こんにちは。荻窪駅北口、ほんだ整骨院の山内健輔です。
膝のレントゲン検査を受けた際に、「膝の裏に小さな骨があります」と説明され、驚かれる患者さんのケースを、膝や下肢の症状を診ていると数多く経験します。
多くの場合は痛みも症状もなく、偶然見つかるだけのものですが、なかにはこの骨が原因で膝の外側から後ろにかけて痛みが出ることがあり、「ファベラ症候群」と呼ばれています。
この記事では、柔道整復師として下肢の症例に長年携わってきた立場から、ファベラとは何か、なぜ痛みが出ることがあるのか、そして症状が出た場合にどう対処すればよいのかを整理して解説します。

ファベラとは?膝裏にできる”隠れ骨”とファベラ症候群の症状・原因
この記事から分かること
- ファベラとは、膝の裏(腓腹筋外側頭)にできる小さな種子骨で、多くの人にとっては無症状
- ファベラ症候群は、強い疼痛・限局した圧痛・膝伸展時の痛みの3つが揃った場合に考えられる状態
- 膝蓋軟骨軟化症や変形性膝関節症、腓骨神経の圧迫などが背景だと考えられる
- 半月板損傷やベーカー嚢腫など、似た症状を起こす他の状態との見分け方
- 保存療法からリハビリまで、症状に応じた対処の選択肢
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療方針を確定するものではありません。膝の痛みが続く場合は、医療機関または整骨院にご相談ください。
ファベラとは?膝の裏にある”もうひとつの骨”

ファベラ(fabella)は、膝関節の後外側、腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)の外側頭という筋肉の腱や筋腱移行部にできる小さな種子骨。
ファベラは膝蓋骨よりもずっと小さく、レントゲンやCTでは大腿骨外側顆(大腿骨の膝側の出っ張った部分)の後方に、小さな石灰化した結節(しこりやふくらみ)として映ります。
ファベラは病的なものではなく、誰にでも起こりうる正常な解剖学的変異(バリエーション)の一つと考えられており、存在すること自体は異常ではありません。
脛骨について詳しく⇒脛骨(けいこつ)とは?
腱や筋肉の中に埋まるようにしてできる骨のこと。
膝のお皿(膝蓋骨)も種子骨の一種。
ファベラは誰にでもあるわけではなく、存在するかどうかには個人差があります。
Asghar氏らが2021年に医学誌『Cureus』に発表した、34,733膝分のデータを解析した系統的レビュー・メタ分析では、次のような傾向が報告されています。
- 性差:女性(24%)よりも男性(27%)にやや多く見られる
- 年齢差:加齢とともに存在率が高くなる傾向(10歳未満では1%未満/70歳以上では約34%)。ただし若年層を含め、どの年齢層でも見られる
- 地域差:東南アジア系(アジア系モンゴロイド、41%)やオセアニア系(48%)で高く、アフリカ系(12%)や北米・ヨーロッパ系(15〜16%程度)では低い
- 左右差:片側性より両側性の症例の方が多い一方、右膝・左膝どちらに存在するかという確率自体には大きな差はない
レントゲン・CTでの見え方と注意点
ファベラは健診や他の目的で撮影したレントゲン・CTで偶然発見されることが多く、それ自体は珍しいものではありません。
(ただし、画像診断の際には、関節内にできた遊離体(いわゆる「関節ネズミ」)や、骨折によって生じた骨片と見た目が似ることがあるため、注意深い鑑別が必要になるケースもある)
こうした鑑別においては、レントゲンやCT・MRIなどの画像診断が有効とされています。
触診や動作確認を中心とする手技療法の現場だけでは、ファベラそのものと他の骨片・遊離体とを完全に見分けることは難しいため、画像診断を行っている医療機関と連携しながら判断することが望ましいでしょう。
なぜ痛みが出る?ファベラ症候群のメカニズム

ファベラそのものは、多くの場合とくに悪さをするものではありません。
しかし、いくつかの要因が重なることで、膝の外側から後ろにかけて痛みが出ることがあり、これが「ファベラ症候群」。
- 膝の曲げ伸ばし→腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)の腱とファベラが一緒に動く
- 腓腹筋の腱と大腿骨外側顆の間で摩擦・圧迫が生じる→繰り返されることで周囲の組織にストレスが蓄積
- 後外側支持機構(PLC)への負担が加わる→ファベラ腓骨靭帯を含む安定化構造に影響
- 膝蓋大腿関節症や変形性膝関節症など、他の膝関節の変化と合併→もともと無症状だったファベラが、関節内の環境変化をきっかけに症状を伴うようになる
- 痛み・圧痛として顕在化(=ファベラ症候群)
腓腹筋外側頭種子骨としての位置づけ
ファベラは解剖学的には「腓腹筋外側頭種子骨」(ひふくきんがいそくとうしゅしこつ)とも呼ばれます。
- ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の外側の腱の中に埋まるようにして存在
- 膝を曲げ伸ばしするたびに、筋肉・腱と大腿骨外側顆との間で一定の動きが生じる
- 条件が重なると、こすれや圧迫が生じやすい部位と考えられている
ファベラ腓骨靭帯と後外側支持機構

- ファベラの周囲には「ファベラ腓骨靭帯」と呼ばれる靭帯様の構造が存在
- 膝関節の後外側支持機構(PLC:Posterolateral Corner)の一部を構成しています。
- 膝の安定性に関わるため、スポーツ活動などで膝に繰り返しの負荷がかかる人は、この周辺の組織にストレスが集中しやすいことがある
膝蓋大腿関節症・変形性膝関節症との合併

- ファベラ症候群は、単独で起こるというより、膝蓋大腿関節症(膝蓋軟骨軟化症を含む、膝のお皿と大腿骨の間に生じる痛み)や変形性膝関節症など、他の膝関節の変化と合併して痛みが顕在化するケースもみられる
- 膝関節内で炎症や軟骨の変性といった環境変化が起こることが、無症状だったファベラを刺激するきっかけになっているのではないか、という捉え方もできる
(膝関節内の腫脹が伴う場合は膝裏側に痛みを訴える人がいる)
ファベラ症候群の3つの主な症状

1977年にWeiner・Macnab・Turnerの3氏が医学誌Clinical Orthopaedics and Related Researchに発表した原著論文「The Fabella Syndrome」で初めて提唱されたもので、この報告の中で示された次の3つの症状がそろって見られることが、現在でも診断の手がかりとして広く参照されている。
- 強い(鋭い)疼痛:膝の外側〜後方にかけての、これまでになかった痛み
- 限局した圧痛:ファベラがある部位をピンポイントで押すと痛みが再現される
- 膝伸展時の痛み:膝をまっすぐ伸ばす動作で痛みが強まる
これら3症状は、ファベラ症候群を疑う重要な手がかりになると考えられます。
このほか、次のような症状がみられることも。
- 膝の伸展障害(膝が完全に伸びきらない感覚)
- 膝を曲げ始める際の痛み
- 膝を最後まで深く曲げたときの痛み
- 足関節を背屈させた際(つま先を上げた際)の痛み
- 股関節を屈曲させた際(股関節を深く曲げた際)の痛み
これらは、ファベラ周囲の腓腹筋や関連する組織への負担が、膝以外の関節の動きにも影響を及ぼしている可能性を示唆しています。
何が原因で症状が出る?
ファベラ自体に症状が出る原因としては、主に次のようなものが報告されています。
(ファベラそのもの自体の痛みの他に腓腹筋外側頭が摩擦により痛みや肥厚を生じている場合もある)
骨折・壊死
繰り返しの負荷や外傷をきっかけに、ファベラ自体に骨折や壊死に近い変化が生じることがあります。
骨軟骨炎
ファベラと大腿骨外側顆が接する部分に炎症様の変化が生じ、痛みにつながるケースも。
総腓骨神経の圧迫
ファベラの位置や周囲組織の状態によっては、膝窩(膝の裏側のくぼみ)周囲を通る総腓骨神経が圧迫・絞扼されると、しびれ感がでることも。
症状が強く出た場合には、足首から先が上がりにくくなる「下垂足」や、それに伴い足を高く持ち上げて歩く「鶏歩(けいほ)」と呼ばれる歩き方の変化がみられることもあります。
こうした神経症状が伴う場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診することをおすすめします。
似ている症状との見分け方

膝の外側〜後方の痛みは、ファベラ症候群以外にもいくつかの状態で起こり得ます。それぞれ特徴を知っておくと、見当をつけやすくなります。
半月板損傷との違い
半月板損傷では、膝を捻った際の痛みや、引っかかり感・ロッキング(急に動かなくなる感覚)を伴うことが多く、圧痛の位置も関節の隙間(関節裂隙)に近い点がファベラ症候群とは異なる。
変形性膝関節症との違い
変形性膝関節症は膝全体、特に内側を中心とした慢性的な痛みやこわばりが特徴で、進行すると変形を伴う。
ファベラ症候群のような限局した圧痛点とは、痛みの範囲や性質が異なることが多い。
大腿二頭筋腱付着部炎との違い
膝の外側〜後方に「すじ」のような痛みを感じる場合、大腿二頭筋腱の停止部(腓骨頭付近)に原因があるケースもある。
この場合は腱の走行に沿った痛みや、膝を曲げる動作での症状が特徴的で、ファベラのような骨性の限局した圧痛とは触診で区別できることが多い。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)との違い
腸脛靭帯炎は、膝の外側”上部”に痛みが出るのが特徴で、ランニングなど膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作で症状が悪化しやすい点が知られる。
腸脛靭帯は大腿筋膜張筋という筋肉につながっており、この筋肉の状態も症状に関わると考えられている(⇒大腿筋膜張筋の情報)。
ファベラ症候群の痛みは膝の外側からやや後方・下方にかけて出ることが多く、痛みの出る高さで見分けやすい。
滑液包炎との違い
膝周囲には複数の滑液包(関節の動きを滑らかにするクッション状の組織)があり、これが炎症を起こす「滑液包炎」でも腫れや痛みが生じる。
ファベラ症候群との違いは、滑液包炎では患部に熱感や腫脹を伴うことが多い点。
ベーカー嚢腫との違い
「膝裏の痛み」というキーワードでよく検索されるのがベーカー嚢腫(ベーカーのうしゅ)。
これは膝関節の後方にできる液体のたまり(嚢胞)によるもので、膨らみとして軟部組織性に触れられることが特徴。
ファベラ症候群は骨性の硬い部分に圧痛が生じる点で異なる。
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医療機関での検査・診断の流れ
ファベラ症候群が疑われる場合、一般的には次のような流れで確認が行われます。
- 触診・整形外科的テスト:圧痛の部位や膝の伸展時の痛みの再現性を確認
- レントゲン検査:ファベラの存在と位置、石灰化の状態を確認
- CT・MRI検査:周囲の軟部組織(靭帯・神経・軟骨など)の状態や、他の疾患との鑑別のために追加で行われることがあります
医療機関での対処法とリハビリ
ファベラ症候群と考えられる場合の対処は、症状の程度によって段階的に検討されます。
※これらは一般的に医療機関で検討される選択肢であり、当院で提供するものではありません。
保存療法(安静・サポーター・テーピング)
多くのケースでは、まず患部の安静や負荷の調整からスタートします。
膝用のサポーターやテーピングで外側〜後方の動きを制限し、負担を軽減する方法が行われることがあります。
(症状や原因に応じて活動量の調整・疼痛管理・リハビリが検討される)
薬物療法・注射
痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤の使用や、局所への注射が検討されることもあります。
手術が検討されるケース
保存療法で改善が見られない場合や、症状が長期化・悪化する場合には、ファベラの摘出術が選択肢として検討されることがあります。
ただし手術が必要になるケースは限られていることが多いです。
リハビリ・ストレッチ
症状が落ち着いてきた段階では、腓腹筋やハムストリングスの柔軟性を高めるストレッチ、膝周囲の筋力バランスを整える運動などが再発予防として取り入れられることが多くあります。
セルフケアで気をつけたいこと
日常生活の中では、次のような動作で症状が強まると感じるケースを多く経験します。
注意したい動作(NG例)
- 正座や深いしゃがみ込みなど、膝を深く曲げる姿勢を長時間続ける
- 痛みが強い時期に、無理なストレッチやマッサージを行う
- 違和感を我慢して、いつも通りの運動量をこなそうとする
セルフケアとしては、ふくらはぎ(腓腹筋)のストレッチ!

代表的な方法として、四つん這いの姿勢から膝を伸ばし、お尻を高く持ち上げるようにして体を「へ」の字に折り曲げ、かかとを床に近づけていくストレッチがあります。
ただし、この姿勢は膝を伸ばした状態で足首を反らす(背屈させる)動きを伴うため、ファベラ症候群でみられる「膝伸展時の痛み」「足関節背屈時の痛み」と同じ肢位にあたります。
症状が出ている時期にこの姿勢で伸ばすと、かえって痛みを誘発してしまうことがあるため注意が必要です。
症状が気になる間は、後ろ足の膝を軽く曲げた状態で行うストレッチ(ふくらはぎの深層にあるヒラメ筋を中心に伸ばす方法)から試すと、膝への負担を抑えやすくなります。いずれの場合も、ストレッチ中に膝の外側〜後方に痛みが出た場合は、無理に続けず中止してください。
基本的には、長時間同じ姿勢を続けず、ふくらはぎ〜膝周囲を適度に動かすことを意識するとよいでしょう。
症状が強い間は安静を優先し、改善に応じて徐々に動きを取り入れていきましょう。
膝に負担をかける運動を続ける場合でも、頻度や強度を少し調整するだけで、症状の予防に十分つながることも少なくありません。
セルフケアで様子を見ても改善が見られない場合や、しびれを伴う場合には、早めに医療機関や整骨院にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
当院で大切にしている視点:運動連鎖からみたアプローチ
実際に足や下肢の症状を診ていると、ファベラ症候群と考えられるケースでも、ファベラという一点だけを診ていては改善が難しいことも多く感じます。
ファベラは、腓腹筋外側頭の筋腱移行部に近い部分(近位部)に存在することが多く、この部分の筋緊張や機械的な刺激が繰り返されることで摩擦・圧迫が加わり、痛みにつながっていくことが多いです。
つまり、ファベラそのものが痛みの発生源というより、ファベラに負担をかけ続けている力学的な環境にこそ目を向ける必要がある、というのが当院の基本的な考え方。

具体的には、次のような運動連鎖が原因になりやすいと下の①~④の状態になりやすいと考えられます。
- 足部が外側に荷重しやすい状態になる
- 下腿(すねの骨)が回旋し、重心(COP)が外側に偏る
- 膝の運動軸や腓腹筋のはたらく方向が変化する
- 腓腹筋外側頭の上部にかかるストレスが増加する
この流れを踏まえ、当院では次のような項目を一つひとつ評価しながら、原因を検証。
- 足部の荷重位置
- 脛骨の回旋
- 膝関節の屈伸時の動き
- 股関節の回旋
- 腓腹筋外側の緊張状態
こうして全身の運動連鎖を確認したうえで、最終的に腓腹筋外側頭の過緊張へのアプローチを行うことで、痛みの緩和だけでなく再発予防まで見据えた施術・運動指導を行うことを心がけています。
まとめ
ファベラは多くの方にとって無症状の”隠れ骨”ですが、条件が重なると膝の外側〜後方に痛みを引き起こす「ファベラ症候群」につながることがあります。
前述の通り、当院ではファベラという一点だけでなく、足部から膝・股関節までの運動連鎖という視点から原因を検証することを大切にしています。
半月板損傷やベーカー嚢腫など似た症状を起こす状態もあるため、痛みが続く場合は専門家に相談することが大切です。
当院(ほんだ整骨院/荻窪)では、柔道整復師として膝や下肢の症状のご相談も承っております。
ファベラ症候群かもしれないと感じる痛みでお困りの際は、選択肢の一つとして、お気軽にご相談ください。
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参考文献
- Weiner D, Macnab I, Turner M. The Fabella Syndrome. Clinical Orthopaedics and Related Research. 1977 Jul-Aug;(126):213-215. PMID: 598120
- Asghar A, Naaz S, Chaudhary B. The Ethnic and Geographical Distribution of Fabella: A Systematic Review and Meta-Analysis of 34,733 Knees. Cureus. 2021 Apr 28;13(4):e14743. doi: 10.7759/cureus.14743

