「クロートゥ」(鉤爪趾)。足指が縮こまるように屈曲する原因は?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

足の指が地面をつかむように曲がってしまっている状態。
これを、

クロートゥ
鉤爪趾(かぎづめゆび)

と呼んでいます。

屈趾症(くっししょう)のひとつで、実はいろんなことが原因で発症します。

歩くのに痛みが出たり、靴が当たってしまったり、立位での不安定性がでたり。

今回は「クロートゥ」について紹介していきます。

クロートゥ

『「クロートゥ」(鉤爪趾)。足指が縮こまるように屈曲する原因は?』

※ご注意!
このページでは「クロートゥ」(鉤爪趾)について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。
他の足趾変形についてはこちらの記事もご参考に。
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クロートゥはどんな状態?

クロートゥ側面図

クロートゥは、簡単にいうと「足指が持ち上がり、縮こまるような状態」です。
哺乳類や鳥類の鉤爪(かぎづめ:細く鋭い弯曲した爪))のような形から「鉤爪趾」(かぎづめゆび・こうそうし)ともいわれています。

英語で鉤爪は「claw」。つま先は「toe」

MTP関節(中足趾節関節)…背屈(伸展)
PIP関節(近位趾節間関節)…底屈(屈曲)
DIP関節(遠位趾節間関節)…底屈(屈曲)

地面に爪を立てるような状態ですね。
第2趾~第5趾(親指以外)で多いですが、母趾(親指)でも起こることがあります。

手で伸ばすと抵抗はあるものの伸展できる状態のものと固まってしまって手で伸展できない状態のものがみられます。

通常の足指長趾屈筋の緊張がクロートゥを引き起こす

クロートゥの症状

クロートゥで胼胝ができやすい場所
歩行時痛
背側の胼胝(べんち)…タコのこと
靴の圧迫
凹足(おうそく)・ハイアーチ
歩行・走行パフォーマンスの低下
立位バランスの低下

症状は主に歩行時の痛みがでることが多いです。
靴などの履物の圧迫で痛みが出たり、PIP関節・DIP関節の背側が擦れて胼胝(たこ)ができることもあります。

また、足指が曲がったままの歩行になります。
前方への踏ん張りが効かなくなったり、足部の縦アーチの機能(ウィンドラス機構・トラス構造)が使えなくなることで、従来の足部の能力を発揮できない状態になることもあるんです。

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クロートゥになる原因

長期間の圧迫
足趾の外傷
神経麻痺・過緊張
関節炎    など

クロートゥは、外見は同じように見えても原因は別のものによることも少なくありません。
大きく分けると、圧迫や外傷によるものと病気によるものがあります。

圧迫や外傷によるもの

他の屈趾症(マレットトゥ・ハンマートゥ)のように長期間圧迫され続けることで、足趾が底屈して(MTP関節は背屈)戻らなくなることがあります。

また、腱断裂や骨折など外力が原因でおきるケガが原因のものもあります。

足指の側副靭帯の損傷⇒足指の側副靭帯の損傷。足の指をぶつけたときに起きやすい捻挫

靴や靴下による長時間の圧迫によるもの

つま先の圧迫によるクロートゥ

つま先のせまい靴やサイズの合わない靴、高さのあるハイヒールなどによって、長時間かつ頻繁につま先が圧迫されたり絞めつけられたりしていることが原因になることがあります。

長期間に圧迫が継続されると、腱や靭帯が周囲の組織と癒着して足趾が伸びなくなってしまうのです。

外傷によるもの

足指に受けた大きな外力によって、腱・靭帯・骨の損傷が起きます。

長趾伸筋腱が断裂したり剥離骨折したりすると、長趾屈筋の影響で足趾が屈曲。
〇中足骨頭部に受ける外力によって周囲の組織が損傷して起きる長趾屈筋腱の癒着
〇骨損傷・靭帯損傷による血腫による関節の癒着
〇足部の外傷の血腫が足趾へ流入することによる循環障害、拘縮

クロートゥでは、多くの症例に「蹠側板」(せきそくばん)の損傷がみられます。蹠側板は足底側でMTP関節が運動の際にずれたり外れたりしないように安定させる役割を持った軟部組織です。

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病気によるもの

大きく分けて2つ。
神経に起因するものと関節の炎症に起因するもの。全身性の疾患は思わぬ場所に影響を与えることがあります。

神経の麻痺に起因するもの

脳卒中や脊髄損傷(せきずいそんしょう)による中枢神経(脳や脊髄)の麻痺があると末梢神経である運動神経が障害を受けます。

また、腰部椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などによる坐骨神経障害、足根管症候群(そくこんかんしょうこうぐん)でも神経障害が起こります。

これらの神経障害によって、内在筋(虫様筋や骨間筋)の麻痺、長趾屈筋の痙縮(けいしゅく)が起きるとクロートゥ変形が起きることがあります。

痙縮:筋肉が強く緊張すること。通常、屈筋群の方が強いので屈曲方向に縮こまることが多い。
神経障害による痙縮では、足部の縦アーチが強い「凹足(おうそく)」「ハイアーチ」になりやすい。
(屈筋の緊張が強まるため)

この中で、とくにクロートゥを起こしやすいのが

「緊張性足趾屈曲反射」
(きんちょうせいそくしくっきょくはんしゃ)
(Tonic toe flextion reflex:TTFR)

脳血管障害や脊髄損傷などの中枢神経系の障害では、重心を足部前方にかけたときや足底(足裏)になんらかの刺激があったときに、足趾の屈曲が発現することがあります。
(⇒参考;日本義肢装具学会誌「脳卒中患者の立位バランスと痙性抑制装具」

他にも精神的緊張があったり、足趾を意識したり、足首を曲げようとしたりすると発症してしまうものもあります。

神経障害を原因とするハイアーチ(足の縦アーチが強くなる)では、長趾屈筋(ちょうしくっきん)の張力が強まるので、クロートゥになりやすい傾向にあります。

ハイアーチでクロートゥが起きる理由

病気による関節炎による変形

関節リウマチなどの膠原病痛風発作による関節炎は、長期にわたると関節変形を引き起こしてしまうことがあります。

また、糖尿病は腱や靭帯をもろくしたり、肥厚させることがあり、これによって変形することも。

鉤爪趾は改善する?

長趾屈筋の位置、起始・停止、作用

クロートゥを改善させるためには、長趾屈筋(ちょうしくっきん)の筋緊張を和らげる必要があります。

また応急的にはなりますが、装具を利用することで歩行しやすくなります。

注射
「ボトックス」といって、美容医療などでも利用されるボツリヌス菌が作り出すたんぱく質を長趾屈筋に注射することで筋肉を緩和(麻痺)させます。(病院での治療)

電療
長趾屈筋の緊張を緩和させる目的で行います。

ストレッチ
関節拘縮を防ぐ、長趾屈筋の緊張緩和のために行います。
自分でもできるので、自宅で頻繁に行うことを推奨。

装具(バンドやサポーターなど)
専門家の指示のもとに装具を使用することで歩行時の痛みをやわらげます。
人によって屈曲度合いが異なったり、足の形に個人差があったりするので、調整しながら行いましょう。

クロートゥに使用される装具

インヒビターバーインヒビターバー(inhibitor bar)
縮こまった足趾の下に「指枕」を置くことで、それ以上の屈曲を防ぐものです。
歩行時の痛みを減少させます。

トゥスプレッドトゥスプレッド(toe spread)
足趾(足指)を開くことで母趾内転筋の作用を抑えます。
(体重が前方にかかったときに母趾内転筋が作用し、足趾の屈曲が強調されるため)

インヒビターバーとトゥスプレッドを両立!

 

他の屈趾症(くっししょう)との違い。

屈趾症(くっししょう)は指が曲がってしまう変形の総称です。
ハンマートゥ・マレットトゥ・クロートゥはそれぞれ似ていますが、原因や障害を受けている部位が違って、その形になっています。

子どもの足指が曲がってみえる「カーリートゥ」

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ハンマートゥ

ハンマートゥは足指が縮こまるように曲がってしまう変形

靴の圧迫や神経麻痺に起因することが多い。

MTP関節(中足趾節関節) 背屈
PIP関節(近位趾節間関節) 底屈
DIP関節(遠位趾節間関節) 背屈(または自然位)
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マレットトゥ

マレットトゥ

指先へ外部から力を受けたのがきっかけで発症することが多い。

MTP関節(中足趾節関節) 自然位
PIP関節(近位趾節間関節) 自然位
DIP関節(遠位趾節間関節) 底屈
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マレットトゥアイキャッチ

クロートゥ

クロートゥ

中枢神経の障害を受けた麻痺によるものも多い。

MTP関節(中足趾節関節) 背屈
PIP関節(近位趾節間関節) 底屈
DIP関節(遠位趾節間関節) 底屈
回外足になると「クロートゥ」を発症しやすくなります。⇒「回外足」(かいがいそく)の治し方は?原因と予防も考えよう!

クロートゥまとめ。

〇中枢神経の障害で起きる痙縮・屈曲反射で起きやすい。
〇関節周囲の組織が癒着して、関節拘縮(かんせつこうしゅく)〈関節が固まること〉も起きる。
〇末梢神経障害で起きる凹足(ハイアーチ)にも併発する。
〇内科疾患による関節炎の影響も。
〇歩行時痛や歩行パフォーマンスの低下が懸念される。
〇装具や電療、ストレッチで根気強く改善を目指す。

足部の骨についての記事も参考にどうぞ。⇒足部の骨についての基礎知識。骨の数や名前、構造や役割を紹介。

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