにみえるものもあります。

バニオンは内側側副靱帯や深横中足靱帯がゆるんで外反母趾が生じることでも起きる

柔らかい腫瘤
滑液包に滑液が増殖
滑液包や滑膜が肥厚
硬い腫瘤
滑液の水分が抜けてゼリー状になっている
滑液包や滑膜が増殖性変化をおこして癒着したもの
外反母趾により第1中足骨頭部が内側に飛び出している

母趾滑液包炎によって起きる症状

バニオンの症状
熱感・腫脹
MTP関節の底背屈制限
荷重時痛
母趾内側のしびれ・知覚障害

腫脹や熱感、運動痛は想像しやすいですが、特徴的なのはバニオンによって生じる神経圧迫で、母趾末節の内側にしびれや知覚障害が生じることです。

バニオンによって母趾内側に向かう知覚神経が圧迫されることによって母趾先の内側にしびれや知覚鈍麻を生じる

外反母趾に伴う多くのバニオンでは、第2中足骨頭部付近に胼胝(べんち)や鶏眼(けいがん)が生じることがあります。
胼胝はタコ。鶏眼はウオノメです。

外反母趾でできるバニオン(ブニオン)は滑液包炎

横アーチが消失することによって、第2中右足骨頭部へ荷重がかかるので、中足骨頭部痛を生じることもあります。

炎症が治まっていると疼痛(痛み)は感じなくなることも多いですが、靴が合わなかったり、こすれて傷ができたり日常で支障が生じることが多いです。

バニオンができる原因

原因
つま先の圧迫(ハイヒールやきつい靴下など)
母趾MTP関節内側が靴と擦れる
外傷(内側側副靱帯の損傷など)
内疾患(痛風、関節リウマチや糖尿病など)
第1中足骨頭部が大きい(靴などと擦れやすい)

バニオンは母趾MTP関節内側にある滑液包炎や増殖性変化によるものですが、その原因はさまざまです。

つま先の圧迫(締めつけ)や靴とのこすれ
母趾の外転強制

母趾MTP関節内側組織(側副靱帯や滑膜)の損傷

滑液の増加・滑液包の肥厚、炎症

再生と増殖性変化の繰り返し

バニオン形成

母趾の外転強制や圧迫、外反母趾によって母愛MTP関節内側の靱帯に損傷を生じ、滑液包や滑膜の炎症を生じる。その結果バニオンが形成される

とくに外反母趾に多い理由
○第1中足骨の回外によって滑液包の摩擦が生じる
○基節骨が外転することで内側側副靱帯が伸張される
○結合組織(靱帯や関節包など)がもろくなりやすい

MTP関節の捻挫などの外傷や痛風発作による炎症によっても内側の滑液包に炎症を生じることがあり、バニオンへと移行していくことがあります。

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第1中足骨頭部~第1MTP関節で起きる他の痛みとの鑑別

同じ母趾MTP関節の痛みでも早急に対処すべきものと区別する必要があります。
とくに痛風による関節炎や化膿性(細菌感染による)関節炎の場合は重篤化する恐れもあるので早めに医師による診断が必要です。

バニオンは内側組織の炎症の結果として生じる腫瘤のことであり、他の疾患と合併したり、炎症の結果として生じたりすることを理解しておきましょう。

○外傷による組織損傷
受傷機転から判断します。

○細菌感染による関節炎
痛風による関節炎
急性の疼痛・腫脹・発赤・発熱
場合によっては穿刺(せんし)して貯留液を検査することがあります。

○関節リウマチなどの関節炎
多数の関節痛で急性に疼痛が生じます。
血液検査や臨床症状などから総合的に診断されます。

○強剛母趾
MTP関節の背側(甲側)に疼痛があり、骨棘を生じることがあります。

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○ターフトゥ・種子骨障害
MTP関節底側(足裏側)部分の痛みです。
患部を圧迫すると強い痛みがあります。

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治療と自分でできる対策

靴との摩擦や自分の足との衝突を避けるためにシリコンなどでできたパッドが実用になることもある

一度増殖性の変化を起こして、肥厚した滑液包や軟部組織はもとに戻らないことがあります。
ただし、痛みがないからといってそのまま放置していると、再度炎症を起こしたり、母趾(親指)の変形が進んでしまうことがあります。

自分でできる対策もあるので自分に合う方法を見つけましょう。

病院での治療

病院では急性期で痛みの強いものに対して、抗炎症剤や痛み止めを用いることが多いです。

同時に装具や足底挿板の処方も行われることもあります。
難治性のものではステロイド注射で炎症を抑制させたり、外反母趾で日常生活にも困難を伴うようなものでは手術が選択されることもあります。

装具による対策

硬性の副子(ステー)をバンドで止めて強制するものもある

疼痛を伴わなかったり、日常生活に支障をきたさなかったりするものでは、市販のものを利用する方法もあります。

テーピング
自分で母趾を矯正するように貼ることで、緩んだ内側靱帯の再生を待つ方法。
皮膚に負担をかけるので、期間や頻度に制限があります。

パッド
足指の間に挟んで、母趾をまっすぐにするものやバニオンを包むようにして摩擦から守るタイプのものもあります。

矯正用サポーター
バンドで引っ張るタイプやステー(副子)で矯正するタイプなどいろいろな商品があります。

外反母趾では踵骨が外返しされて、第一中足骨も外返し。ヒールと土踏まずをサポートするインソールを使用する

足底板・インソール
外反母趾の場合には、踵骨(しょうこつ:かかと)が倒れることが原因になることがあります。
踵骨の外返し(足底が外向き)を防ぐために土踏まず部分をサポート、横アーチを保護するサポートのあるインソールや装具も重要です。

自分でやっておくこと

軽い症状の場合は、つま先の締めつけを中止して母趾を保護していくことで炎症を抑えることができます。
こすれるようであれば、シリコンのパッドで患部を保護するような製品も販売されています。

重度の場合には急性期で熱感があるときにはアイシング(⇒アイシングやり方)と固定によって患部を安静に保ちます。
必要に応じて固定や患部の保護も行いましょう。

矯正用のサポーターやバンドは、アーチサポート、ヒールサポートを併用することで進行を予防、改善させる効果が期待できます。

炎症や痛みが消失してから体操を行います。

ホーマン体操

外反母趾の運動。ホーマン体操

両母趾に軽めのゴムやチューブをかけて、かかとを軸に左右に開くことを繰り返します。

足裏の体操

タオルギャザーは足指・足裏のトレーニング

注意点
外反母趾がある場合、そのまま足裏の体操をすると悪化させる恐れがあります。(足底の筋緊張が母趾を外転させる影響するため)
やる場合はアーチサポートを着けて、足部を正しい位置に戻しながら行っておくと安心です。

バニオンについてまとめ

大きくなったバニオンは靴や自分の足とぶつかってケガをしやすくなるので注意が必要

○バニオンは母趾つけ根(MTP関節)内側の腫瘤
○滑液包炎による腫れや増殖性変性によるもの
○外反母趾に伴うことが多い
○ほかの母趾MTP関節疾患と区別する。
○外傷や関節リウマチ、痛風発作から移行する場合もある
○つま先の締めつけや前方からの圧迫も原因となる
○たくさんの装具が開発され、市販されている

参考文献・参考ページ
日本足の外科学会「足のコラム
MSDマニュアル「バニオン

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