こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。
大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)は、大腿部というか、殿部というか、骨盤の骨(腸骨)の外側にある筋肉。
一般的にあまり知られていないですが、意外に重要な役割をしています。
大腿骨頭を骨盤に固定したり、歩行時に姿勢を調整したり。
働きが重要なだけに、大腿筋膜張筋に関連する疾患(障害)もスポーツ選手には多くみられます。
今回の記事では、大腿筋膜張筋についての情報とストレッチ、トレーニングについても紹介していきましょう。
『大腿筋膜張筋の情報』
このページでは「大腿筋膜張筋」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
起始と停止、神経支配
筋肉は起始(近位にある付着部)と停止(遠位にある付着部)が近づくことで力を発揮します。
起始と停止は骨の付着部分。筋肉は骨格の運動に関わっています。
大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)は、股関節と膝関節をまたぐ「二関節筋」です。
上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく:ASIS)
腸骨稜(ちょうこつりょう)の側面(後面の前方)
脛骨外側顆(けいこつがいそくか)のガーディ結節。
上殿神経(じょうでんしんけい)━L4~S1
大腿筋膜張筋は、小さくて薄い筋肉。
大殿筋(だいでんきん)と合体しながら、大腿筋膜を形成、下部では「腸脛靭帯」(ちょうけいじんたい)という腱組織になっています。
文字通り大腿筋膜を引っ張り、緊張させる仕事をしています。
(大腿筋膜が緩んでいると筋肉がうまく収縮できずに力が発揮できない)
大腿筋膜張筋の作用
大腿筋膜張筋は関節運動への作用もあります。
外転・屈曲・内旋
下肢(脚)を外側に持ち上げるのが外転。
下肢(脚)を前に持ち上げるのが屈曲。
膝を内側に向けるような動きが内旋。
屈曲・下腿外旋
膝を曲げていく動きが屈曲ですが、停止部が脛骨の前側にあるため、屈曲の力は深めの角度で効いてきます。
さらに、脛骨を外旋させる動きもあります。
脛骨の外側を引っ張る作用があるためです。
おもに鵞足(脛骨の内側)に停止する筋と拮抗して、内旋を防ぐために使われています。
脛骨ってどんな形?どの筋肉が付着する?
こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。 脛骨(けいこつ)は、下腿部(太ももより下側)にある2本の骨のうち、内側にある「スネ」の骨。 「向う脛」(むこうずね)ともいわれますね。 手で書くときには、「月」(にくづき)に「圣」と書[…]
調節・制御の働き
大腿筋膜張筋は薄くて小さい筋肉なので、主働筋として働くのではなく、他の筋と協力する補助筋としての役割が大きいです。
その作用は、姿勢や動きの制御・調節といった働き。
- 大腿骨頭を骨盤臼蓋に押しつける股関節の安定化
- 膝の内反(X脚)を防ぐ
- 立脚側(立ち足)で骨盤が傾く、左右のブレを防ぐ
- 遊脚側では、股関節外旋(腸腰筋の作用)を防ぎ、足をまっすぐ前に出す
ちなみに大腿筋膜張筋がつながる大腿筋膜や腸脛靭帯は、手術のときに人体組織の再建や代替に利用されます。
”【日本胸部外科学会速報】 自己大腿筋膜を用いる胸部外科手術、低コストで術後合併症を予防”
鈴木氏らは、患者自身の大腿筋膜が、大きさや強度、生体適合性からみて補強剤に適している点に着目。動物実験でPTFEよりも早期から周辺組織と一体化し、癒合が早く、縫合部の張力も高いことを確認、臨床応用に踏み切った。これまで67人の患者に対し、肺実質や胸壁の補強、心膜や横隔膜の再建、人工血管の被膜に用いたが、感染などの合併症や、補強部からの空気漏れなどのトラブルは1例も発生していない。
『【日本胸部外科学会速報】 自己大腿筋膜を用いる胸部外科手術、低コストで術後合併症を予防』より引用
関連する痛み
姿勢や動きの制御を行っている大腿筋膜張筋は、過緊張(オーバーユース)や弱体化することでスポーツ障害や関節の痛みにつながることがあります。
〇弾発股
「ばね股」「スナッピングヒップ」ともいわれる。
大腿筋膜張筋が大転子(大腿骨のでっぱり)をはじくことで、ゴリッとした感覚が出る。
こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。 歩いたり、走ったり、身体の向きを変えたりするときに、股関節あたりに軽い衝撃と「音」が鳴るようなことはありませんか? 音が鳴らなくても「ひっかかり感」やこすれたような感じが出ることもありま[…]
〇腸脛靭帯炎
「腸脛靭帯症候群」や「ランナー膝」ともいわれる。
膝の屈伸を繰り返すことで、腸脛靭帯が大腿骨外側上顆(膝上外側のでっぱり)と摩擦を起こすスポーツ障害
腸脛靭帯炎について詳しく知りたい人はこちらも参考にしてください。
こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。 スポーツやランニングをしていると、膝の外側が痛くなったことはありませんか? 膝の外側には、「腸脛靭帯」(ちょうけいじんたい)という、骨盤から始まって、ひざのすぐ下にある「脛骨」(けいこつ[…]
〇外反膝
いわゆる「O脚」。
鵞足(がそく)側の筋肉との拮抗が破れて、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の緊張が強くなると膝関節を外反させる。
逆に弱くなって鵞足側の筋肉が過緊張になると「内反膝」(X脚)。
ストレッチ&鍛える
大腿筋膜張筋は動きや姿勢の制御をおこなう筋肉なので、萎縮や過緊張で障害が起こることがあります。
また、拮抗して動きを調節する筋肉も多いので、バランスをとるために下半身全体も一緒にケアする必要があります。
大腿筋膜張筋をほぐす!
大腿筋膜張筋を鍛える!
まとめ
- 股関節への作用は外転・屈曲・内旋
- 膝関節への作用は屈曲・外旋
- 支配神経は上殿神経
- 上前腸骨棘から脛骨外側顆に停止
- 他の筋肉と協力して動きの調節をする
- 大腿筋膜を緊張させる。
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