こんにちは。荻窪教会通りにあるほんだ整骨院の山内健輔です。
ヒトの脚には、体重がのる大きな関節が3つあります。
3大荷重関節(さんだいかじゅうかんせつ)とよばれます。
股関節(こかんせつ:足のつけね)
膝関節(しつかんせつ:ひざ)
足関節(そくかんせつ:足首)
〈「あしかんせつ」と読まれることもあり〉
体重がのったうえに、歩く!走る!
とくにヒトは二足歩行ですから、片足が宙に浮いているじょうたいだと、全部の体重が片足にかかります。
ってことは、関節内部が「摩耗」(まもう)してしまうのです!
関節内部の関節軟骨(骨どうしが接する部分にあるツルツルした軟骨)がすり減ることを「変形性関節症」とか、単に「関節症」とよんでいます。
英語では、
osteoarthritis
(骨の関節炎)
なので、専門家たちは略して「O.A」と呼ぶこともあります。
今回は足首。
「変形性足関節症」について紹介していきましょう。
変形性の足関節症。足首の形が変形してくる要因とは?
このページでは「変形性の足関節症」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
足部の骨と関節の呼び方についてはこちらの記事も一緒にお読みください。
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変形性 足関節症が起きるしくみ
おもに「距腿関節」(きょたいかんせつ)にある関節軟骨の摩耗(すり減り)から始まります。
下腿骨(脛骨・腓骨)と距骨(きょこつ)との関節。
距骨が「ほぞ」のようになっており、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)がそれを挟み込む。
おもに背屈と底屈(つま先の上げ下げ)。
(ほぞ:木材を接合するときにパズルのような形にする。その突起側のこと)
へんけいせいそくかんせつしょう(あしかんせつしょう)
距腿関節における関節炎(関節内部の炎症)と関節構成要素の破壊と変形。
(距骨に均等に体重がかからない状態)
↓
荷重が集中する部分で関節軟骨が摩耗
↓
関節軟骨の水分減少=関節軟骨がもろくなる
↓
関節軟骨の減少
&
軟骨下骨がむき出し
⇩
骨の変形
「削れる・修復・削れる」の繰り返しによって、足関節はそのたびに炎症が生じます。
炎症が繰り返されると、
- 関節液の増加・血漿成分の流入
- 組織の線維化(滑膜炎)
- 骨の過剰な増殖(骨硬化)
- 骨壊死
が起きることになり、これが変形につながります。
関節液の役割は?⇒「関節液」は骨や軟骨を守る!働きのポイントは潤滑・分散・栄養。
骨棘ができるしくみ⇒「骨棘」(こつきょく)とは?骨にトゲができる原因とは?
距骨下関節症とは?⇒【距骨下関節症(炎)】でこぼこ道や衝撃で足首の奥に痛みが出る!
腓骨の形状は?⇒『腓骨』の形状と部位名。付着する筋肉は?
変形性足関節症のおもな症状
- 腫脹・関節水腫
- 歩行・荷重時痛
- 関節可動域制限
- 関節不安定性・クリック音
- 変形
足首の変形性関節症は、整形外科でレントゲン検査にて診断されます。
急性期と慢性期を繰り返し、徐々にし頸の変形が進行します。
骨壊死━骨組織が分断されて壊死
軟骨下骨の硬化━損傷が起きている証拠。増殖性変化。
距骨の扁平化━距骨上部が削れて扁平化。
関節裂隙狭小化━軟骨が摩耗することで関節の隙間が減少する。
滑膜炎━関節の滑らかさを失うことで肥大化・増殖
骨嚢胞(こつのうほう)━軟骨の損傷部から関節液が骨に侵入。
①腫脹・関節水腫
炎症による血管透過性亢進(けっかんとうかせいこうしん)と滑膜からの滑液供給によって、関節包内部の関節液が増加。
関節水腫(水がたまる)が生じる。
炎症が生じると白血球などの免疫機構が働くため、周囲の血管から組織液(血液の一部)があふれ出す現象。
②歩行・荷重時痛
軟骨下骨は、関節軟骨の下地となる部分。
関節軟骨が削れることで、神経組織が分布する軟骨下骨が露出。
相手側の骨とぶつかることで痛みを感じる。
とくに初動時(動きだし)と長時間歩行により痛みを感じやすい。
③関節可動域制限
関節軟骨が摩耗することで、関節運動の滑らかさは消失。
さらに、骨壊死や骨増殖を繰り返すことで正しい関節の動きが失われる。
さらに、「骨棘」は骨性のインピンジメントを引き起こし、可動域制限の原因になる。
底屈(つま先下げる)制限が強いが、背屈制限も同時に生じる。
足関節インピンジメント症候群とは
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④関節不安定性・クリック音
関節面の滑らかさが失われるので、関節運動はぎこちない状態になる。
摩擦感や内部で骨どうしがぶつかる音を触知できることも。
⑤変形
骨棘や滑膜炎により、健側に比べて変形してみえる。
内反変形(内返し方向)が多い。
全体的に横幅が広く見えるのが特徴。
※足根洞症候群・立方骨症候群・舟状骨骨折とは病態が違うので間違えないようにする必要があります。
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足首の変形性関節症リスク要因
一次性と二次性の関節症に分けられます。
一次性:明らかな原因が分からない
二次性:外傷・関節炎など原因に思い当たる
二次性の足関節症の原因
二次性の変形性足関節症の原因は大きく分けて3つ。
- 外傷歴(足首をケガした経験)
- 内疾患(リウマチ・糖尿病・痛風など)
- 感染症(傷や風邪などの菌による化膿)
どれも「関節炎」(関節包内での炎症)を引き起こす要因です。
とくに①外傷歴は多くの人がもっている要因。
靱帯の延長治癒や関節軟骨の損傷、関節包の緩みによって内部の距骨が動いてしまったり、荷重の不均衡(偏って体重がかかる)を生じさせます。
②内疾患③感染は人それぞれ。関節炎を引き起こしたり、滑膜炎を引き起こしたり。
⇒足首の捻挫(足関節靭帯損傷)の合併症と後遺症!
一次性足関節症のリスク要因
原因が分かりにくい一次性のものでも、起こしやすい要因があります。
- 加齢
- 肥満
- 女性
- 外傷歴
- 立位時間長い
- 回内足・回外足(足部の変形)
①加齢②肥満については、荷重による関節軟骨のダメージが大きくなりやすいため。
③女性は、性ホルモンの関係で水分保持力の減少により骨や軟骨組織がもろくなりやすい。
④外傷歴があると関節動揺性(距骨の動揺性)が残りやすい。
⑤立位時間や運動強度が強いと関節軟骨の摩耗が速くなりやすい
⑥足部の変形があると、距骨へかかる負荷が不均等(偏って削れる)が生じやすくなるため。
変形性の足関節症の治療
急性期の腫脹・関節水腫がみられるときには、アイシングや免荷(めんか)を行います。
体重をかけないようにすること。
杖を使って、かける体重を減らすこと。
完全に免荷するには、両松葉杖や車いすが必要。
基本的には、保存療法(手術しない)が選択されますが、日常生活に影響がでるような症状では、手術(観血療法)も検討されます。
⇒受傷後のアイシング(冷却)。治療期間を短縮する効果あり!【応急処置】
治療
保存療法は、
- ヒアルロン酸注射
- インソール
- サポーター
- 筋力トレーニング
①ヒアルロン酸注射は、なめらかな関節運動を促す目的。
②インソールは、シューズの底に敷いて使うもの。
足関節へかかる負荷を均等にしたり、傷んだ関節軟骨部分への荷重を避ける。
回内足には内側を持ち上げる内側ウェッジ(内側を持ち上げる)。
回外足には外側を持ち上げる外側ウェッジ(外阿川を持ち上げる)を入れて、体重のかかる部分を分散させる。
③サポーターは関節動揺性を減少させ、関節の摩耗を減少させる。
④筋力トレーニングでは、とくに下腿筋群(膝から足首まで)によって、足首のぐらつきを抑える。
その他にできることは、
- 労働・運動環境の見直し
- 体重の管理
足首の負担を減らすために靴や運動時間、場所などの環境を見直すことも重要です。
さらに、体重の管理は思ったよりも効果的。
1日4000歩ぐらい歩く人なら、1kg減らすだけで、毎日4000kg分の負荷がなくなる計算になります。
(片足ずつだと2000kg)
脛骨骨切り(関節の傾きを調整)
関節固定術(完全に固定して摩擦をなくす)
人工関節(関節面を人工のものに替える)
下腿を中心に鍛える!
下腿部とは膝~足首までの部分。
この部分の筋肉の多くは、足首を動かしたり、安定させたりする筋肉です。
この部分の筋肉を鍛えておくことで、不整地の運動でもブレたり、ひねったりしにくくなります。
変形性足関節症でとくに大事なのが、腓骨筋群と後脛骨筋。
前額面(横方向・左右方向)でのブレを抑えてくれます。
ふくはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)は衝撃吸収を助け、関節軟骨の摩耗を抑制できます。
また、足部の筋肉も一緒に鍛えておくことで、足部の形状を保ちやすくなるので一緒にやっておきたいトレーニングです。
インソールやサポーターと組み合わせて足首の安定性をとり戻しましょう。
同時に膝や股関節のケアも必要です。
体重のかかる関節は、股関節・ひざ・足首3つ。
そのうち、足首が負傷すると、膝と股関節で衝撃を吸収することになるんです。
ひざや股関節を守るためにも日ごろからケアしておきたいですね。
後脛骨筋のトレーニング
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まとめ
- 距腿関節での摩耗による関節変形
- 外傷(捻挫や骨折など)後の関節動揺性が背景になる
- 原因の無い一次性のものも増えている
- 腫脹や変形、不安定性が顕著にみられる
- 回内足や回外足も要因のひとつ
- インソールやサポーターで対処される
- 下腿筋のケア、膝や股関節のケアも必要とされる
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参考文献
医学書院『標準整形外科学』
日本ペインクリニック学会誌『変形性関節症はなぜ痛いのか?』石黒直樹 原田紀子 江端望 藤井幸一