長腓骨筋・短腓骨筋の打撲と肉離れ。過度な内出血や腫れに要注意!

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

下腿部(ひざ下から足首まで)でいちばん外側にある筋肉。

長腓骨筋(ちょうひこつきん)
短腓骨筋(たんひこつきん)

ふたつの筋肉はあまり大きな筋肉ではないのですが、足首の関節や足部の形状を保つうえで大切な役割を持っています。

ただし、もっとも外側にあるので、

外力を受けやすい!

っていう特徴があります。

今回は「長腓骨筋・短腓骨筋の損傷」について紹介していきましょう。

長腓骨筋と短腓骨筋は下腿部の外側にあるので打撲しやすい

長腓骨筋・短腓骨筋の打撲と肉離れ。過度な内出血や腫れに要注意!

※ご注意!
このページでは「長腓骨筋・短腓骨筋の打撲と肉離れ」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

長腓骨筋・短腓骨筋はこんな筋肉。

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長・短腓骨筋の打撲は起きやすい

長腓骨筋と短腓骨筋は腓骨よりも外側にあるので、スポーツや日常生活で打撲しやすい

長腓骨筋と短腓骨筋は下腿部(ひざ下~足首)の外側にある筋肉。
足首を底屈(つま先を下げる)したり、内反(足裏が内側を向く)を防止する作用があります。

ほかにも短腓骨筋は外側縦アーチ、長腓骨筋は内側・外側・横足3つのアーチを保持する役割ももっています。

ふたつの筋肉は腓骨よりも外側を走行しているので、

直達外力(ちょくたつがいりょく)を受けやすい!

直達外力は、文字通り「ある部位に直接的に働く力」のこと。

スポーツ現場での相手との接触
側面に転倒
物がぶつかる

これらの外力は日常的にも生じやすいものです。

肉離れはめずらしい(起きないわけではない!)

内反強制が強く働くと長腓骨筋の筋腹が肉離れを生じる。短腓骨筋は第5中足骨基部で裂離骨折を起こしやすい

肉離れは、介達外力(かいたつがいりょく)によって生じます。
筋線維が「引きちぎれる」ようなイメージですね。

肉離れは、

筋肉が収縮(縮む)している時に、過度に牽引されることで生じる筋肉の損傷

です。

長腓骨筋と短腓骨筋が肉離れを引き起こす動きは、

足関節(足首)の内反強制

長腓骨筋と短腓骨筋の足首に対する大きな役割は内反の防止です。
ふたつの筋肉が肉離れを起こすのが、内反を防止するためにがんばっていた両腓骨筋よりも強い力で内反強制力が働いたとき

具体的には、急な方向転換(ターン)で足部外側に荷重がかかるが、勢いに負けて足関節が内反されたり、着地時に強い内反強制が働いたりしたときに生じやすいです。

ただし、内反強制によって、ほかの外側支持機構(靱帯や腱など)が損傷した場合には、腓骨筋に強い張力が働きにくくなるので、肉離れが生じにくくなります。

とくに内反時には短腓骨筋の付着部(第5中足骨基部)に強く牽引力が加わるのでこの部位の裂離骨折(剥離骨折)のほうが生じやすい傾向にあります。
これが腓骨筋の肉離れがまれな理由です。

合併症のコンパートメント症候群に注意が必要

長腓骨筋と短腓骨筋は外方コンパートメントにある

私たちヒトの下腿部はいくつかの区画(コンパートメント)で別れています。
コンパートメントを隔てるのは、脛骨腓骨や筋膜、骨間膜。

そのコンパートメント内には筋肉のほか、動脈・静脈・神経・リンパ管があります。

長腓骨筋と短腓骨筋があるのは、下腿部のいちばん外側にある「外方コンパートメント」。
長腓骨筋や短腓骨筋が大きく損傷すると、

損傷部位からの出血
血管透過性亢進(けっかんとうかせいこうしん)による腫脹(腫れ)
静脈還流障害(じょうみゃくかんりゅうしょうがい)による浮腫(むくみ)

によって外方コンパートメントの内圧が高くなります。

※血管透過性亢進
組織が損傷して炎症が生じると周囲の血管から白血球などの血液成分がにじみだしてくること
※静脈還流障害
静脈が圧迫されたり、詰まったりすることで内部の血流が悪くなること

コンパートメント内圧が高まると内部を走行する動脈や神経を圧迫。

浅腓骨神経(せんひこつしんけい)が圧迫されると長・短腓骨筋の筋力低下が生じて「外返し」(足裏を外側に向ける動き)が弱くなったりできなくなります。

しびれが生じたり、痛みを生じることもあります。

最も怖いのが内圧が高まることで血流が阻害され、組織の壊死が起きること。
後遺障害が残ってしまう恐れがあるので、早期に除圧させる必要があります。

長腓骨筋や短腓骨筋の損傷で下腿外側が急激に腫れてきたり、力が入らなかったりしたときには早急に医療機関を受診する必要があります。

応急処置と治療

アイスパックのつくり方

けがをしたときの応急処置の基本は、

RICE処置
(安静・冷却・圧迫・挙上)

とくに直後に大切なのは患部の安静と冷却を行うこと。
冷却は早ければ早いほど効果が高いです。

圧迫はコンパートメント症候群の恐れがないことを確認してから適度に行ったほうが無難です。

固定は足関節(足首)まで行います。

底屈制限(つま先を下げないようにする)
内反制限(足裏が内側を向かないようにする)

損傷の程度によって固定の強度と期間を調整しましょう。
ふたつの筋は足部のアーチにも関係するので必要があれば免荷(荷重をかけない)も行います。

運動を再開するのは固定がとれて、筋力と伸張力が回復してから。
打撲の軽度な損傷で2~4週
肉離れでは4~8週ほど必要です。
(重度の合併症がある場合はもっと長期にわたることもあります。)

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長・短腓骨筋損傷まとめ

〇外側にあるので打撲は生じやすい。
〇内反強制で肉離れを起こすこともある。
〇コンパートメント症候群に注意が必要。
〇固定は底屈と内反を制限する。
〇アーチに関係するので必要に応じて免荷する。

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