シーバー病(セーバー病)。子どもがかかとを痛がる踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

シーバー病」という病気を聞いたことがありますか?
人によっては「セーバー病」と発音することもあります。

病気といっても、こちらはスポーツ障害のひとつ。
子ども(10歳前後に多い)特有のかかとの痛みです。

子どもの骨は大人と違って、オーバーワークで損傷しやすい特徴があります。

今日は「シーバー病」、別名「踵骨骨端症」(しょうこつこったんしょう)について紹介していきましょう。

 

シーバー病は踵骨の骨端症

シーバー病(セーバー病)。子どもがかかとを痛がる踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)

※ご注意!
このページでは「シーバー病」(セーバー病)について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
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シーバー病はかかとの痛み

子どもの踵骨は完全に骨化せず骨端軟骨と骨端核が存在する

踵骨(かかとの骨)の隆起部(後ろの部分)は、子ども時代には硬い骨と骨端軟骨(成長軟骨)、さらには骨端核(こったんかく)で形成されています。

骨端症」は、この骨端軟骨がなんらかの理由で破壊されているものをいいます。
とくに骨端部分(骨のはしっこ)は血流障害が起きやすいので「壊死」(えし)に注意が必要です。

壊死(えし)
血流が障害されることで、組織へ酸素や栄養の供給が遮断されることによって、組織が破壊される。

踵骨の骨端線閉鎖は15~17歳ごろ

大人になると踵骨は骨端軟骨部分が骨化してひとつの骨になります。
骨端軟骨が硬い骨に置き換わることを「骨端線の閉鎖」といいます。(骨端線はレントゲン上で見ると軟骨部分が黒い線にみえる。大人になると消える)

この踵骨の骨端線が閉鎖する時期が15~17歳といわれています。
ということは、シーバー病はその年齢までに起きるのです。

踵骨骨端症になりやすい人

セーバー病は踵骨の骨端症。筋・腱の牽引。体重や衝撃大きな力が繰り返し加えられる
シーバー病の好発例
10歳前後
男性
スポーツを高頻度でやる

10歳前後は身長や体重が急激に伸びやすく、かかと部分に負担が強くなる時期です。
さらに、筋肉も増えてくる時期でスポーツ選手はよりハードな練習になりやすい時期といえます。

男性に多いのは、運動強度の問題かホルモンの影響かは分かりませんが、女性の2倍ほどといわれています。

とくに繰り返しかかとへの衝撃や負荷が増える運動選手に多いので「スポーツ障害」のひとつです。

シーバー病が多いスポーツ
サッカー・バスケットボール・陸上・剣道

原因は踵骨骨端部にかかるストレス

踵骨隆起部への負担
アキレス腱(下腿三頭筋腱)の牽引(引っ張り)
足底腱膜・足底屈筋群の牽引(引っ張り)
体重の負荷
繰り返しの衝撃
外傷
足部形状の問題

かかと部分にはいろいろな筋肉が付着していて、それぞれ違う方向に引っ張られます。

そして体重や衝撃などの外部刺激も多い部分。
運動をしている10歳前後は体重や体力もついてきて、オーバーユース(使い過ぎ)になりがちです。

ハイレベルで運動をしている人は「オーバーワーク」(練習過多)にもなりやすいのが特徴です。

これらの要因によって骨端軟骨が損傷してシーバー病が発症します。

アキレス腱(下腿三頭筋腱)の牽引(引っ張り)

ふくらはぎ

踵骨隆起部(しょうこつりゅうきぶ)後方はアキレス腱の停止部(付着部)。
アキレス腱は下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)につながります。

この下腿三頭筋は運動時につま先を上下させる働きとともに、足底(足裏)への衝撃をやわらげたり、身体のバランスをとったりするのに頻繁に使われる強靭な筋肉です。

運動や日常生活で繰り返し踵骨隆起部に強い牽引力が繰り返されます。

足底腱膜・足底屈筋群の牽引(引っ張り)

足裏の筋肉

足底腱膜足底屈筋群(足指を曲げる筋肉)の多くは踵骨隆起部の下部に停止(付着)します。

これらは足部の縦アーチ(縦足弓)の底部(弦の部分)を形成しています。
荷重や着地の衝撃を加わったときにこれらの筋肉や腱膜が強く牽引されます。

着地のときにはこの足底部分の筋肉群とアキレス腱が同時に違う方向に牽引し合うので踵骨隆起には強い負担がかかるのです。

大人が足底かかと部分を痛がるときはこちらも注意⇒「足底腱膜炎」足の裏かかとや土踏まずの痛み。踵骨棘ができるしくみ

体重の負荷

かかとには、体重の70%がかかっています。
もちろん両足で立っていれば、その半分ずつになりますが、ランニングやジャンプ、片足体重、長時間の立ち姿勢になれば負荷はその分増加します。

とくに骨が硬くなるよりも体重増加が大きければ、踵骨の骨端軟骨にかかる負荷は強くなります。

繰り返しの衝撃

運動の多くの動作で、着地するのがかかと部分。
強度の強いスポーツでシーバー病になりやすいのは、着地による機械的な刺激が長期にわたって繰り返されることによるものと考えられています。

外傷

高所からの飛び降りによって、骨端軟骨が損傷を受けることもあります。

骨端軟骨の損傷は周囲の組織への血流障害を引き起こして骨端症を発症させてしまうこともあります。

足部形状の問題

足部の形状も踵部の負荷に大きな影響を与える

回内足回外足扁平足ハイアーチなど踵部(かかと)への負担が大きくなる傾向にあると、シーバー病を発症しやすくなります。

また、サッカーなどのスパイクシューズのポイント部分(底面の突起)の圧によって発症させてしまうこともあります。

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シーバー病の症状

シーバー病の進行
運動中だけ痛い
運動時痛

痛くてかかとが着けない(荷重時痛)
腫れ・熱感

骨端核の扁平化・分節化

最初は運動時に痛みを感じるだけですが、進行すると荷重時に痛みを感じたり、圧痛(押すと痛い)や腫脹(腫れ)が出現したりします。

さらに進行するとレントゲン画像で骨端核が濃く見える濃縮化扁平化(つぶれる)、分節化(二つ以上に割れる)などの不整像がみられるようになります。

発生機序が似ている疲労骨折にも注意が必要なので、必ず整形外科での診断が必要です。

鑑別が必要な疾患
外傷性骨折
疲労骨折
足底腱膜炎・有痛性踵骨棘
アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎
化膿性骨髄炎
踵部脂肪体症候群

治療と予後

ハイレベルで活動している運動選手は痛みをがまんして続けてしまう傾向にあるので、かかとをつかずに歩行していたり、痛がるそぶりをしていたりするときは、注意してあげる必要があります。

予後

予後は、骨端核(こったんかく)が大きく破壊されていると成長障害や変形がでてしまう可能性がありますが、後遺症を残さずに良好である場合が多いです。

軽症であれば、スポーツの復帰までに1~2か月ほどですが、重度になると1~2年かかることもあります。

治療

シーバー病で選択されるおもな治療
安静
冷却
ストレッチ
サポーター
インソール
ヒールパッド
松葉杖
ステロイド注射
物理療法

シーバー病の原因は筋肉や骨が弱いからではありません。それらを強化するために過度に運動させるのは逆効果です。

状態をしっかり見極めながらその時点に必要な治療や運動をすることが大切です。

①炎症が強く足が着けないぐらい痛みのあるときは、患部を冷却して、松葉杖などで荷重を制限(安静)させる。
基本的に保存療法が選択される。

②サポーターやインソール、ヒールパッドで下腿三頭筋や足底筋群の負担を軽くする。

③物理療法やストレッチによって、下腿三頭筋や足底屈筋群の筋緊張をほぐす。

④徐々に痛みがないか確認しながら荷重していく。

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シーバー病まとめ

  1. 踵骨の骨端軟骨が損傷される骨端症のひとつ
  2. アキレス腱と足底腱膜の牽引力と機械的刺激による
  3. 外傷がきっかけになることもある
  4. 回内足や回外足などもリスク要因になる
  5. 踵骨の骨端線閉鎖は15~17歳ごろ
  6. 疲労骨折にも注意する
  7. 10歳前後の男性、スポーツ選手に多い
  8. 予後は良好なことが多い

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