バランス能力って?姿勢を保つしくみとは?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

日常生活をおくる上で大切な能力。バランス能力
この能力が低下してくると生活の中で転倒しやすくなったり、いろいろな関節に負担が強くなって痛みが生じやすくなったりします。

「バランス能力」というと立っているときや歩いているときを想像しやすいですが、座るときや座位から立ち上がるときにも重要です。

日常生活のなかではそれほど意識されない要素ですが、スポーツや運動の現場、医療のリハビリの現場では大切な能力なんです。

今回の記事では「バランス能力」とその仕組みについて紹介していきましょう。

バランス能力には性的バランスと動的バランスがあり、不安定な足場で重心が支持基底面から逸脱したときに動きや姿勢を維持したり、回復する能力のこと

バランス能力って?姿勢を保つしくみとは?

※ご注意!
このページでは「バランス能力」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

バランス機能はどんな能力?

バランス能力
静止姿勢を安定、動作姿勢を保持、重心が不安定な状態から回復させる能力。

さまざまな姿勢を保ったり、動きを安定させたりする能力です。
静的バランス能力(静止状態を維持する能力)と動的バランス能力(動作を安定させる、姿勢を回復させる能力)のふたつがあります。

日常でも常に使われている力で、手を伸ばしたり、身体を曲げたりする簡単な動作のときにも使われています。

バランスは身体の重心と関係

片足立ちテスト

わたしたちの体のバランス能力は、「重心」と深いかかわりをもちます。
重心とは身体の質量の中心となる点のことで、立っている状態ではおへそのちょっと下あたりにあります。

歩行時にはこの重心が左右・上下・前後に移動しています。また、イスから立ち上げる時や座るときにも前方や下方へ移動しているんです。

姿勢の変更は重心の位置をずらします。重心が動くことで転倒や姿勢の維持が困難になり、バランスを喪失することになるんです。

よく体幹部の筋力が強いと体がぶれないといいますが、このぶれない体幹こそが重心の安定性につながるんですね。

重心の安定性
支持基底面が広がれば安定性↑
重心の高さが低ければ安定性↑
(安定性を失うのは重心が支持基底面が逸脱したとき。)

重心と支持基底面

支持基底面は地面についた部分の外周を囲む面積。杖を突くだけでも転倒の予防になる
支持基底面(しじきていめん)
身体の底面(床や地面)に接している場所(立位ではあしうら、座位では座面)の外周を囲む面のこと。

バランスを崩すとは、身体の重心が支持基底面から外れようとしている状態
支持基底面の面積が広いほど、重心が外れにくくなるので安定しやすくなるんですね。

バランス能力が高い人は、重心が支持基底面から逸脱したときに回復する能力が強いってわけです。

参考;椅子からの立ち上がりにおける高齢者のバランス調節 : 重心と支持基底面、関節モーメントの関係から 日本理学療法士協会 武田 涼子, 山本 澄子, 市江 雅芳

 

バランスを保つしくみ

バランスを崩すと感覚器が検知。脊髄へと情報を送る。脳は運動神経を介して骨格筋に修正を命じる。緊急性の高いときは脳の指令を待たずに運動神経が骨格筋を動かす脊髄反射が行われることもある

身体のバランスを維持する機能には、複数の器官が関わっています。それぞれの器官が連携して姿勢と環境の情報を脳に伝え、脳から骨格筋に指令を出すことでバランスを保つ役割をしているんですね。

①感覚器が姿勢の状態を中枢へ伝える

②中枢神経の役割(下位中枢・上位中枢)

③骨格筋が反応して姿勢を維持・回復

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姿勢情報のセンサーである感覚器

姿勢や環境の情報を感知するセンサー
視覚
体性感覚(圧覚・深部感覚)
平衡感覚

バランスに関わるおもな受容器(センサー)は3つに分けられます。

視覚
視覚情報は身体の状態を理解する手助けになっています。
じつは視覚だけでなく聴覚(音を聞く)もバランス維持に利用されています。

体性感覚
体性感覚は足裏など底面と接する表層の圧覚(圧力を感じる)や筋の伸び・腱の張力・関節の角度を感じる深部感覚(しんぶかんかく)。
身体の動きを脳に伝える役割をします。

体性感覚を検知する感覚受容器とは?

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平衡感覚(へいこうかんかく)
前庭器官(ぜんていきかん)といわれる内耳(耳の奥のほう)にあります。迷路状になっていて、中にあるリンパ液と砂状のもの、石(耳石)の動きによって、重力や回転、速度を感知
蝸牛(かぎゅう)・三半規管・球形嚢と卵形嚢からできています。

感覚器・中枢神経・骨格筋に情報を伝える末梢神経

それぞれの感覚器で得られた情報は身体中に張り巡らされた末梢神経によって、脊髄(中枢神経)に伝えられます。
また、脳から出た指令も脊髄を通って末梢神経(運動神経)に伝えられ、骨格筋が動きます。

情報を処理して指令を出す中枢神経

情報伝達は感覚器→脊髄→脳の順、指令はその逆に伝わります。
一部は「脊髄反射」(せきずいはんしゃ)として、脳まで伝わらずに脊髄がそのまま骨格筋へ反応させることもあります。

姿勢を維持・回復させる骨格筋

脳や脊髄の命令を受けて骨格筋はバランスを保つために働きます。
複数の筋肉が共同して働く(筋の協調性)ことで姿勢を維持・回復させます。
立位姿勢を保つバランスでは、おもに体幹、股関節、膝、足首まわりの筋肉が使われています。

ケガの予防や転倒防止に役立つ!

バランス能力を維持・増進させることは

ケガの予防
転倒防止
ケガや病気のリハビリ
運動パフォーマンス向上

に役立ちます。

バランス能力を高めるためには、トレーニングが有効です。
比較的安全に、簡単にできるものから難易度の高いものまであるので自分の能力に合わせてレベルアップしていきましょう。

また、捻挫や肉離れなどのケガによってバランス感覚が鈍ることがあります。
とくに筋や腱・靱帯にある深部感覚と脳につながる末梢神経の伝達がうまくいかなくなることが多いようです。

病気での安静による運動不足でも感覚受容器や骨格筋、神経伝達が鈍くなるので、これらを回復させるリハビリとしてもバランストレーニングは取り入れられます。

バランス能力を向上させるトレーニングとは?

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まとめ

○バランス能力とは静止姿勢や動的姿勢を維持、または崩れた位置から回復する力のこと。
○重心が支持基底面から逸脱することでバランスは崩れる。
○視覚・平衡感覚・体性感覚の情報が中枢神経に伝わる。
○脊髄で姿勢反射(脳を経過しない動き)することもある。
○脳からの指令が運動神経に伝わることで骨格筋が反応する。
○転倒防止やケガの予防、リハビリ、パフォーマンスアップに利用される。

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