長腓骨筋と短腓骨筋に関係するケガの種類と多い理由5つ

こんにちは。ほんだ整骨院の山内です。

長腓骨筋(ちょうひこつきん)と短腓骨筋(たんひこつきん)という筋肉はご存じですか?

あまり大きな筋肉ではないので知らない人も多いかもしれません。

その長腓骨筋短腓骨筋
実はわたしたちの足部や足首にとって重要な役割があります。

足の形を保つのはもちろん、運動を行ううえでもかなり使われています。
でも、これらふたつの腓骨筋の痛みで悩んでいる人が意外に多いんです。

今回はふたつの腓骨筋についてどんな疾患があるのか紹介していきます。

足部外側の長腓骨筋・短腓骨筋に関連する疾患

 

長腓骨筋と短腓骨筋に関係するケガや障害は多いのはどうして?

※ご注意!
このページでは「長・短腓骨筋の障害」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

腓骨筋群は下腿外側にある筋肉

短腓骨筋と長腓骨筋は外側縦アーチを引っ張る

まずは、長腓骨筋・短腓骨筋の場所。
下腿(ひざ下から足首)にある、おもに腓骨(ひこつ)の外側にあるあまり大きくない筋肉です。

長腓骨筋の作用は、足関節(足首)の底屈(つま先を下げる)と外返し(足裏を外側に)。
短腓骨筋より上部から起始して、下腿部のまん中よりちょっと下で腱に移行します。
外くるぶし(外果)と腓骨筋滑車の後方、足底(あしうら)を通って土踏まずあたりに停止(付着)します。

短腓骨筋の作用も、足関節の底屈外返し
下腿部の中央付近で起始して、外果の後方と腓骨筋滑車を通って第5中足骨基部(足部外側の出っぱり)に停止します。

ふたつの筋肉は足部の形状、とくに縦足弓(縦アーチ)を維持する役割があります。
(長腓骨筋は横足弓にも関連する)

また、歩行時に足裏の体重移動、片足バランス保持にも使われています。

両腓骨筋について詳しくはこちらの記事もご一緒に読んでみてください。

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長腓骨筋や短腓骨筋の障害が多い理由

〇下腿部のいちばん外側にある
〇腱の走行が骨や外部の刺激を受けやすい
〇歩行やバランス保持で使用頻度が高い
〇スポーツや運動で負荷が強くかかる
〇下腿部の末梢近くの損傷は治りにくい

長腓骨筋や短腓骨筋に関係する疾患が多い理由はおもにこれらの理由からです。
筋肉の走行や特徴を理解しておくことで、痛みの原因や対処を知っておくことができますよ。

下腿部のいちばん外側にある

下腿部のいちばん外側に位置することで、スポーツで相手との接触や転倒時にダメージを受けやすくなります。

腱の走行が骨や外部の刺激を受けやすい

長腓骨筋や短腓骨筋は腱に移行してからの走行が長く、外部(皮膚の外側)からの外力(シューズなど)を受けやすいのも特徴のひとつ。

さらに、外くるぶし(外果)や腓骨筋滑車(ひこつきんかっしゃ)といった骨の隆起を支点にして走行方向を変えています。

骨の隆起部分での方向転換は通常であれば、それほど摩擦を生じませんが、負荷がかかった状態では摩擦や圧迫力によって損傷を引き起こしてしまうことがあります。

歩行やバランス保持で使用頻度が高い

歩行時に体重はかかと、小趾球、母趾球の順に移動して、踏み返し動作を行う↑③から④のときに長・短腓骨筋を使う。バランス保持のときにも使われる。

歩行の着地時、体重はかかとから入って足裏外側を前方に移動します。小趾球(しょうしきゅう)までいくと内側へと移動(外返し)。

この外返しのときに両腓骨筋が使われます。
バランス保持のときには、小趾側(外側)荷重から内側へ体重移動させる動きで作用します。

バランスの悪い不整地での歩行やバランスが必要とされるスポーツで、長・短腓骨筋の使用頻度は激増するんです。

スポーツや運動で負荷が強くかかる

もうひとつスポーツや運動で負荷が強くなる理由のひとつが、長腓骨筋と短腓骨筋は

足関節の外側支持機構の一部であること

が挙げられます。

スポーツや運動現場ではターンや着地などで外側荷重になりがちです。
このときに内反捻挫(あしうらを内側に向けるねんざ)をしないように保持(外返し)するのが長・短腓骨筋です。

腓骨筋を保護するテーピングの貼り方

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下腿部の末梢近くの損傷は治りにくい

腓骨筋関連の障害で多いのが腱や付着部での痛み。
足部かかと近くは、心臓からも遠く、体の末梢側にあります。

どうしても上肢(肩~手指)や体幹部より血流が悪く、栄養も届きにくいので組織の回復に時間がかかりやすいのです。

長腓骨筋・短腓骨筋に関連する疾患

腓骨筋に関連する疾患。上から腓骨筋損傷・腓骨筋腱炎・腓骨筋腱脱臼・短腓骨筋腱縦断裂・腓骨筋滑車症候群・第5中足骨基部剥離骨折・イズリン病・短腓骨筋腱付着部炎。
長・短腓骨筋の損傷(打撲と肉離れ)
腓骨筋腱炎
腓骨筋滑車症候群
短腓骨筋腱縦断裂
腓骨筋腱脱臼
第5中足骨基部骨折
イズリン病(イセリン病)
短腓骨筋腱付着部炎
立方骨症候群
立方骨疲労骨折

長腓骨筋や短腓骨筋はいろいろな場所に痛みが発生します。
痛みがでる場所によっても名前が違ってくるのでわかりにくいかもしれませんね。

それではひとつずつ紹介していきましょう。

長・短腓骨筋の損傷(打撲と肉離れ)

ふたつの腓骨筋は腓骨よりも外側にあるので、外部から直達外力を受けやすい特徴があります。

介達外力による筋損傷として、足関節内反強制による長腓骨筋の肉離れが生じます。
短腓骨筋は付着部の第5中足骨基部での裂離骨折を引き起こしやすいので、「肉離れ」という形での損傷はまれです。

くわしくは「長・短腓骨筋の打撲・肉離れ」の記事をご覧ください。

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腓骨筋腱炎

ふたつの筋肉の腱は、下方から急に前方へ向かう方向転換をします。
外果(外くるぶし)を滑車のように利用しています。

ここで生じやすいのがふたつの腱による摩擦、骨との摩擦。
また、ターンや外側荷重を繰り返すことによって生じる外果より下方の炎症。
ほかには腓骨筋腱付着部の炎症も起きることがあります。

これらを総じて「腓骨筋腱炎」と呼んでいます。

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長腓骨筋腱と短腓骨筋腱

腓骨筋滑車症候群

「腓骨筋腱炎」のひとつ。
外果の下、踵骨にある「腓骨筋滑車」(ひこつきんかっしゃ)という骨の隆起部でおきる痛みです。

隆起部が大きいと靴と腱の間に摩擦が生じて炎症を起こします。
腓骨筋滑車症候群について詳しく紹介している記事もご参考にしてみてください。

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短腓骨筋腱縦断裂

短腓骨筋腱が縦に裂けてしまう損傷です。
腱は縦への牽引力に耐えるために線維が縦方向に走行しています。

短腓骨筋腱は外果(外くるぶし)部分では長腓骨筋腱の前方に位置します。
強い内反強制を受けることで短腓骨筋腱が腓骨(外果)に押しつけられて傷つきます。

これが繰り返されることで縦方向に損傷されると考えられています。
この疾患も「腓骨筋腱炎」のひとつといえます。

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腓骨筋腱脱臼(ひこつきんけんだっきゅう)

両腓骨筋腱を外果後方に抑えている「上腓骨筋支帯」(じょうひこつきんしたい)が損傷して、腱が外果を乗り越えて前方に逸脱していまう障害。

急性のものと慢性化してしまうものがあります。
腱の走行する溝が浅かったり、外果のふくらみが小さすぎたりすることが原因ですが、ほとんどに支帯の断裂がみられます。

新鮮例(受傷して2週ぐらい)での治癒は期待できますが、慢性化したり陳旧化した例は手術の適応になります。

腓骨筋腱脱臼についての記事もご一緒にご覧ください。

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第5中足骨基部骨折

第5中足骨基部は短腓骨筋腱の停止部(付着部)。
足関節で内反強制(足裏が内側を向く動き)が働くことで短腓骨筋停止部が裂離骨折(剥離骨折)するものです。

裂離骨折は骨ごと腱や靱帯が剥がれてしまう病態。
別名「ゲタ骨折」とか「下駄ばき骨折」とかいわれます。

昔は下駄で捻って負傷することが多かったようですが、現代では段差で足の外側を踏み外して負傷することが多いです。

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イズリン病(イセリン病)

第5中足骨基部の骨端症(こったんしょう)。
まだ成人していない骨(骨端線閉鎖前)の骨端軟骨(成長軟骨)が短腓骨筋の牽引力によって損傷します。

骨端部分が引きはがされたり、骨壊死に陥ることもあります。

イズリン病について詳しくはこちらのページで紹介しています。

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短腓骨筋腱付着部炎

短腓骨筋腱の停止部での炎症。
腱断裂や裂離骨折にまでいたっていない損傷で繰り返しの刺激により炎症を起こしたもの。
踏み返しやつま先立ち、外側荷重でも疼痛が生じます。

短腓骨筋腱付着部炎は腓骨筋腱炎のひとつです。

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立方骨症候群(りっぽうこつしょうこうぐん)

運動時に負担のかかりやすい立方骨周囲の痛み。
外傷(内反捻挫)や使いすぎによって生じることがあります。

長腓骨筋腱の滑走による摩擦でも生じると考えられています。

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直接的に腓骨筋群と関係しているわけではありませんが、腓骨筋の牽引力と外側アーチのしなりによって起きる第5中足骨近位部の疲労骨折。

安定が得にくく、血流も乏しいので治りにくいのが特徴。

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最後に。

長腓骨筋・短腓骨筋の疾患は部位によって呼び方は変わりますが、ほとんどが急激に腱がけん引されることによって発症します。

突発的な事故でのけがは仕方ありませんが、長腓骨筋や短腓骨筋を強化してさらに柔軟に保っておけば防げるものもあります。

腱や骨のケガや障害はなかなか治りにくい面もあるので、予防に心がけ、なってしまった場合は再発の予防をしていく必要がありますね。

長腓骨筋や短腓骨筋のケアについてはこちらの記事でも紹介しています。

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