「腓骨筋滑車症候群」は足外側の突起部で摩擦が起きる腱鞘炎

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

外くるぶしの下にある骨の隆起。

腓骨筋滑車
(ひこつきんかっしゃ)

といいます。

「踵骨(しょうこつ)」というかかとの骨の一部です。
この部分で起きる摩擦による痛みを

腓骨筋滑車症候群
(ひこつきんかっしゃしょうこうぐん)

長腓骨筋(ちょうひこつきん)・短腓骨筋(たんひこつきん)ふたつの腱が隆起に押しつけられることで発症します。

外くるぶしの下にある隆起の痛みがなかなかとれない症状が特徴です。

今回は「腓骨筋滑車症候群」について紹介していきます。

腓骨筋滑車症候群は踵骨にある隆起部で腓骨筋腱が摩擦を起こして腱鞘炎を発症

「腓骨筋滑車症候群」は足外側の突起部で摩擦が起きる腱鞘炎

※ご注意!
このページでは「腓骨筋滑車症候群」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

腓骨筋滑車症候群は外くるぶし下の突起部に痛み

外果の下にある踵骨の突起が腓骨筋滑車。

腓骨筋滑車(ひこつきんかっしゃ)は、外くるぶしの下、ほんのちょっと前にある骨の出っ張り(突起)。
突起といってもほんの少し隆起している程度のこともあります。

外くるぶし(外果)の後ろを通る長腓骨筋短腓骨筋の腱はこの腓骨筋滑車で方向転換して、少し前方に向かいます。

人によってこの方向転換する角度が違っていて、外くるぶしで大きく方向転換する人もいれば、腓骨筋滑車で大きく方向転換する人もいます。

短腓骨筋は腓骨筋滑車の前方、長腓骨筋は後方を通る。

この突起部には「下腓骨筋支帯」(かひこつきんしたい)があり、腱をズレないように抑えています。

腓骨筋滑車症候群は、この滑車部分(腱の走行を変える突起)で生じる炎症。
そのものであったり、長・短腓骨筋の腱鞘(けんしょう)だったり、下腓骨筋支帯滑膜などの炎症の場合もあります。

長腓骨筋腱・短腓骨筋腱は丈夫では総腱鞘で2本同時に包まれ、下部ではそれぞれ別の腱鞘に保護される

長腓骨筋と短腓骨筋の腱鞘
上腓骨筋支帯と下腓骨筋支帯の下では「総腱鞘」(そうけんしょう)といい2本を通す。
その下部では、それぞれ独自の腱鞘を持っている。

腓骨筋の起始・停止や作用についてはこちらの記事もご参考に。

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腓骨筋滑車症候群の原因と症状

腓骨筋滑車症候群では外果(外くるぶし)の下、腓骨筋腱に沿って腫脹・疼痛が生じる

腓骨筋滑車症候群の原因として多いのが、

〇隆起が大きい
〇隆起が肥大化
〇使いすぎ

隆起部分(骨)が大きいとシューズに当たりやすくなり、腱や腱鞘との摩擦も生じやすくなります。
さらに長腓骨筋や短腓骨筋にかかる負担が大きくなることで軟部組織が炎症を生じます。(腓骨筋滑車は腱の走行方向を変える役割をするため)

腓骨筋腱の炎症であることから「腓骨筋腱炎」(ひこつきんけんえん)のひとつでもあります。

腓骨筋腱炎について詳しく!

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長腓骨筋腱と短腓骨筋腱

繰り返し靴が当たり、こすれることで滑液包などが腫れて隆起が大きく見えることもあります。

腓骨筋滑車症候群の症状は、

腓骨筋滑車部の腫脹(腫れ)と疼痛(痛み)

ほかには、

背屈(つま先を上げる動き)
内反(足裏を内側に向ける動き)
外側荷重(足裏外側に体重がかかる)

などで腓骨筋滑車部に疼痛が誘発されます。

腓骨筋滑車症候群では、足関節の背屈・内反、外側荷重で痛みが生じる

短腓骨筋腱の停止部で生じる痛み

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治療と再発予防

冷却・安静
ヒール(かかと)を上げる
スポンジなどの緩衝材
テーピング

腫脹(腫れ)・熱感が強いようであれば、アイシング(冷却)を行いましょう。皮膚に近い場所にあるので冷却の効果は高いです。
(⇒アイシングの方法

荷重や足関節(足首)の運動で痛みが出る場合には安静を心がけます。

また腓骨筋の負荷を減少させるために、「かかとを上げる」(ヒールアップ)ことも有効です。
靴のかかと部分にクッションなどを入れて底上げします。

シューズなどで圧迫されたり、摩擦を生じているのであれば、当たらないように緩衝材を工夫しましょう。

テーピングによって長・短腓骨筋の負担を減らすのも有効です。
また、長・短腓骨筋をほぐすことで腱の牽引力を弱めることも大切です。
無理なストレッチは悪化させるので注意が必要!

再発を予防するには、シューズの適正化を図り、腓骨筋の緊張緩和を行うことで、隆起部への圧迫と摩擦を軽減させましょう。

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腓骨筋滑車症候群のまとめ

〇腓骨筋腱炎のひとつ
〇腓骨筋滑車は腱の走行方向を変える役割
〇踵骨突起部での腱鞘炎
〇腓骨筋滑車の隆起が大きいとなりやすい
〇靴がこすれる、ぶつかるなど外部刺激
〇足関節の背屈や内反など腓骨筋の緊張も原因
〇安静やヒールアップ、冷却により軽快する

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