膝の裏のふくらんでいる。「ベーカー嚢腫」ってなんだ?

こんにちは。荻窪ほんだ整骨院の山内です。

膝裏にボコッとしたふくらみがある方はいらっしゃいませんか?
痛みがあったり、なかったり・・・。
膝を折り曲げてしゃがんだり、正座したりするときに邪魔になりますよね。

ベーカー嚢腫」(のうしゅ)っていいます。

※嚢(のう)は、「袋」のこと。ここでは膝関節の関節腔とつながっている滑液包(滑膜嚢胞)のことを指しています。

あまり聞きなれない病名かもしれませんが、実はよく見かける疾患です。なかには患者さんご本人も気づかれていないこともあります。
というのも、

  • 本人も見えにくい膝の裏側であること
  • 痛みや違和感を伴わないこと

が多いからです。

左右で膝の後ろ側を触ってみるとふくらみかたが違う人も多いですよ。

大きい人では、

みかんの大きさぐらい!

になる人もいます。

今回は、「ベーカー嚢腫」について紹介していきます。

 

膝の裏のふくらみ。「ベーカー嚢腫」(のうしゅ)ってなんだ?

※ご注意
このページでは「ベーカー嚢腫」について紹介しています。記事執筆時点での情報です。
正確な情報を記すよう努めていますが、医学的視点や見解の違い、科学の進歩により情報が変わっている可能性もあります。
ケガをした場合は、記事だけで判断せず、病院などで正しい診断を受けることをおすすめします。

「ベーカー嚢腫」ってな~に?

ベーカー嚢胞(のうほう)
膝窩嚢胞(しっかのうほう)

といわれることもあります。

ベーカー嚢腫(のうしゅ)は膝関節の関節液が関節包と後ろ側でつながっている滑液包に貯留して、腫瘤となったものです。

※滑膜嚢胞(かつまくのうほう)
関節包とつながっている滑液包のことを「滑膜嚢胞」といいます。
滑膜嚢胞に水(滑液)が増殖した状態が「滑膜嚢腫」(かつまくのうしゅ)。
ベーカー嚢腫は「滑膜嚢腫」のひとつです。

ベーカー嚢腫の正体は滑液包

滑液包は組織どうしの摩擦を防ぐために、潤滑・緩衝作用をもった袋状のもので、近くの関節包とつながって関節液が流れ込みます。

ベーカー嚢腫は、膝裏(膝窩〈しっか〉)にある滑液包内に滑液が貯留したもの。

ベーカー嚢腫は腓骨筋内側頭と半膜様筋の間にある滑液包に関節液が貯留して発症することが多い

腓腹筋内側頭腱下滑液包
(ひふくきんないそくとうけんかかつえきほう)
半腱様筋滑液包
(はんけんようきんかつえきほう)
※膝関節周囲には滑液包が多い!
※腓腹筋と半膜様筋が摩擦を起こしやすい!

おもにこの二つが膝の関節包と交通しています。
とくにこの交通部分は「茎」状になっていて、「バルブ」といわれる栓があるので滑液包に移った関節液が戻りにくいのです。

この過剰に関節液を含んだ滑液包が「ベーカー嚢腫」なんです。

長期間にわたって、関節液が貯留したままだと濃縮されて、ガングリオンのように粘性が強くなる(ゼリー状になる)こともあります。

プヨプヨ(やわらかい)、パンパン(かたい)など人によって硬さが違うのは滑液包の大きさと内容物の粘性が関係しているようです。

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ベーカー嚢腫の症状

ベーカー嚢腫自体には痛みが出ることは少ない。圧迫感や不快感など物理的な感覚が主な症状。原因となった疾患の症状のほうが強くでることが多い。

ベーカー嚢腫自体は強い痛みが出ることは少ないですが、関節液が増加するなんらかの要因があります。

以前に膝関節内の損傷(靱帯や半月板損傷など)を起こしたり、関節炎などの疾患があると一時的に関節液が増加します。

ベーカー嚢腫自体の症状は

膝関節裏側の不快感・違和感
ひざ裏の腫瘤
圧迫感

ベーカー嚢腫自体は痛みがでることはほとんどありません。
ただし、関節自体の炎症が原因なので、その症状のほうが強いことが多いです。

腫瘤が大きくなりすぎると、次のような症状があらわれます。
(ゴルフボールやみかんぐらいの大きさになる人も)

膝関節の運動(膝の屈曲・伸展)に干渉して、可動域に制限を生じる。
屈曲時にはさまって、痛みを生じる。

さらにもっと重大な症状が、

神経や血管の圧迫!

膝の後ろ側には、

太い動脈
静脈
リンパ管
神経

が走行しています。

巨大化して、神経や血管を圧迫することになると、下腿~足部に痺れ・むくみ・痛み・冷えが生じる原因にもなるのです。

深部静脈血栓症静脈瘤の原因になることもあるので注意が必要です。

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ベーカー嚢腫ができる原因は?

ベーカー嚢腫は膝関節内の損傷や疾患により増加した関節液が後方の滑液包に流出して貯留したもの

ベーカー嚢腫が起きる原因は数多く考えられます。
膝関節の周囲には多くの滑液包が存在。

関節包と滑液包の内側には「滑膜」(かつまく)があります。
滑膜は関節液を産生します。

関節液は膝内部の組織の栄養を供給すると同時に、関節の摩擦を減少させる役割があります。

ベーカー嚢腫ができるまで。
膝関節の構成要素になんらかの損傷が起こる。

炎症を生じる。

血液・血しょう成分・滑液などの水分が膝関節内部に充満。

膝の裏側にも充満。(関節内部で前側と細くつながっている!)

関節包前部との交通が細いので、液体が後部に貯留。
(水分がたまりやすいが、抜けにくい構造)

水分が抜けてくるとゼリー状になる。(ふくらむ)

・・・ってことは、膝が腫れることが原因になる!

膝が腫れるおもな疾患
変形性膝関節症(関節軟骨の損傷)
関節炎(関節リウマチ・化膿性など)
膝の関節円板(半月板)の損傷
膝の靭帯損傷(側副靭帯や十字靭帯など)
膝蓋骨脱臼や膝蓋大腿関節症(膝蓋骨の障害)
タナ障害(滑膜ヒダがはさまる)
膝関節の使い過ぎ・体重増加 ・・・etc

いろんな原因がありますね。

関節腔内やその周囲に炎症が起きると、「血管透過性の亢進(こうしん)」が起こります。

分かりやすくいうと、「血管から血しょう成分(水分)が多く出てくる!」のです。

さらに周囲の滑膜からは膝関節を潤滑する「滑液」が滲出します。
膝ウラの滑液包に関節液が残るってことですね。

ちなみにベーカー嚢腫は中年以降の女性に多いですが、小児にも発生することがあります。
小児では滑液包が関節包と交通していないことが多いので、単純に摩擦で炎症を生じていることになります。
(多くが、イスとの摩擦や反張膝による)

ベーカー嚢腫の診断と治療

ベーカー嚢腫の治療は基本的に保存だが、あまり大きくなると注射器で穿刺して液を排出する

ベーカー嚢腫は悪性の腫瘍ではありませんが、膝窩の動脈瘤(どうみゃくりゅう)や良性腫瘍・悪性腫瘍の場合を否定する必要があります。
整形外科で診断を受けましょう。

治療は、痛みや違和感がない場合は基本的に保存的に治療します。(経過観察をする)

膝関節の炎症の原因があればそちらを治療します。(関節液が貯留する原因を取り除く!)

痛みがひどい。症状が強い。神経圧迫・血流障害がある場合は、整形外科を受診しましょう!
膝を屈曲したときに破裂する恐れがあるときは、外科処置も必要です。

①穿刺(せんし)
注射器で内部の液体を抜きます。
②注射
ステロイド剤や抗炎症剤を注射して、炎症をおさえます。
③外科手術
再発を繰り返して、症状が重い場合は関節鏡などでベーカー嚢腫自体を切除することも。

予防するためには、膝関節の炎症を防ぎ、負担を軽くすることです。
負荷増加に伴う摩擦は関節液を過剰に生成する原因になります。

もちろん膝関節にケガや障害をもっているときは、その治療も並行してすすめていきましょう!

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