こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。
足首の前方で外側にある腱(すじ)は、「第三腓骨筋腱」(だいさんひこつきんけん)といいます。
医療関係やスポーツ関係の専門の方はよくご存じかもしれませんが、一般の方にはなかなか馴染みがないかもしれませんね。
こんな症状、ありませんか?
□足首の外側(くるぶしの前)がズキズキ痛む
□歩くときに違和感や疼痛がある
□ランニング後に足の外側が張る
□レントゲン検査で「異常なし」と言われたが痛い!
これらの症状の原因のひとつに「第三腓骨筋腱」があります。
今回の記事では、「第三腓骨筋腱障害」についてくわしく紹介していきます。

第三腓骨筋腱の障害とは?足首前外側にでる痛みの原因のひとつ!
このページでは「第三腓骨筋腱の障害」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
※記事が長いので「目次」から読みたいところにジャンプできます。
症状:足首の前外側の痛みの正体

第三腓骨筋は、下腿部外側にありますが、それが細くなった腱が外くるぶしの前側を通り、足の甲外側に付着しています。
足首には、多くの腱や靱帯が存在しているので、どの組織の痛みか、はっきりしないことが多いですよね。
一度こちらで、症状をチェックしておきましょう。
□足首の外側の圧痛・腫れ
□熱感第5中足骨基部の圧痛
□足関節の背屈・外反での痛み
足の前外側の痛みや腫れ
第三腓骨筋腱は、足首の外くるぶし(腓骨外果)の前を通る腱。
したがって、この部分で摩擦を生じやすく、トラブルにもなりやすいのが特徴で、痛みや腫れを引き起こします。
腱の走行や外果(外くるぶし)の形状によっては、足首(足関節)の底背屈や内返しの動きで、「ゴリッゴリッ」と骨の上にのるような感覚が出ることがあります。
また、停止部である第5中足骨基部(足部外側の骨が出っ張った部分)の背側を押すと痛い(圧痛)を生じる場合もあります。
下腿下部外側や足首が張る・違和感がある
第三腓骨筋の作用は、つま先を挙げたり、足の外側を持ち上げたりすること。
そして第三腓骨筋はとても小さい筋肉です。
歩行はもちろん、ジャンプ・ランニング・片足立ち時には、足のグラグラをおさえる筋肉として大活躍します。
ってことは、疲れやすいってこと。
オーバーユース(使いすぎ)による筋緊張によって、外果や脛骨下端前面とこすれてしまうこともあるんです。
自分で足首を背屈(つま先を持ち上げ)や外返し(小指側を持ち上げ)で痛みが出たり、他動的(手で)に底屈(つま先下げ)、内返し(親指側持ち上げ)で疼痛を再現できます。
捻挫じゃないのに痛みが続く理由

足首の外くるぶしには、多くの靱帯が付着しています。
基本的に足裏を内側に向けるように捻る(回外強制)と、これらの靱帯の方が先に損傷します。
もちろん、靱帯が断裂して、さらにそれ以上の外力が加われば捻挫によって第三腓骨筋腱も損傷を受けます。
ただし、そのようにして起きる急性外傷による第三腓骨筋腱の損傷は稀です。
むしろ、オーバーユースや圧迫による摩擦、距骨の前方移動による摩擦などが原因になっていることがほとんど。
これらは「亜急性」(あきゅうせい)といって、繰り返しによる損傷です。
原因を排除できなければ、痛みや障害が長く続きやすいといえるでしょう。
第三腓骨筋とは?どこにある筋肉?

第三腓骨筋がどうやって障害を受けるかを説明する前に、筋肉の場所と作用と役割を確認しておきましょう。
第三腓骨筋の位置と役割
下腿部(すね)の外側下部にあるとても小さく細い筋肉です。
腓骨(ひこつ)の下部の前面と一部は筋間中隔(きんかんちゅうかく)が起始部。
第5中足骨基部の背側(足の甲側)に停止。
腱になった部分は、足首にある「上伸筋支帯」(じょうしんきんしたい)と「下伸筋支帯」(かしんきんしたい)を通ります。(前足根管)
中枢側の付着部を「起始」(きし)。末梢側の付着部を「停止部」とよぶ。
筋肉は起始と停止を近づけることで関節運動が行われる。
L4~S1(腰椎4番~仙椎)からでる坐骨神経の枝となる「深腓骨神経」(しんひこつしんけい)によって神経支配されています。

運動作用は、足関節(足首)の背屈(つま先を持ち上げる)と外返し(足小指側を持ち上げる)。
機能としては、足首を動かす「運動」の能力というより、不整地(でこぼこな地面)や傾斜地における「バランス保持」で使われていることが多いです。
また第5中足骨の基部は、外側縦アーチ(外側縦足弓)を支える骨。
これを上に引っ張り上げることでアーチの維持の役割もあります。
他の腓骨筋(長腓骨筋・短腓骨筋)との違い

長腓骨筋(ちょうひこつきん)と短腓骨筋(たんひこつきん)といっしょに「腓骨筋群」のひとつです。
これらの筋肉と共通するのは、「外返し」作用。
長腓骨筋・短腓骨筋との違いは、
長腓骨筋・短腓骨筋;足関節の底屈(つま先下げる)
第三腓骨筋:足関節の背屈(つま先あげる)
また、長趾伸筋(ちょうししんきん)の一部として枝分かれしたものともいわれており、走行も似ています。
(長趾伸筋は足指の末節骨まで伸びている)
一部の人には存在しない?第三腓骨筋の特徴
人によって発達の程度が異なることが多く、日本人の4.5%、白人の8%、黒人の9%の割合で欠如する
参考:ATTIVO 様 『第三腓骨筋』より引用
第三腓骨筋は存在しない人も多くいます。
ただし、存在しなくても足部の機能上、ほとんど何も問題がありません。
長趾伸筋や長腓骨筋、短腓骨筋などの強力な筋群が、第三腓骨筋の機能を代替しているためです。
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第三腓骨筋腱の障害とは?その原因とメカニズム
ランナーやジャンプ動作の多いスポーツ選手に多い
足関節の過回内や過回外、不安定性が原因になることも
腱の炎症や滑膜炎、腱鞘炎などの状態
障害を起こしやすいスポーツ
第三腓骨筋腱で障害が起きるのは、ほとんどが摩擦によるもの。
この摩擦を起こすのが、
過剰使用と圧迫
第三腓骨筋は、外側アーチを補助する筋肉です。
ジャンプやランニングを繰り返すスポーツは、着地時にアーチによって衝撃を吸収。アーチが過剰に沈み込まないように第三腓骨筋は第5中足骨を上方に引っ張ります。
さらに、踏み返し(蹴りだし)やジャンプの踏み切りの前段階で、第三腓骨筋や長・短腓骨筋が使われます。
とくに足関節内返し状態で過度の使用(底背屈)を繰り返すようなスポーツで起きやすいといえるでしょう。
シューズの結び方や結び目による圧迫、もちろん直接ものがぶつかる(直達外力)によっても障害されることがあります。
足関節のアライメント異常との関係

もうひとつ見逃せないのが、足部のアライメント。
回内足(かかとが内側に倒れる)や回外足(かかとが外側に倒れる)では、第三腓骨筋腱の走行が乱れることがあります。
回内足(過回内)では、腱の走行と外果(外くるぶし)が干渉して摩擦を生じやすく、回外足(過回外)での底屈(つま先下げる)では、距骨との摩擦が起きやすいです。
また、もう一つの原因として、足関節の捻挫が挙げられます。
⇩
距骨の前方移動
⇩
第三腓骨筋腱と干渉
実態は腱の炎症・滑膜炎・腱鞘炎

腱が圧迫や摩擦を受けることで生じるのは、組織の損傷。
外くるぶしの前方部分には、
第三腓骨筋腱
腱鞘(けんしょう)
滑液包
が存在しています。
これらのいずれかが炎症を起こすことで、痛みや腫れ、違和感につながります。
とくに注目したいのは、外果部分は伸筋支帯で覆われていないこと。
ちょうどこの部分で炎症を生じることが多いのです。
ほんだ整骨院での施術法とアプローチ
- 徒手検査・触診による評価と他疾患との違い
- アイシング・超音波・テーピング
- 足部アライメントの調整(距骨・踵骨の調整など)
- インソールや靴のアドバイス
- 再発予防のためのセルフケア指導(ストレッチ・筋トレ)
初期評価と鑑別(問診・触診・徒手検査)
- 症状の出る部位・タイミングを確認
- 症状を再現(安全・可能であれば)
- 他疾患との鑑別
靭帯損傷(前距腓靱帯・二分靱帯・前脛腓靱帯 など)
骨・関節軟骨損傷(外果骨折・距骨骨折・骨軟骨損傷・踵骨前方突起骨折)
腓骨筋関連疾患(腓骨筋腱脱臼・腓骨筋腱炎 など)
第5中足骨基部損傷(ゲタ骨折・ジョーンズ骨折・イズリン病 など)
足関節疾患(足関節インピンジメント・変形性足関節症 など)

似ている他の疾患との違いは?
腓骨筋腱炎・腓骨筋腱脱臼:両者ともに外果の後方の痛みや腫れが主となるので、第三腓骨筋腱の障害とは明らかに場所が異なる
前距腓靭帯・前脛腓靱帯損傷:場所的にはかなり近いので注意が必要。両者ともほとんどが内反強制によって生じるので、受傷機転の有無が判断のポイント
急性期の対応(アイシング・電療・テーピング)
急性期にて腫れや痛み、熱感が強い場合には、アイシングを積極的に行います。
状態をみながら、炎症を抑える電療、患部を固定(テーピングや包帯、サポーター)して安静を図ります。
過回内(回内足)や過回外(回外足)があれば、インソールなどで対処。
※第三腓骨筋腱の走行によって、外果と擦れている場合と距骨と擦れている場合がある。固定する際には注意。
回内・回外どちらも摩擦が起きる場合は、強めの固定が必要。
アイシングのやり方
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回復期の施術(手技・関節調整・運動療法)
患部の柔軟性や強度の回復を行いながら、障害の原因となるものを手技施術や運動によって取り除きます。
足部の骨と筋バランスを整えることで足の着き方も変わるので、インソールや手技によるアライメント調整も必要に応じて行いましょう。
足関節の安定性を保つためには、「足」だけを見るのではなく、膝や股関節、体幹部の安定も必要です。
それらも総合して、姿勢・運動の調整を行いましょう。
再発予防のセルフケア指導
スポーツへの復帰時期・復帰方法のほか、ストレッチやトレーニング、運動時の注意事項は、再発予防のためには最も重要。
整骨院を選ぶときは、状態説明をしっかりする院か、セルフケア・アフターケアにも力を入れているかどうかを見極めることが大切です。
第三腓骨筋腱障害のテーピング
足関節内反ストレッチ
第三腓骨筋腱が底背屈で動いてしまう場合には、サポーターでパッドを押し付けるように固定するのもアリ。
(余計に擦れてしまうこともあるので注意しながら)
腓骨筋群外反チューブトレーニング
(短腓骨筋と長腓骨筋もいっしょに鍛える)
腓骨筋群のストレッチ&トレーニングについて詳しく!
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実際の症例紹介
症例:50代女性
登山中に外くるぶしに痛みと違和感
低山ハイキングの下山中(徒歩4時間経過時)に外果部分に痛みと腱の移動を伴った違和感に気づき、帰宅後受診。
当初、ご本人は「腓骨筋腱脱臼」(ひこつきんけんだっきゅう)を疑い、病院を受診後に来院しました。
足関節底屈時に外果の前方で腱の移動がみられました。確かに腓骨筋腱脱臼も疑われました。
が、短腓骨筋腱・長腓骨筋腱ともに底背屈時にも外果後方にあることから、腓骨筋腱脱臼の可能性は低いと判断しました。
ただし、底背屈時に腱のズレ感を感じる部分が、場所的に第三腓骨筋腱障害の可能性が高いことが確認できました。
症状
- 腱のズレ感(底屈時に外果側へ移動)
- 外果前方の圧痛・運動時痛
- 自動背屈時に疼痛・他動底屈時に疼痛
- わずかに腫脹
- 通常歩行では疼痛なし
- 登山(ミドルカットトレッキングシューズ)の下山時のみ疼痛
施術内容と経過
初診時
問診・説明・患部の冷却・包帯固定(内反防止)
靱帯損傷や疲労骨折がないことを確認。
2回目(初診から5日後)
患部の電療・手技療法・包帯を継続
腫脹は消失。
第三腓骨筋・後脛骨筋・前脛骨筋・腓腹・ヒラメ筋の緊張緩和〈患部と外果の摩擦を軽減することが目的〉
さらに、足の着き方の特徴を見ながら歩き方を指導。
3回目受診(14日後)
底背屈時の疼痛は消失。
片足バランストレーニング指導・底屈+内反ストレッチ指導
登山時には、サポーター着用と外果前方をパッドで抑えるようにアドバイス。
4回目受診(21日後)
トレッキングシューズ(サポーター着用)で3時間ほどのハイキングで疼痛なし。
歩行時の注意や再発したときの対処法などを説明して施術を終了。
患者さんの声をいただきました!
受診するまでは自分なりに調べた結果、腱脱臼と自己判断して「手術になるかも」と不安でした。
ほんだ整骨院を受診して、詳しい説明を受けて安心できました。
最初の説明では、「腱の摩擦がとれないと1カ月以上かかるかも」といわれていましたが、3週間でハイキングに復帰することができました。
現在は再発しないように、自宅でストレッチとバランストレーニングをしています。
まとめ
第三腓骨筋腱の障害は、珍しいといえますが、前距腓靭帯や前脛腓靱帯の痛みと混同されてしまっていることも多いです。
ほとんどが「亜急性」(繰り返しの外力)によるもので、痛みや違和感を放置してしまうと悪化したり、治癒までの期間が長期になってしまうことが多いです。
早めのケアをおすすめします。
症例でも紹介していますが、足首周りには多くの靱帯・腱・骨がひしめき合っています。
「原因不明の足の痛み」こそ、専門的な評価が必要で、とくに足部に詳しい知識も必要です。
整骨院での細やかなアプローチが有効なケースも多いので、もしも足の痛みで悩んでいることがあれば、なるべく早くご相談下さい。
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