こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。
子どもは外遊び、スポーツなどなど活発に動き回ります。
あまり動かない大人よりも日々の活動量が多くなっているはず。
活動量や運動量が多ければ、ケガをする機会も多いことでしょう。
子どものケガで多いのは「骨折」。
骨折というと、骨がポキッと完全に折れてしまっているのを想像しがちですが、子どもの骨折ではそうならないことも多いのです。
小児の骨は成人と違って特有の特徴があります。
したがって骨折も成人と違った特徴があるんです。
今回は小児骨折の特徴について紹介していきましょう。
小児というと「小学生まで」のイメージがありますが、今回の記事では「生まれてから骨端線が閉鎖する(17歳ごろ)まで」を想定しています。
『小児の骨折3つの特徴。子ども特有の骨折型と気をつけること』
このページでは「小児の骨折」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
子どもの骨折の3つの特徴
②自家矯正力・治癒能力が旺盛
③成長障害の可能性
小児の骨は成人の骨と違う性質があります。
骨の質が変わると骨折のしかたがずいぶんと違うんです。
その特徴は大きく分けて全部で3つ。ひとつずつみていきましょう。
①柔軟性があり不全骨折が多い
子どもの骨は成人よりもカルシウムなどの無機質の沈着が少なく(骨密度が低い)、水分が多くなっています
長管骨(細長い四肢の骨)の両端部分には「骨端軟骨」(成長軟骨ともいう)があるのと、骨を包む骨膜が分厚いという特徴があります。
簡単にいうと、小児の骨は有機物と水分が多いので、
しなやか!
(柔軟性がある)
ってこと。
柔軟な骨が骨折するときには、大人のようにポキッと折れる完全骨折ではなく、不全骨折(ふぜんこっせつ)が多いのです。
子どもの骨は、骨が大きくなる速度が速いため石灰沈着が追い付かず、一時的に骨密度が低下する状態
骨組織の損傷があるが、連続性が保たれている状態。
完全に離断しているもの以外を不全骨折と呼ぶ。
巷でよくいわれる「ヒビ」も不全骨折。
②自家矯正力・治癒能力が旺盛
子どもの骨は成長するために、細胞の新陳代謝が活発です。
年齢が低ければ低いほど損傷の再生能力が高く、もとに戻ろうとする能力があります。
本来の形に戻ろうとする力を
自家矯正力
(リモデリング)
といいます。
若ければ若いほど細胞分裂の速度が速いので、骨癒合(こつゆごう)する期間も短くなります。
腕や脚が骨折によって多少曲がってしまっても、骨癒合していく過程で矯正されることが多いのです。
自家矯正力と骨癒合の能力が高いことで、固定強度や固定期間も少なくて済みます。
これによって、骨折の合併症である「関節拘縮」や「筋力低下」も重度にならないことが多いのです。
・・・かといって、自家矯正力も限界があるので注意が必要。
大幅に転位してしまっているもの(軸が20°以上ずれている…など)は、きちんと整復(元の位置に戻して固定)しないと変形治癒の可能性があります。
自家矯正力は転位方向によっても違いがあります。
屈曲・伸展や側方転位には強い矯正力を示すものの、回旋転位(ねじれている)の骨折では自家矯正力が働きにくいのです。
③成長障害の可能性
子どもの四肢(腕や手、脚や足部)の長管骨(細長い骨)の両端には「骨端軟骨」(成長軟骨)が存在しています。
硬化した骨部分と柔軟性のある軟骨部分は外力に対する強度が違うので、その部分で損傷しやすい特徴があります。
子どもの長管骨の縦軸の伸長は、骨端軟骨の内部に「骨端核」という硬化した骨部分があり、その骨部分が広がることで伸びていきます。
この骨端核が損傷してしまうと成長障害が生じてしまうことがあります。
成長障害とは、縦軸の伸長が低下する「低成長」、伸びすぎてしまう「過成長」。
骨の一部分だけ伸びて、他の部分が低成長を示すと骨が曲がってしまう障害を遺すこともあります。
ただし成長障害は年数が経てから明らかになることが多いので、骨端部での骨折は慎重に治療して、骨癒合したあとも観察していく必要があります。
見逃せない!子どもの骨折の可能性とサイン(徴候)
〇患肢(ケガした手足)を使わない
〇変形や手足の向きがおかしい
〇触ると泣く・嫌がる
〇内出血や腫れが激しい
〇力が入らない
〇歩き方や姿勢が通常と違う
言語ではっきりと痛みや不便さを伝えられない乳児期~幼児期のお子さまの場合、周囲の大人が気づいてあげる必要があります。
受傷の場面を直接見ていた場合には気づきやすいのですが、目を離した時に転倒や転落している場合は初期対応が遅れてしまう可能性がありますよね。
とくに乳幼児の子は骨膜が分厚く、神経発達も未熟なので、骨折していても動かさなければ痛みをあまり感じていないこともあります。
普段と違った様子があれば小児科や整形外科を受診しましょう。
小児特有の骨折型
小児の骨折が多い理由として
〇筋と神経の伝達が未発達(転倒や転落しやすい)
〇骨密度が低い
が挙げられます。
前述したように小児の骨には柔軟性があって「しなやか」なのが特徴。
しなやかな小児の骨は特有の骨折型を示すことがあります。
膨隆骨折(竹節状骨折)
骨折線は示さないか、または不明瞭で長軸方向に押しつぶされたような不全骨折。
橈骨遠位(前腕部の手首近く)で好発。
植物の竹の節(ふし)に似ていることから「竹節状骨折」とも呼ばれています。
若木骨折
若いしなやかな枝を折り曲げたような骨折。
いろんな縦軸と横軸に亀裂を生じながら折れ曲がるが、一部は連続性が保たれている不全骨折。
弯曲骨折
骨折線はみられないが、針金が曲がるように変形している状態。
内部の組織が損傷しているので後日、仮骨や新生した骨が確認できます。
わずかな変形の弯曲骨折では、受傷直後見逃されてしまうこともあります。
骨端線離開
骨端部で、骨端軟骨と硬化した骨幹部の境(骨端線)で生じる損傷。外力によるものと自家筋力や体重によるものがあります。
骨端軟骨と骨幹部がズレてしまっている状態。
成長障害につながることがあるので成長を見守る必要があります。
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小児骨折の傾向
10代以降は下肢の疲労骨折も増加
靭帯断裂よりも骨折になりやすい
乳児や幼児~小学生までは上半身とくに腕~前腕~手の骨折が多く、成長するにしたがって下半身の骨折が増えていきます。
幼児期~小学生の骨折は上肢に多い
上腕骨顆上骨折(肘の上部)
橈骨遠位骨折(手首)
鎖骨骨折
指の剥離骨折(裂離骨折)
スポーツや遊びなどで活動量が活発になることが多いので、転倒や転落の事故によって腕や手をついて骨折することが多いです。
10代以降は下肢の疲労骨折も注意
10代になるとスポーツ活動をしている人が増えてきて、競技レベルによっては練習強度も増加します。
とくに中学生や高校生の入学時には練習強度や頻度が急に上がることが多いので、無理をして疲労骨折を引き起こしてしまうことが多々あります。
原因になる運動にもよりますが、疲労骨折は上半身よりも下半身に起きやすいのが特徴です。
スポーツ選手はどうしても練習や競技を休みたくないものです。周囲の大人が、痛みを気軽に報告できるような環境づくりを心がけましょう。
疲労骨折とは?
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靭帯断裂よりも骨折になりやすい
小児は骨の成長が速いので、石灰沈着が追いつかずに骨密度が低いことがあります。
靭帯や筋肉も柔らかく伸張するので、関節に無理な外力が加わったときに骨の方が損傷しやすい特徴があります。
もちろん靭帯損傷がないわけではありませんが、靭帯が完全に断裂することはまれで、多くが「裂離骨折」(剥離骨折)や不全骨折になります。
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症状が治まるのが早い
受傷した直後~翌日にかけて、発熱することがあります。(37℃台の微熱のことが多い。個人差あり)
この熱は「吸収熱」といい、損傷した組織を分解・吸収するために生じる炎症によるものです。
この吸収熱は成人よりも小児の方がはっきりとでやすいです。
受傷後1~2週で仮骨(かこつ)が骨折箇所を囲むように生成されるので、患部がグラつかず痛みがかなり減少します。
小児は骨癒合ももちろん速いのですが、この損傷組織の吸収⇒仮骨形成が速いので急性症状が緩和しやすい特徴があるんです。
小児の骨折で気をつけること
とくに小さい子供の場合に注意することがあります。
小児の骨折は成人のものとはちょっと違った痛みの訴え方をしたり、ケガした場所が分かりにくかったりします。
これらは骨折が見逃される原因にもなりますので、周囲の大人は頭にいれておきたいですね。
痛みをうまく伝えられない
言語がまだ発達しないうちは、痛みの場所や程度をうまく伝えられないことがあります。
行動や姿勢を周囲の大人がじっくり観察してあげましょう。
違う場所に痛みを訴える
小児のうちは脳と神経が未発達の場合があります。動きがぎこちなかったり、少々乱暴になってしまうのはこのためです。
脳が痛みの場所をうまく認識できておらず、違う場所に痛みを感じてしまうこともあります。
腫れが出にくかったり、分かりにくかったり
小さい子供の場合、腫れや内出血が分かりにくいことも多いです。ケガをした場合は外見だけで判断するのは危険です。
骨折線が分かりにくい
子どもの骨には、骨端線があったり、成人と骨の形が違ったりします。
また、柔軟性のある骨のために膨隆骨折や弯曲骨折のように骨折線のはっきりしないものもあるので要注意です。
骨端軟骨(成長軟骨)の損傷
骨端線閉鎖の時期は、女性で16~17歳、男性で17~18歳ごろ。繰り返しの動作や強い外力によって起きる骨端線離開や骨端核の損傷は成長障害が生じる恐れがあるケガです。
また、骨端軟骨の破壊によって「骨端症」を引き起こすこともあります。
骨端症はなぜ起きる?
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安静が難しいことも
ある程度ケガの重大性を理解できる年齢になるまでは、安静にさせるのも難しいこともあります。
多少動いても大丈夫なように固定も考える必要があります。
小児骨折まとめ
- 骨に柔軟性があるので不全骨折が多い
- 靭帯断裂よりも剥離骨折になりやすい
- 自家矯正力が高く、骨癒合も速い
- 骨端核が損傷すると成長障害の恐れもある
- 小児骨折特有の不全骨折が多い
- 骨端線離開(こったんせんりかい)も生じる
- 患者の訴えと違う場所を受傷している場合もある
- 上肢に多い
- 回旋転位は自家矯正力が働きにくい
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