脛骨(けいこつ)とは?

こんにちは。ほんだ整骨院の山内健輔です。

脛骨(けいこつ)は、下腿部(太ももより下側)にある2本の骨のうち、内側にある「スネ」の骨。
向う脛」(むこうずね)ともいわれますね。

手で書くときには、「月」(にくづき)に「圣」と書きます。

下腿部は、体重を支えるだけでなく、殿部、大腿部にある大きな筋肉、さらに足部を動かす外在筋があり、筋肉の力を地面に伝える能力があるんです。

その大部分を担うのが「脛骨」

下は足関節(足首)、上部は膝関節を構成する重要な骨です。
今回の記事では、「脛骨」の形や部位の名称について紹介していきます。

脛骨の後面

脛骨(けいこつ)とは?

※ご注意!
このページでは「脛骨」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変化している可能性もあります。
ケガや痛みがある場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

脛骨の場所と特徴

脛骨(けいこつ)は、骨の分類で長骨(長管骨)と呼ばれる細長い骨。

身体の骨の中で、2番目に長い骨。さらに、2番目に強い骨といわれています。
(いずれも1番は「大腿骨」太ももの骨)

緻密質(ちみつしつ)の割合が多く、丈夫にできています。

英語では、「tibia」と表現されます。

下腿部にあるスネの骨

下腿部とは、膝下部分から足首までのこと。
腓骨(ひこつ)と対になっています。

内側にある太く長い骨です。
上部は大腿骨(だいたいこつ)と脛骨大腿関節(けいこつだいたいかんせつ)をつくります。
下部は、腓骨と一緒に距骨(きょこつ)を挟み込むようにして、距腿関節(きょたいかんせつ)を形成。
内くるぶし(内果)は脛骨下方にあるでっぱり部分です。

脛骨は大腿骨と脛骨大腿関節、距骨と距腿関節、腓骨と遠位脛腓関節、近位脛腓関節を形成する

膝関節
膝蓋骨と大腿骨の「膝蓋大腿関節」、脛骨と大腿骨の「脛骨大腿関節」を合わせて「膝関節」(しつかんせつ)と呼ぶ。
足関節(足首)
脛骨・腓骨と距骨の「距腿関節」、距骨と踵骨(しょうこつ)の「距骨下関節」(きょこつかかんせつ)を合わせて、「足関節」(そくかんせつ)と呼ぶ。
(⇒足部の骨に関する基礎知識)

さらに外側は、上下で腓骨とつながる「脛腓関節」(けいひかんせつ)。
上部を「近位脛腓関節」、下方を「遠位脛腓関節」と呼びます。

さらにその中間部分には「下腿骨間膜」(こっかんまく)があり、下腿部全体を区切って、コンパートメント筋区画・隔室)をつくっています。

下腿部のコンパートメント(区画)。脛骨・腓骨・筋膜・骨間膜によって4つの隔室に分かれている。

コンパートメント
下腿部や前腕部にある。
骨・骨間膜・筋膜で区切られた隔室(部屋のようなもの)内を筋・血管・神経が走行する。
外傷や障害により出血や浮腫がおきると内部の圧力が増加して、神経や血管を圧迫することがある(コンパートメント症候群)。

体重を支える

長骨の海綿質の空隙や髄腔には骨髄があり、そこでは血球成分が作られている

下腿部には脛骨と腓骨がありますが、体重のほとんどを脛骨が担っています。(荷重支持機能)

断面にすると緻密質(外側の骨組織が密になっている。皮質ともいう)部分が、他の長骨(長管骨)よりも分厚いです。

脛骨の断面図は三角形に近い。皮質(緻密質)が周囲にあり、海綿質が中央にある長管骨の構造。

体重の多くを支えるために「強い」丈夫な構造になっています。
ということは、「骨折しにくい」ってこと。

骨折するときには、骨がもろくなっている、もしくは大きな外力が加わったこと(高エネルギー外傷という)が推測されます。
骨折(骨損傷)のときには、骨癒合までの期間は長めです。

スネに関することわざ

スネに関することわざ

身体の部位を使ったことわざを調べてみるのもおもしろいですね。
スネは「自分の足で立つ」ところから、自分の足で稼ぐ「自立」の象徴のニュアンスで使われることが多いです。

弁慶の泣きどころ

脛骨の前面は皮膚~皮下組織が薄いです。
骨の表面である骨膜には神経組織が豊富

ってことは、皮下すぐに骨膜組織のあるスネは、ぶつけるとものすごく痛みを感じやすい部位です。
とくに脛骨の前縁はとがっていて、ぶつけると外力が集中します。

源義経(みなもとよしつね)の家来「武蔵坊弁慶」(むさしぼうべんけい)は強い武将ですが、すね部分が弱点。

能力のある人でも、何かしら弱点はある!ってことの例え。

臑(すね)に傷もつ

多くが、「弱みを隠し持っている」という意味で使われることが多いです。

また、「心にやましいことがある」という意味もありますね。

臑に傷もてば笹原走らず」と表現することもあります。
これは、臑に傷を持っていると笹の葉っぱが当たっても痛いことから、こそこそと歩く(こそこそする)という意味で使われます。

親の臑をかじる

経済的に自立できずに、子どもが親の援助を受けていることの例えとして使われています。
「すねかじり」といわれることも。

親の労働の成果をかじり取っているようす。

ただ、もうひとつの説は「臑」は動物(おもに家畜)の前足部分。「やわらかい肉」という意味もあるようです。

ってことは、「おいしい肉を頂く」という裏の意味もあるのかもしれませんね。

腕一本すね一本

地位・名誉・財産もなく、頼れるものは自分の体だけ
「裸一貫」のような意味でも使われます。

(子宝)すねが細る(ほそる)

子どもは宝物。だが、大変な苦労と負担を強いる」という意味で使われます。

このときの「脛」(すね)は親自身の意。
「親のすね」と同じような意味で使われていると考えられますね。

形と部位の名称

脛骨は、荷重3大関節(股・膝・足首)のうち二つに関わる骨です。
力強い動き反復する衝撃への耐久性と、足関節を機敏に動かすための繊細さが必要とされる骨でもありますね。

上部

脛骨の上部は左右に膨張しており、内側顆・外側顆とよばれる。前面の隆起と稜線を脛骨粗面、外側の稜線をガーディ結節、後部の稜線はヒラメ筋線、上関節面には顆間隆起や前顆間区・後顆間区がある、内側顆には鵞足とよばれる大腿骨の筋肉の停止部もある

脛骨の上面には大腿骨との関節面が内側と外側にありへこんでいる。その間は顆間隆起でその前後の顆間区がある

骨幹部よりも広がるような形で肥大して、大腿骨の受け皿(上関節面)となる。
半月板(線維軟骨)や靱帯、腱が付着して膝関節を形成する。

〇外側顆━外側のふくらみ
〇内側顆━内側のふくらみ

〇顆間隆起(かかんりゅうき)
上関節面のまん中にある隆起部分
さらに内側と外側に隆起した部分は「顆間結節」(かかんけっせつ)。
前後のくぼみは「前顆間区」(前十字靭帯の付着部)と「後顆間区」(後十字靱帯の付着部)。

〇脛骨粗面(けいこつそめん)
前縁部分の上部にある隆起部分。
大腿四頭筋の付着部となる。

〇ガーディ結節
外側顆前方部分にある腸脛靭帯の停止部。
外側の関節縁から脛骨粗面の隆起に向かうような稜線。

〇鵞足(がそく)
脛骨内側顆の下部にある筋肉の付着部。
薄筋(はっきん)・縫工筋(ほうこうきん)・半腱様筋・半膜様筋が付着する。

骨幹部

脛骨の骨幹部は三角柱の形状で前方を前縁、外側を骨間縁、内側を内側縁とよぶ。 後面にはヒラメ筋線が走る。

前方凸の三角柱の形をしている。「脛骨体」(けいこつたい)とも。
縦軸上に強い力(体重や衝撃)に対抗する構造。

〇前縁━前方部分
〇内側縁━内側部分
〇骨間縁━外側で下腿骨間膜がつく

緻密質が多く、内部は海綿質。
骨の強度と軽量性を保つ構造になっています。
海綿質の内部には骨髄(こつずい:血液細胞をつくる)があります。

〇ヒラメ筋線
脛骨後面にあるヒラメ筋が付着する部分で、不明瞭だが隆起している。
この線の上部分に膝窩筋、下内側が長趾屈筋、下外側が後脛骨筋の付着部となる。

下部

脛骨下部の内側はふくらみ、「内果」と呼ばれる。後面には内果溝があり長母指屈筋腱が通る。外側には腓骨切痕のくぼみ、底面は距骨滑車との関節面がある。

下部は骨幹部よりやや肥厚して、距骨滑車(きょこつかっしゃ)と距骨関節面をつくる。
内側のふくらみは「内果」。

三角靱帯は内果から内側の足根骨に付着して、足関節内側の支持安定機構のひとつ。

〇腓骨切痕(ひこつせっこん)
外側にあるくぼみ。
腓骨下端部が嵌まり、遠位脛腓関節をつくる。
線維結合(せんいけつごう)でほとんど動かない。

〇内果溝(ないかこう)
後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)と長趾屈筋腱が通る溝。
(⇒足根管には何が通る?

三角靭帯は前脛距靱帯・脛舟靱帯・脛踵靱帯・後脛距靱帯の4つからなる

多くの筋肉が付着する

脛骨は、身体の末端近い部分に位置するために、運動量も多い骨です。

とくに膝関節を動かす大腿部にある筋肉が停止、足部を動かす外在筋が起始します。

起始と停止
筋肉のうち、近位部を起始、遠位部を停止と呼ぶ。
起始と停止が近づこうとすることで関節運動が生じる。
脛骨には筋肉の付着部が多くあり、脛骨粗面、ガーディ結節、鵞足、ヒラメ筋線などに付着する。

脛骨に起始部をもつ筋肉

ヒラメ筋
前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
長腓骨筋(ちょうひこつきん)
後脛骨筋(こうけいこつきん)
長趾屈筋(ちょうしくっきん)

脛骨に停止部をもつ筋肉

腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)
薄筋(はっきん)
大腿直筋(だいたいちょっきん)
中間広筋(ちゅうかんこうきん)
外側広筋(がいそくこうきん)
内側広筋(ないそくこうきん)
縫工筋(ほうこうきん)
半腱様筋(はんけんようきん)
半膜様筋(はんまくようきん)
膝窩筋(しっかきん)

関係する障害

脛骨近位で起きる障害:オスグッドシュラッター病、ブラント病、腸脛靭帯付着部炎。骨幹部ではシンスプリント。疲労骨折。

筋肉の付着部も多く、体重の支持、衝撃など脛骨にかかるストレスは、他の部位に比べて大きめ。

さらに長軸上に大きく成長する骨でもあります。
骨が成人するまでは(骨端線閉鎖まで)、骨端軟骨(成長板)も多く存在します。

それらが重なることで、スポーツ障害も起きやすい部位といえます。」

〇オスグッドシュラッター病
10代の運動を多くする人に多い。
大腿四頭筋が収縮を繰り返すことにより、骨化していない骨端軟骨が損傷。
急激な骨の成長と筋肉の収縮によって、付着部への負担増加が原因。

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〇ブラント病(ブラウント病)
脛骨内側顆の骨端症のひとつで、成長障害を生じたもの。
内反膝(O脚)を呈し、外科的手術が必要になるものも多い。

参考;ブラント病の治療について

2歳の時に膝の関節面(内側はくちばし状の先端)と下腿の骨の角度が15度以下の場合には、後で手術が必要になったケースはありませんでした。15度以上の角度の場合には短下肢装具(膝から足までの装具)を約1年使います。この装具は下腿中央外側を外側からバンドで押さえるもので、日中歩いている時に使います

神奈川県立こども医療センター『O脚・ブローント病』より引用

〇シンスプリント
前方型と後方型がある。
前方型は前脛骨筋、後方型は後脛骨筋の牽引によるスポーツ障害。
10代のスポーツ選手に多い。
若年層特有の柔軟な骨による「しなり」、反復する筋収縮と衝撃によって発症すると考えられる。

後方型シンスプリント

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〇脛骨疲労骨折
反復性の衝撃と筋肉の牽引作用により脛骨が疲労骨折を起こしたもの。
「跳躍型」(ちょうやくがた)と「疾走型」(しっそうがた)に分けられる。
跳躍型は骨幹部中央周辺、疾走型では上部や下部に起きやすい。

下腿骨疲労骨折

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「脛骨」まとめ

  • 下腿部にある内側にある太い骨、緻密質多い。
  • 長管骨で骨幹部は前方凸の三角柱の形
  • 多くの筋が付着するのでスポーツ障害も多い。
  • 長軸上の成長度が高いので骨端軟骨の障害(骨端症)にもなりやすい。

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