「交通事故によるむち打ち症」になったときにやっておくことは?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

むち打ち症は、交通事故とくに追突事故で多い、首の痛みのことを指します。
骨や脊髄に損傷のないものがむち打ち症と呼ばれている)

もちろん追突によるものだけでなく、側面からや前方からの衝突によっても起きることがあります。

首には、狭い範囲に大事な組織が多く配置されているのでいろいろな症状が出ます。

さらに頭部の重みによって日常でも負荷が大きくかかる場所です。
治療期間も長期になることも。

交通事故によるむち打ち症では、自賠責保険や任意保険での治療費の支払いになることが多いので、「手続き関係」が必要になります。

今回は交通事故による「むち打ち症」での治療の流れについて詳しく紹介していきましょう。

交通事故によるむち打ち症では不意な衝突だと軽度の衝撃でも起きることがある

「交通事故によるむち打ち症」になったときにやっておくことは?

※ご注意!
このページでは「交通事故でのむち打ち症の対応」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

むち打ち症って?

急激かつ過度に頸が後屈・前屈・側屈することで軟部組織が損傷したり、神経がダメージを受けるのがむち打ち症

むち打ち症は、衝突によって頭部が揺さぶられることで、首やその周囲に痛みが生じるケガで、頚椎(首の骨)や脊髄(脳からつながる中枢神経)に損傷のないもの。

追突事故によるイメージが強いですが、前方や側方からの衝突でも生じることがあります。

また、軽度の衝撃でも不意討ち(衝突するまで気づいていなかった場合)によるものであれば、むち打ち症を引き起こします。

首には頭を支える筋肉と腕や全身に向かう神経が密集しているため、全身にさまざまな症状が現れることがあるのです。

また、事故直後は症状を感じずに、時間が経過してからでることもあるのが特徴。

むち打ち症について詳しくは、こちらの記事もご一緒に読んでみてください。

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必ず医療機関を受診する。

 

頚部コルセットは可動を制限。顎を乗せることで頭部の重みの負荷を減らせる。ただし精神的苦痛も大きい

事故後、数日してからの痛みでも必ず医療機関を受診しましょう。
その場合に行くのは、できれば整形外科

※後から病院にかかる場合は、警察への届け出も必要。
「人身事故」として扱ってもらう必要があるため。

検査機器や綿密な画像診断が必要なこともあるので、できるだけ専門の医師に診てもらうことをおすすめします。

医療機関を受診する理由は、

  • 緊急性の高い傷病かどうかを判断
  • 治療や保証に医学的根拠(医師の診断)が必要

症状が出たら、「早め」に受診すべき理由は、事故との因果関係が不明瞭になってしまうためでもあります。

長期間にわたる治療が必要になった場合には、治療費も高額になることが予想されます。
事故との因果関係が説明できないと治療費が出ないこともあるんです。

医療機関を受診するときに「伝えること」とは?

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緊急性の高い傷病かどうかを判断

側方から見た頚椎。神経根、末梢神経、神経節、椎間板が密集しているのが分かる

緊急性の高い傷病とは、

脊髄損傷(せきずいそんしょう)
頚椎骨折(けいついこっせつ)
頭部の障害(脳しんとうや血管損傷)

交通事故によるむち打ち症では、頭部が大きく揺さぶられることによって首の組織を損傷します。

これらの傷病だった場合には、安静と早い処置が必要になるので、調べておく必要があるのです。

自分で「たいしたことない」と思っても、これらを否定するためにも医師の診断が必要です。

医学的根拠が必要

医師の診断は治療費の支払いや保障にも必要です。
交通事故によるむち打ち症の場合は、ほとんどの場合で自賠責保険(じばいせきほけん、強制保険)の適用になります。
※一部適用されないものもある!

治療費の保障は、医学的根拠に基づいた「必要かつ相当な治療」に対して支払われるものです。

とくにむち打ち症の場合は、自覚症状が中心で、他覚所見(たかくしょけん)に乏しいのが特徴。

※他覚所見
自分だけが感じるのが自覚症状。他人にもわかるような症状は他覚所見。血圧や体温、画像所見、可動域制限など客観的に分かる症状のこと。

整形外科では、画像所見に異常はみられなくても、神経学的テストが行われます。

医師の診断証があることで、自分も相手方も安心して治療を進めることができるのです。

頚部(首)の痛みは治療が長引きやすい

前方からみた頚椎。

首の痛みが長期になりやすい理由は、

  • 首には狭い範囲に神経血管、筋肉が密集
  • 頭は重く、骨が支える面積が小さい
  • 日常でも負担がかかりやすい

むち打ち症状は、自律神経による症状や肩こり、首コリの症状、神経根症状が主です。

周囲の人に苦痛を理解をされにくい特徴があるんです。
さらに、明確な回復期(急激によくなる時期)がないので、通常の痛みに加えて、不安による苦痛もあります。

周囲の人に理解がないと、精神的な苦痛も大きくなるため、そちらのケアも必要になることがあります。

自分の症状を話して、理解してもらえる味方を見つけておくことも治療のひとつだといえるでしょう。

※事務・交渉手続きの負担も大きい!?
交通事故では、自分の治療に加えて、事務手続きや交渉もストレスのもとになっているケースも多いです。
専門家(弁護士など)に相談することも検討しましょう。
専門家が行うことで交渉や手続きがスムーズになり、ストレスも軽減できることもあります。
頚肋(けいろく)ってどこの骨?
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首と周囲の筋緊張をゆるめる!

追突事故では過度な後屈と前屈によって頭部を支えるために周囲の筋肉が緊張する

急性期では「安静」が必要です。
頚椎カラー(頚部コルセット)などで安静を保ちます。

急性期を過ぎると、慢性期、回復期。

頭部
頚部
背部
上肢(肩~手)

が中心に筋肉の緊張が現れます。
事故の衝撃によるものと、自律神経(交感神経)が興奮することによるもの、どちらもあります。

筋緊張を緩める方法としては、

物理療法(温熱療法や電罨法、牽引療法など)
手技療法(手で行う治療)
運動療法(自分で行う運動)

が慢性期の治療に有効です。

これらの筋肉の緊張を緩める治療は、整形外科でもできる所もあります。
ただし、診療時間や場所の制約もあって、必要かつ相当な治療を受けられない場合もあるんです。

接骨院(整骨院)や鍼灸院(はり・きゅう)は、物理療法・手技療法・ときに運動療法も取り入れている院もあります。
むしろ筋肉を緩める治療は得意といってもいいかもしれません。

ただし、むち打ち症で整骨院や鍼灸院に通院するには、医師や保険会社の同意・確認が必要です。

時間や場所の制約があって通院しにくいことや違う治療を試してみたいことなど医師と相談しましょう。

過不足のない治療を行う治療院を選ぶこと!

適切な部位を適切な頻度で治療を受けることが必要です。
トラブルが多いのが、治療の過不足の問題
被害者はもちろん、加害者側にも納得のできる説明と治療を行う院を選ぶべきです。

ほんだ整骨院は、(社)交通事故医療情報協会の認定を受けています。

定期的に医師の診察を受ける

むち打ち症では定期的に病院に通院する必要がある。

接骨院や整骨院での治療で、症状に改善傾向がみられたとしても、定期的に医師の診察は受けましょう。

定期的に受診すべき理由は、

  • 症状を確認するため
  • 治療効果と方法の再評価(有効かを見極める)

少なくても月に1~2回(長期にわたっている場合)は受診しておくべきです。

治療や診察は、患者本人、加害者側のためにも早く症状をなくすことが目的。
自分の症状を医師に分かってもらい、カルテに記載してもらう必要があります。

症状をメモしておくとよい!
手帳やメモ、カレンダーなどにその日の症状を記入しておきたいですね。

〇治療の助け
〇医師に伝える時
〇書類提出時の参考

メモするのは、

  • 痛みの出る頻度
  • 症状の出る場面
  • 痛みの場所
  • どんな症状(具体的に)
交通事故で状況や状態をメモしておくことが大事な理由⇒交通事故の治療で病院や整骨院で「伝えること」はメモしておく!

症状が改善するまでが治療

交通事故でのむち打ち症の場合では、治療を中止すると症状が悪化することがあります。
(筋緊張が再度強くなることがあるため)

治療によって症状が少しでも改善されている場合は、治療を継続すべきです。

ただし、治療によっても症状が改善できないと診断された場合は、「症状固定」(しょうじょうこてい)とされます。

残された症状は「後遺障害」(こういしょうがい)と呼ばれます。
自覚症状と他覚所見によって後遺障害認定(こういしょうがいにんてい)を受けることで認められます。

他覚的所見に乏しいむち打ち症の場合は神経学的検査をうける必要があります。

症状固定を判断するのは医師
専門的な判断が必要になるためです。

その判断を支えるのが、

定期的な受診と症状を正確に伝えること

なのです。

交通事故に遭ったときに備えておきたい事項については、日本損害保険協会さんのホームページが分かりやすいです。
交通事故-被害者のために-特設サイト | 日本損害保険協会

まとめ

  1. 交通事故のむち打ち症は追突だけでなく側方・前方からの衝突でも起きる
  2. 数日してから痛みが出ることもある
  3. 必ず医療機関を受診する
  4. 緊急性の高い傷病かどうかを判断してもらう
  5. 治療費や保障には医学的根拠が必要
  6. 首の痛みは精神的苦痛も大きい
  7. 筋緊張を緩めることで症状は緩和される
  8. 定期的に医師の診察を受ける必要
  9. 症状をメモしておく
  10. 症状が改善するまでが治療